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【第2巻発売中】引きこもりVTuberは伝えたい  作者: めぐすり
第二章 ーIt takes all the running you can doー 迷走コラボレーション
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第44話 三期生集合公式生配信⑥ー真宵アリスの現在地ー

 たった二人から始まった公式生配信。

 ついにスタジオに四人合流した。これで合計六人。一期生は全員集合。三期生はリズ姉と七海ミサキが顔を出している。

 八人全員は揃っていないが大規模オフコラボの形になってきた。


 最初は二人だけ。

 告知したメンバーが揃っていない事故配信。

 誰も理解できないトラブルも起きている。

 それでも告知された公式配信は開始時間に始まった。


『The Show Must Go On.』


 始まりを決めた以上はショーの幕を上げなければいけない。

 ショーは続けなければいけない。

 見てくれる人たちを魅了しなければいけない。

 期待して集まってくれたリスナーを裏切ることだけはしてはいけないのだから。


竜胆スズカ:「リスナーの皆様お待たせしました。その調べは熊も除ける。登山道のお供にどうですか? リンリンこと一期生の竜胆スズカです」


胡蝶ユイ:「お待たせ――えっ? 今までそんな挨拶したことないよね? えーとあなたに夢の一時を。最近自分でも胡蝶ユイか胡蝶ランか夢のように区別がつかないランランこと一期生の胡蝶ユイです」


リズベット:「皆さまお待たせしました。一期生の胡蝶ユイ先輩以上にエルフ設定やリズベット・アインホルンの名前が忘れられている三期生のリズ姉です」


七海ミサキ:「皆様お待たせしました。他のメンバーと違い動画配信中心なので、初めましての方が多いかもしれません。最近、野外でできる簡易ピザ窯の作り方や燻製器、ケバブ用の回転式グリル調理器などを調べてください。事務所からそんな無茶振りをされている三期生の七海ミサキです。食に偏ったのはアリスちゃんの影響でしょうか?」


白詰ミワ:「ようやく……ようやくこのスタジオにメンバーが来ました!」


花薄雪レナ:「ミワちゃんが歓喜して説明放棄したので、さっきはしゃぎ過ぎた私が補足。我が妹の真宵アリスちゃんと桜色セツナちゃんは事務所内を走り回ったので休憩中。アリスちゃんのマネージャーとねこグローブママを交えて、今日一日の経緯を説明して誤解を解いている」


:ついに六人

:大規模オフコラボっぽくなったな

:いきなりのリンリンのぶっこみに対応するランランと三期生二人

:ミサキさんwww

:七海ミサキの飯テロ動画シリーズか……楽しみだな

:ミワちゃん大歓喜w

:たった二人だけでここまで生配信していたからな

:……始まりは二人だけだったんだな

:内容が濃すぎて忘れてた

:レナ様が反省してフォローに回っているw


竜胆スズカ:「それで公式生配信の現状はどうなっているの? 全然わからないまま参加したけど」


白詰ミワ:「……ええ、そうよね。二人は本番開始直前の公式生配信を無視して、真っ先にアリスちゃんを追いかけたものね。公式生配信の様子なんて、気にも留めてなかったわよね」


竜胆スズカ:「あれ? もしかしてミワちゃんマジ切れ五秒前?」


胡蝶ユイ:「ごめんなさい! ほらリンリンも謝ろうよ! さすがになにも言わず公式生配信対応を押し付けたのはまずいって。いくらミワちゃんとレナ様がいれば大丈夫。そう信じていたとしても」


竜胆スズカ:「そうだね。いくら大切な仲間で頼りになるミワちゃんとレナ様を信じた行動だったとしても無断はダメだよね。ごめんなさい」


白詰ミワ:「はあ……あなたたちね。まあいいわよ」


花薄雪レナ:「ミワちゃんチョロイン」


白詰ミワ:「チョロインってね。……今更怒っても仕方ないでしょ。電話で中継という形だったけど、二手に分かれていた方が結果的に盛り上がったわけだし」


花薄雪レナ:「私は露骨なヨイショでも満更でもない」


白詰ミワ:「まさかのレナ様チョロイン宣言」


:仲いいなこいつら

:安定の一期生

:てぇてぇ

:確かに色々盛り上がったな


白詰ミワ:「生配信の現状だけど、まずは謝罪して今回の生配信に至った経緯と真宵アリスちゃんへの連絡ミスを説明したわね」


竜胆スズカ:「ふむふむ。まあ急に決まったし、アリスちゃんが悪くないことを説明しないとね」


白詰ミワ:「それからアリスちゃんがドッキリと勘違いしたこと。トゥーランドットや富士登山やカーナビゲーションシステムAliceなどを全部話して。……話題に事欠かなかったわね。なぜ半日でこれだけのことが起きるのか理解できないけど」


