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【第2巻発売中】引きこもりVTuberは伝えたい  作者: めぐすり
第六章ーThis is my life, This is my story.ー
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【閑話】聖アリスさんデー記念配信④

 手作りチョコレート配信は入念な準備と四人の的確な役割分担と手際により、無事に予定されていた量のチョコレートを作り終えることができた。


 その裏で行われていた残りメンバーによるレースゲーム大会。

 通称バレンタイン杯も大盛況で幕を閉じている。

 始まりこそ『お菓子作り戦力外組』や『女子力壊滅組』などとコメントで煽られていた。

 けれど途中から『一期生おめでとう』などの祝福コメントが量産されるサプライズが発生し、一期生が次々とコースアウト。

 無事に一期生が下位を独占する結果となったが大成功の証だろう。


 そして公式チャンネルではバレンタイン特別配信が始まった。

 一期生、二期生、三期生の総勢十二名が勢揃いしたディナーパーティだ。


リズ姉:「それでは改めて」


総勢十二名:『ハッピーバレンタイン!』


白詰ミワ:「……くすん」


竜胆スズカ:「ほら皆が急にお礼とかお祝いとかするからミワちゃんが泣いちゃった」


胡蝶ユイ:「リスナーさんの手のひら返しも見事だったよね。一期生の女子力が心配とか、一人もあっちの配信に参加していないなんてとか、散々煽ってきていたのに、一斉におめでとうだもん。なにが起こったのかと思ってビックリしたよ」


花薄雪レナ:「まさか配信中にサプライズ仕掛けられるとは思わなかった」


リズ姉:「ははは……まさかここまで反響が大きいとは思ってませんでした」


翠仙キツネ:「やな。まさかゲーム企画でレナ先輩が下位に転落するとは」


花薄雪レナ:「いつもは仕掛ける側だから。それにあれはリンちゃんが悪い」


碧衣リン:「キツネには負けたけど総合二位」


七海ミサキ:「……リン先輩は終盤アイテムが鬼引きでしたからね」


:ハッピーバレンタイン!

:一期生おめでとう!

:ミワちゃん泣いてるw

:レナ様が虹の道から落ちるのはマジで珍しい

:いや下位に落ちたのは祝われた直後の一期生に対して碧衣リンが雷とか理不尽なアイテム使いまくったからだろ

:なんというか強力なアイテム引くタイミングが本当に碧衣リンで笑えた

:サプライズで困惑している一期生を躊躇なくぶっ飛ばしていくストロングスタイル


桜色セツナ:「そっちも楽しかったんですね。でもこちらのチョコレート作りも楽しかったですよ。つまみぐいも美味しかったですし」


胡蝶ユイ:「本当に美味しそうだったよね。作りたてのガナッシュ」


竜胆スズカ:「そっちの配信はキャッキャしてて凄く女の子感あったよね。……で、少し気になっているんだけどアリスちゃん?」


真宵アリス:「なんでしょうかスズカ先輩」


竜胆スズカ:「ディナーの一品目のこれ……チャーシュー?」


真宵アリス:「チャーシューです。カレン先輩のリクエストで朝から仕込みました」


紅カレン:「はいはいはい! お酒のおつまみにリクエストした!」


真宵アリス:「手作り組はさっきチョコレート食べたので。それにメニューがチョコレート関連ばかりだとさすがに飽きる。そんなわけで一品目は誰でも簡単にできる軽食の紹介です。チャーシューをこれで挟んで食べます」


胡蝶ユイ:「確かにチョコレートばかりだとね。本当にアリスちゃんは色々と気がつくというか。それでこの白い生地……えーと?」


真宵アリス:「パオです」


胡蝶ユイ:「パオ?」


真宵アリス:「中華のお饅頭の皮を楕円形に引き伸ばしたまま蒸したものです。二つ折りの豚の角煮饅とか見たことありませんか? 中国だとハンバーガー代わりに食べられるらしいです」


竜胆スズカ:「あるある! アレか」


真宵アリス:「はい。これにチャーシュー乗せて、好みで煮詰めたチャーシュータレをかけて、薬味代わりにわさびマヨネーズとあえておいたキャベツのコールスローを合わせて挟みます。軽食用なので二口サイズの小さめです」


リズ姉:「それではメインの前に各自で自分の分のパオを作って食べましょう」


花薄雪レナ:「……美味しい」


紅カレン:「このチャーシュー絶対お酒にあう!」


七海ミサキ:「わさびマヨネーズであえたキャベツのコールスローか。あらかじめ作っておけば色々な付けあわせに便利かも。わさびは刺し身だけではなく脂っこいお肉との相性いいし」


