第86話 三期生オフコラボ配信⑤-七海ミサキの思うキャンプ飯-
流れるように乾杯が終わり、早めのランチタイムが始まった。
リズ姉の質問から七海ミサキのキャンプについての想いが語られる。
リズベット:「そう言えばミサキさん。さっきアリスさんのカルツォーネを見て『最近の悩みが一つ解消された』って言っていたけどなにかあったの?」
七海ミサキ:「それね。その説明をする前にアリスちゃんもう食べることができそうなカルツォーネはある?」
真宵アリス:「このミートソースの奴はあとは表面を焼くだけでいいと思います」
七海ミサキ:「じゃあそれもらうね。火力が強くなりすぎているところで炙って。もういいかな。じゃあ、お先にいただきます。アツッ! でも生地の表面はカリッとして中はモチモチ。トマトベースのミートソースも水分少な目でお肉の味が凝縮されているね。美味しい! 食べやすいし、生地が薄くて重なっているからピザよりも食感がいいかも」
桜色セツナ:「美味しそうです!」
真宵アリス:「他のも表面焼けばいけそうだね。はい」
桜色セツナ:「では王道っぽいチーズとベーコンもらいます」
リズベット:「じゃああたしはすき焼き風をもらうわね」
桜色セツナ:「あっ! 美味しい。チーズも量が多いしベーコンも味が濃い」
真宵アリス:「包んで焼くからチーズ多めでも零れる心配ない。ベーコンもちゃんと下味つけて焼いてから入れている」
リズベット:「このすき焼き風はビールか日本酒が欲しくなるわね。カリモチ食感が癖になるし、ツマミにしやすいサイズなのがまた。それに卵黄ソースも美味しい」
真宵アリス:「……すき焼き風はねこ姉とマネージャーにも売れ行きいい」
リズベット:「でしょうね」
七海ミサキ:「それで私の解消された悩みだけど。『キャンプ飯とは』ってことなんだよね。皆が思うキャンプ飯ってどんなの?」
:ミサキチの悩み
:先にカルツォーネ食べるのか
:普通に美味そう
:カリモチに悪い奴はいない
:ちゃんと具材の味付けにも工夫しているんだな
:食べやすいお手軽すき焼きって最高では?
:酒が進む
:キャンプ飯とは?
リズベット:「カレーとか?」
桜色セツナ:「最近だとアヒージョ?」
真宵アリス:「料理じゃないけどホットサンドメーカー」
七海ミサキ:「皆があげたようにキャンプ飯と言っても色々あるよね。でも私の考えるキャンプ飯は塩おにぎり。色々応用が利くし、粉末の味噌汁やインスタントラーメンにも合う。適当なスープに入れてもいい。リズ姉に悪いけどカレーは私のキャンプ飯から外れるかな」
リズベット:「えっ!? カレーがダメなの」
七海ミサキ:「レトルトカレーならいいよ。でも手作りカレーは野菜の皮を向いて、具材を鍋で炒めて煮込んでルーを入れてまた煮込んで。他にもご飯を準備しないといけない。手間がかかり過ぎる。そのうえ必要な道具も多い。わざわざキャンプでする必要あるの? と思ってしまう。アヒージョも最初は美味しいよ。お手軽だし。でもゴミとオリーブ油の後処理が面倒でね」
桜色セツナ:「アヒージョもダメなんですね」
七海ミサキ:「ダメとは違うかな。大人数だと盛り上がると思うし、否定はしない。でも私はソロキャンパーだったから。荷物も必要な食材もとにかく減らしたいんだよ。缶詰さえ開けたくない。でも買ってきたものをそのまま食べるだけなのは面白くない。現地で焼く、煮る、お湯を注ぐ。そのワンアクションで劇的に美味しくて大満足なのが理想」
リズベット:「なんてわがままな」
七海ミサキ:「ソロキャンプだよ。勝手気ままのわがままし放題が許されるから楽しいんだよ。どれだけお手軽レシピでも現地でちゃんと料理しなきゃいけないなら私の理想から外れる。ゴミも多くは持ち帰りたくない。理想から外れるから他の人にオススメできない。オススメできないから動画にできない。それが悩みだったわけ」
リズベット:「その基準だと確かにカレーやアヒージョもダメね」
七海ミサキ:「対してアリスちゃんのカルツォーネはどう思う? 現地で焼くだけなのにちゃんと凝った味だよね。ホットサンドメーカーで焼いても美味しそうだし。あとゴミも少ない」
桜色セツナ:「あっ条件を満たしてます!」
七海ミサキ:「そう! ピザだって折りたたんで包めば具が零れない。持ち運びしやすいようにサイズも小さくできる。この発想はカルツォーネ以外にも応用できるはずだよね。さっきも言ったけど私の理想のキャンプ飯は現地で焼く、煮る、お湯を注ぐだけ。それなら仕上げ寸前の状態まで家で作ればいい。そういうレシピを考えればいいんだと気づかされたわけ。だからアリスちゃん! ありがとうございます」
真宵アリス:「いえいえいえいえ!? 私は家で作っていたものを持ってきただけですから」
七海ミサキ:「キャンプに適したモノを持ってきただけ。その『だけ』に気づくのが大事だったわけ。私一人だとその『だけ』に気づけずキャンプ飯の動画作りが難航していたわけだから。あとでピザ生地の作り方やカルツォーネのレシピ教えてもらえる? ちゃんと事務所に話を通すし、動画にアリスちゃんの名前も載ると思うけど」
真宵アリス:「えっ!? 私は別に載せてもらわなくてもいいです。レシピは教えますけど」
七海ミサキ:「ダメだよ。そのあたりのことはちゃんとしないと後々問題になるから」
真宵アリス:「……はい」
:なんかキャンプといえばカレーを作らされた記憶あるな
:アヒージョとチーズフォンデュ率の高さ
:ホットサンドメーカーのイメージはある
:……塩おにぎりは渋い
:大正義カレーが否定されただと!?