竜胆スズカ:「そこまで話しているんだ。さすがミワちゃんとレナ様」


白詰ミワ:「最後に事務所全員が誰かのドッキリを疑う混沌空間に閉じ込められたこともお伝え。ここまで話をして時間を稼いだのに、誰も戻ってこないから電話したわけ。その電話で開始直前の生配信から逃亡した一期生の竜胆スズカと胡蝶ユイが、オフィスで遊んでいたことが判明したわけだけど」


竜胆スズカ:「全然チョロインじゃない! かなり根に持っている!」


花薄雪レナ:「実は私も怒ってる。黒猫メイドロボ伝説とアリス疾風伝を生で見たかった」


胡蝶ユイ:「本当にごめんなさい。あとで埋め合わせします。事務所の内部やスタッフの顔とか映っているから公開できないけど、スタッフがちゃんとしたカメラでムービー撮っていたから許して」


花薄雪レナ:「ホント! ハイライトあるの! 絶対に見る! 許した!」


白詰ミワ:「……レナ様が本当にチョロインだった」


:根に持ってたw

:そりゃあ生で見たかったよな

:なぜムービー撮っているんだよ

:ネタ探しのためにカメラを準備しておくのは配信業の嗜み

:ハイライトw

:レナ様チョロイン


白詰ミワ:「そっちはどうしてあんなことになっていたわけ?」


竜胆スズカ:「うーん……どう話せばいいものか。ほらトゥーランドットのせいで、アリスちゃんにドッキリではないと説明するのも難しいでしょ」


白詰ミワ:「そうね。あなたの身内は理解できない常識外れの方向音痴でした。富士山の麓まで行ったのはトゥーランドットだからです。こんな説明ならまだ事務所のドッキリの方が信憑性あるわね」


竜胆スズカ:「それに説明できてもアリスちゃんに責任を押し付ける形になる。本番の配信がすでに始まっていますよ。アリスちゃんが勘違いしたせいで待たせていますよ。そんな感じになってしまってはいけない」


白詰ミワ:「……下手に説明すると責任を感じそうね。事務所側の連絡不備が重なり、不信感を持たれても仕方ない状況だった。一方的にこちらが悪い。けれどドッキリはアリスちゃんの勘違い。アリスちゃんが遅れた理由も悪く言えば身内の不始末だし」


竜胆スズカ:「それはダメ。面白くない。遅れた経緯が衝撃的なのに、そんなつまらない説得はあり得ない! ならば面白おかしくしなくては! よし鬼ごっこ形式で追いかけて配信のネタしよう。どんな形であれ配信に貢献して、盛り上がっていれば罪悪感も薄れるはず」


白詰ミワ:「ふむふむ」


竜胆スズカ:「そうしたらああなった」


白詰ミワ:「普通ああはならんやろ!」


:後輩に責任を押し付けないための配慮

:割とまともな理由で草

:ノリノリで実況していた奴とは思えない

:手段はともかくただ言葉で説得するよりはアリスが責任感じずに済むか

:ミワちゃんwww

:ツッコミwww

:封印されし関西弁が飛び出すほどかw


竜胆スズカ:「ミ、ミワちゃん落ち着いて! 私だって想定外だったんだよ。アリスちゃんは一年間引きこもっていたわけだし、こちらは女性スタッフだけで二十人近くいる。すぐに捕まえるつもりだったの!」


白詰ミワ:「……うん。ごめん。ちょっと興奮しすぎた。それで?」


竜胆スズカ:「いざ始めてみるアリスちゃんの身体能力が想定外すぎた。先行で盛り上げ役を買って出た私とランランは瞬殺されてリタイヤ。他の捕縛要員も次々脱落してさ。アリスちゃんの驚異の身体能力! セツナちゃんにその理由を聞いたらなんとね!」


白詰ミワ:「なんと?」


竜胆スズカ:「アリスちゃんは忍者の末裔だった」


白詰ミワ:「えっ? いやいやいやあり得ない……ホントに? マジで?」


花薄雪レナ:「おぉーーーアリス疾風伝!」


胡蝶ユイ:「ちょっとリンリン! こんな場面でわかりにくい嘘をついちゃダメでしょ!」


白詰ミワ:「嘘なの!? ちょっと信じかけた自分が恥ずかしい」


花薄雪レナ:「アリス疾風伝じゃなかった……」


胡蝶ユイ:「アリスちゃんは引きこもっている一年間ずっとゴリラを倒すために修行していたんだから!」


白詰ミワ:「そうそうゴリラを倒すためだよね……ってないよ! 忍者の末裔よりないよ! ランランまであり得ないボケを挟まないで! ランランは同じツッコミ側の人間だから」


:驚異の身体能力

:忍者の末裔w

:あー嘘なのかよ

:一瞬でもアリスならあり得ると信じてしまった

:……ゴリラ?

