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第7話 朝倉光哉の内面独白:想いは再び重なると信じていたのに

君に再び出会えた――


初めて古書店を訪れたとき、何気なく交わした言葉の中に、懐かしさが波のように押し寄せた。

この感覚は、ただの偶然ではない。確信めいた予感が、静かに胸を打った。


(君だ。間違いなく、君だ――紫の上)


僕はずっと信じていた。

もしこの世に生まれ変わりがあるなら、きっとまた君に巡り合える。

そして再び出会えた時には、すぐに分かる。

魂が惹かれ合い、愛は自然と戻ってくるものだと――そう、思っていた。


でも、現実は違った。


遥は僕の優しさにも笑顔にも、どこか一歩引いたままだ。

目を見て、微笑んでくれるのに、深いところで壁がある。

彼女にも記憶があるはずだ。そして、僕が光源氏であることにも気が付いている。

それなのに。

僕たちは、あれほど深く愛し合っていたのに。


――いや、違う。


思い出すのだ。

あの頃、彼女はどれだけの孤独を抱えていたか。


私が、幾人もの女性と関係を持ち、その影を彼女にちらつかせたこと。

賢い彼女のことだ、あの人を通して、かつて恋い焦がれた女性の面影を追いかけていたことにも気が付いていたのだろう。


彼女はずっと、気づいていたのだ。

それでも私を愛し、支え続けてくれていた。

そして最後には、愚かな私の行動によって静かに、心を閉ざしてしまった。


今世で彼女が僕と距離を置くのは、当然のことかもしれない。


(再会すれば、愛し合える)


その考えもまた、僕の身勝手な考えなのかもしれない。


今の彼女は、前よりもずっと自由で、自立していて、

一人の女性として、自分の人生をちゃんと選んでいる。


僕はもう、かつてのように強引に彼女の人生に割り込んではいけない。


彼女に、もう一度愛されたいと思うなら、

それにふさわしい人間にならなければならない。


彼女の隣に立ちたいなら、まず、彼女の心の傷を――

かつて自分が与えたその痛みを、知り、理解しなければ。


だから、急いではいけない。

焦って追いつめては、また彼女を傷つけるだけだ。


君が、君自身の人生を守ろうとしているのなら、

僕はそれを、心から尊重しなければならない。


でも、どうか知っていてほしい。


何度生まれ変わっても、僕はきっとまた、君を見つける。

そして、君に惹かれる。君の聡明さ、優しさ、美しさ――そのすべてに。


まだ、数回した会っていないけれど、決して前世の残像なんかではなく、

今、この時代に生きる君に、また、僕は――恋をしたんだ。

第8話に続く

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