:ミワ様が起こるぞ
:わざわざキャンプでする必要あるの? は禁句だろ
:持ち物をとにかく減らしたいは同意
:ミサキチの理想わかるわぁ~
:オススメできないものは動画にできないはいい言葉
:アリスが本当にファインプレーだったわけだ
:その『だけ』に気づくのが大事は本当にそう
:権利関連にしっかりしないとね
リズベット:「……なんというか色々考えているのね」
七海ミサキ:「動画制作するようになってから色々考えるね。ソロキャンプをやっているときはなにも考えてなかったのに。お肉もエビもホタテももういけそうだよ。保温退避エリアに避けておくから取っていって」
真宵アリス:「ピーマンはもう退避させてます。巨大シイタケとトウモロコシはまだです」
桜色セツナ:「アリスさん。この冷凍してあったクリームチーズと林檎のコンポートのカルツォーネはどうするんですか?」
真宵アリス:「もう中は溶けかけの半凍り状態だと思うから食べたくなったら強火エリアに投入。中は冷たいぐらいの方が美味しいスイーツカルツォーネ」
桜色セツナ:「了解です」
七海ミサキ:「私にとってソロキャンプは誰の目もはばからず一人で普段しないバカをする時間だったんだよね。少し焼くのを休んで食べよっか」
リズベット:「普段しないバカ? あっ、このエビ美味しい」
七海ミサキ:「それこそキャンプ場で宅配ピザの配達エリア内か試したり。あのときは無性にピザが食べたくなったんだけど配達エリア外で断られたんだよね。当時このカルツォーネがあればそんなことしなかったのに」
桜色セツナ:「宅配ピザってキャンプ場に届くんですか?」
七海ミサキ:「ピザに限らずデリバリーは配達エリア内なら可能なところがある。ただゴミの処分に困るし、せっかくのキャンプでなにやっているんだろうとはなるね」
桜色セツナ:「ミサキさんの理想からも外れますね。現地で焼く、煮る、お湯を注ぐのワンアクションがないですし」
七海ミサキ:「そう! でもそのワンアクションですら失敗することもある。買っておいたハンバーガーを香ばしくするために、焚き火で軽く炙ろうとして落としたり。結局食べられなくて、そのときはショックでふて寝したね」
リズベット:「ぷっ、さっきのアリスちゃんみたいね」
桜色セツナ:「ミサキさんにもそういうことあるんですね」
七海ミサキ:「色々やっていたからね。割と成功談だと買っておいた骨付きのフライドチキンを少し食べて、沸かしたお湯にそのまま投入。鶏ガラ出汁のキューブなどを入れて塩と胡椒で味を調整。フライドチキンの身を完全に骨から外してさらに煮込む。途中で骨だけ取り出して焚き火で焼いて焦がした後またスープに投入したかな。焼いた骨から旨味が出るんだ! って」
リズベット:「本当に勝手気ままのわがままし放題ね。楽しそう」
七海ミサキ:「やっていることはバカだけどね。なんか凄く秘伝のレシピで作っている感じがして楽しかったよ。実際そうやってできた鶏のスープはフライドチキンの油分もあるし、美味しかった」
真宵アリス:「私も家で引きこもっている間に似たようなことやってます」
七海ミサキ:「……アリスちゃんが習得している引きこもり技能と比べられると私が低レベル過ぎて少し困るね。たぶん方向性は同じだけど原始時代と近未来ぐらいの時代格差を感じる」
桜色セツナ:「よし! スイーツカルツォーネが焼けました。いただきますね。カリッとして甘くて中が冷たくて美味しいです!」
リズベット:「ホント? 私も焼こうかな」
真宵アリス:「ここではできないから言わなかったけど、実は家では中までアツアツにしてバニラアイスと一緒に食べたりもする。あとチーズとベーコンのカルツォーネははちみつやメープルシロップをかけて食べても美味しい」
リズベット:「そういう食べ方もあるの? なにを焼くか迷うわね」
七海ミサキ:「味変いいね。他にもアレンジがあったりするの?」
真宵アリス:「中の具材を豚の角煮にしたりとか、本当に料理を包むだけだからピザよりも応用が利く。水分を飛ばしたカレーやシチューを入れることもできる。でもカレーやシチューは揚げてパンツェロッティにしたほうが美味しい」
七海ミサキ:「キャンプ場で揚げ物は……いや。このサイズだし、野菜を食べたあとのアヒージョに入れればパンツェロッティっぽくなるかも。私の主義に少し反するけど、アヒージョの流れで揚げ物はもしかしてアリ? だって揚げ物だよ」
桜色セツナ:「アリスさんもミサキさんも本当に色々考えますね」
:……なんかソロキャンしたくなってきたんだが
:デリバリー届くところあるんだ
:焚き火で焼こうとして失敗するあるある
:キャンプは大人数も楽しいけど一人だから楽しめるバカな行動もいいよな
:ミサキチのイメージがいい意味で崩れた
:本当に自由って感じがする
:あれをやらなきゃこれをやらなきゃで思考が束縛されるとソロキャンプは楽しめない
:セツにゃんカルツォーネ焼いてたw
:相変わらずのメシテロアリス無双
:ベースがピザ生地で包んでいるだけだから色々応用利くんだろうな
:アリスの引きこもりはもう料理研究家に近いような
:もしかして揚げたてのカレーパンっぽいモノがキャンプ場で作れる?
:だって揚げ物だよの謎の説得力
:最終的に全員のキャンプ飯を取り入れているミサキチ
お読みいただきありがとうございます。
毎日1話 朝7時頃更新です。