:ゴリラを倒すためwww

:前にアリスが配信で言っていたけど諦めた奴だよな

:一度本気でヤろうと考えただけでも笑えるが

:ランランのわかりやすいボケにも乗ってあげるミワちゃん


胡蝶ユイ:「……えっ? いやアリスちゃんがゴリラを倒すために修行していたのは本当だけど」


白詰ミワ:「いやいやいや! そのボケは苦しいって。さすがにそれはない」


胡蝶ユイ:「信じてもらえないだと!? そうだ同じ三期生なら! ってリズ姉お腹抱えてどうしたの!?」


リズベット:「ぷっ! ご、ごめんなさい。先輩方のやり取りがツボに入っ……ぷ……ぷふお腹痛い。み……ミサキさんお願い」


七海ミサキ:「リズ姉が腹筋崩壊したので私が答えます。アリスちゃんは一年間引きこもっている間に、ゴリラを倒すための修行をしていたのは本当です」


白詰ミワ:「三期生まで巻き込んでボケなくても……マジ?」


七海ミサキ:「マジです。以前に配信で語っていた通り、アリスちゃんは一年前にヒトは生身でゴリラに勝てないと悟りました。けれどそれは格闘戦での討伐を諦めただけです。武器を持てば勝てると修行を続けていました」


白詰ミワ:「……私に対するドッキリじゃなくて?」


七海ミサキ:「三期生が一期生にドッキリを仕掛けるなんて恐れ多い。マジです」


花薄雪レナ:「……さすが我が妹。予想の斜め上を行った」


:マジですw

:ランランのボケと思ったらマジかwww

:忍者の末裔よりあり得ない理由

:さすがアリスw

:そりゃあ全部知っているリズ姉の腹筋も崩壊するわw

:ドッキリを疑いたくなる気持ちが凄くよくわかる


七海ミサキ:「重ねてさっき私がアリスちゃんから、直接聞いた最新情報です。アリスちゃん驚異の持久力の秘密。この一年間特殊な呼吸法を身に着ける努力もしていたようです」


白詰ミワ:「お願いだから重ねないで! もしかして呼吸法って全集中的な!?」


七海ミサキ:「そうです。アリスちゃんは悔しそうに『残念ながら私には才能がないみたいです。あの山を走破できる気がしないですし、岩も切れそうにありません』と言っていました。身に着けることはできなかったみたいです」


白詰ミワ:「渋滞しているのはボケ? それとも現実? 誰かドッキリだと早くネタ晴らししてくれない?」


竜胆スズカ:「その話は今初めて聞いた。そっか……あの走り続けられる秘密は呼吸法か」


七海ミサキ:「それと関係しているのか『巨大な獣相手に斬撃は無謀だと悟りました。だから諦めて先人の知恵に従い、最強近接武器の槍を極めようとしています』と以前に言っていましたね。だから現在は槍を極めようとしています」


胡蝶ユイ:「つまりアリスちゃんは改造強化メイド服を身にまとう刀の道を諦めた槍使いと。一応補足すると忍者の末裔ではない」


七海ミサキ:「他にもあの回避能力は小動物の本能によるものだとか」


竜胆スズカ:「なるほど。避けるのが上手いはずだね。個人的にはもう忍者の末裔でいいと思う」


七海ミサキ:「あとこれもアリスちゃんが配信でも語っていた話ですけど。机の上の戦いなら世界を狙えます。今日見た限り空中戦で勝てる気がしません」


花薄雪レナ:「……我が妹の強キャラ感がパない」


白詰ミワ:「よし理解した! 真宵アリスちゃんはバーチャルな存在ね」


竜胆スズカ:「……とうとうミワちゃんが理解を放棄した」


白詰ミワ:「どう理解しろっていうのよ! あさっての方向に属性過多なの! なんでそんな子に無謀な戦い挑んでいるの!? もうガチ勢よ! 存在が理不尽ガチ勢! 勝てないよね!? むしろどうやってタッチしたの!?」


:呼吸法www

:全集中言うなw

:才能ってなんだろう?

:巨大な獣相手に斬撃は無謀ってなにを想定しているんだw

:ゴリラだろ

:リンリンランランが忍者で対立してる

:アリスだけ生きている世界観おかしいwww

:メイド服の槍使い

:小動物の本能w

:空中戦が得意な槍使いって竜騎士かな?

:竜騎士アリスの実装はよ

:バーチャルな存在だけど意味違うだろwww

:あさっての方向に属性過多w

:存在が理不尽ガチ勢

:そりゃあジャンプされたらタッチできん




お読みいただきありがとうございます。


毎日1話 朝7時頃更新です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 机の上での戦いって、普通なら図上演習とかそういうのを連想するよね… 机の上で格闘戦はうん…変な笑いしか出てこない。
[一言] トラブルの神というか撮れ高の神に愛されすぎてるアリス! 恐ろしいコ、<○>Д<○>カッ
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