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#15

 エリカとの短いやりとりを終え、カイルたちは焚き火を完全に消すと、野営地を後にした。


 森を抜け、土埃の立つ街道を進み、昼前にはようやくギルドの建物が見えてきた。


 冒険者たちが行き交うざわめきの中、カイルはいつものように無言でギルドの扉を押し開けた。

 古びた木の匂いと、酒の混じった空気。


 エリカはわずかに身をすくめたが、すぐにカイルの背中を追った。


 受付に座っていたのはナターシャだった。冒険者に口説かれている様子だったがカイルを見つけると好機とばかりに金色の髪を揺らし駆け寄ってきた。


「カイルさん!無事でしたか」


 屈託のない笑顔を向けるその彼女に、カイルは短く頷いた。


「依頼の報告だ。魔石は買取で頼む」


 淡々と切り出すと、懐から血で汚れた布袋を取り出してカウンターに置く。

 中身は、回収できた認識票と数点の遺品。トロール討伐の際に出てきた魔石。魔道具制作などに使われるため高額で取引される代物だ。


 ナターシャは布袋を開け、手早く検分する。


「……確かに確認しました。依頼完了ですね。お疲れ様です」


 ナターシャが笑顔でそう告げると、硬貨の入った革袋をカイルに差し出した。

 カイルはそれを無言で受け取る。


 続けて、ふと視線をエリカに向けた。


「そっちの子は?」


 ナターシャが興味深げに首を傾げる。以前にも依頼を受ける際、それに冒険者登録や審査を受けるためエリカとは少なからず面識があるはずだが。

それもしょうがないことだ。冒険者の数が数だけにいちいち等級の低い冒険者の顔など記憶してはいられない。事実、カイルもエリカの顔を覚えてはいなかった。


そして冒険者を夢見た者たちの旅路はすぐに途絶えることも多い。


 カイルは一瞬だけ言葉を選び、簡潔に答えた。


「生き残りだよ。しばらくはこの子の面倒を見ることになった。依頼を一緒にこなすこともあるだろうから「今度は」覚えておいてくれ」


 ナターシャは目を丸くし、それからふっと柔らかい笑みを浮かべた。


 今まで協力や救援こそすれパーティなど組んだことのない彼の事を知っているが故だろう。


「あらあら、随分と珍しい事もあるものですね」


 誰かに聞かれないようにカイルへ何か小さく耳打ちをしたナターシャが受付へと戻る。

カイルはエリカを伴いギルドを後にした。


 報告を終えた今、次にすべきことは――。


「一旦解散だ。帰る場所はあるのか?」

「神殿に一旦戻ろうかと考えていますが…その、路銀が」


 エリカにしてみれば言い出しづらい事だったがカイルに硬貨の入った革袋を放り投げられ、慌てて頭を下げた。


「とりあえず俺は竜のまどろみって酒場の一室を借りてるから用が済んだら尋ねてくれば良い。俺はとりあえず休暇だ」


立て続けに依頼をこなした彼の頭はそのことで一杯だった。湯あみ、それと霊薬の素材となる草花の様子を見に彼の隠れ家である精霊の住処へと足を向けた。


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