翠仙キツネ:「なあアリスちゃん。このわさびマヨネーズに自家製やんな?」


真宵アリス:「はい」


翠仙キツネ:「前から気になっててんけど、こういう甘くて濃厚なマヨネーズってどこかに売ってるん?」


真宵アリス:「それはマヨネーズに練乳を混ぜているんです。市販品も探せばあると思いますけど」


翠仙キツネ:「練乳!?」


真宵アリス:「チャーシューはおつまみ用に作っているので、お酒に合うように醤油ベース。糖分は控えめです。だから一品料理として出すために、わさびの辛味とマヨネーズの酸味と練乳の甘みで全体の味を調整したんです。甘めのチャーシューを挟む場合のマヨネーズは練乳抜きですね」


黄楓ヴァニラ:「さすがアリスちゃん。お菓子作りのときも思ったけど、簡単な軽食でもちゃんと味のバランスとか考えているのよね」


:キャッキャうふふな手作りチョコレート配信と煽り煽られのレースゲーム配信

:どこのこの差がついたんだろうか

:やはり女子力の差か

:でも一品目がチャーシュー

:パオ?

:漢字で書くと包だな

:中華風バーガー

:チョコレートばかりだと飽きるからか

:わさびマヨネーズに練乳で味を調整か

:やっぱり真宵アリスは女子力が斜め上に行き過ぎていてもう女子力ではないような


リズ姉:「それではメインのアリスちゃんお手製のローストビーフを切り分けますね。見てくださいこのブロック肉! ここから分厚くカットしていきますよ」


花薄雪レナ:「でっかいお肉! 美味しそう! 手伝おうか?」


七海ミサキ:「先輩方は主賓なので座っていてください。私が配膳手伝うね」


真宵アリス:「切り分けたらひと手間ありますから私もやります」


七海ミサキ:「まだなにかあるんだ」


真宵アリス:「本当にひと手間だけです。軽くこうして」


七海ミサキ:「ん、了解。私の方でもやっておくね」


真宵アリス:「お願いします」


竜胆スズカ:「さてメインディッシュが全員に行き届いたわけだけど、ミワちゃんもう大丈夫そう?」


白詰ミワ:「ええ」


竜胆スズカ:「じゃあ最初の一口目はミワちゃんから。モーレ風ショコラソースだったよね。カレー粉を加えたバレンタイン用の特別なソースらしいから」


白詰ミワ:「そ、それじゃあ私から食べるわね。……これだけ分厚いのにスッと入るナイフ。これだけでこのローストビーフが柔らかくて美味しい。そう確信できるのが凄い」


リズ姉:「それ切り分けているときも思いました。絶対に美味しいローストビーフだって」


白詰ミワ:「では遠慮なくショコラソースをつけて、いただきます。……美味しい。柔らかくてお肉の旨味が詰まったピンク色のローストビーフが美味しいのはもちろんだけど、このショコラソースが抜群に美味しい」


胡蝶ユイ:「割と味にうるさいミワちゃんがこの反応とは、ソースを含めて掛け値なしに美味しいんだ」


白詰ミワ:「実はローストビーフに甘いソースの組み合わせには苦手意識があったんだけどね。ベリーソースとかフルーツソースとか一口目は美味しくても後でクドくなりがちで。でもこのショコラソースは何枚でも食べられそう。最初にチョコレートの甘みや酸味とバターの風味が来るんだけど、すぐにガツンとした牛肉の旨味が感じられて、最後はカレー粉のスパイスの刺激と香りが鼻を抜けて、すぐにもう一口いきたい。噛みしめるごとに食欲が湧いてくるというか。……料理にカレー粉よく使う方だけどこんな使い方もあるなんて、私も――」


竜胆スズカ:「――はいストップ。ミワちゃんが饒舌モードに入ったら美味しいのは確実。でもミワちゃんが全部言い終えるのを待っていたら私達が食べられない。そんなわけで皆も食べよう!」


紅カレン:「じゃあ私も! ……フルボディの重厚な赤ワインが飲みたい。ナッツとか複雑な風味が合わさった高級な奴。軽いのだとショコラソースにもお肉の旨味にもワインが負けちゃう」


胡蝶ユイ:「うわぁ……本当に美味しい。ショコラソースもだけどローストビーフ自体が本当に美味しい」


桜色セツナ:「アリスさん。さっきミサキさんとひと手間云々と話していましたけど、この美味しさと関係あるんですか」


真宵アリス:「うん。牛肉の旨味を引き立たせるために、お肉にお塩を一振した」


桜色セツナ:「お塩ですか?」


真宵アリス:「付けあわせが普通のソースならやらないけどね。今日は甘みのあるショコラソースだから。さっきミワ先輩が言ったように甘みや酸味が中心のソースは途中で飽きやすいの。ソースの甘みや酸味にお肉の旨味が負けちゃうから。だからローストビーフ側にしっかりと下味をつけて、お肉の味を引き立たせておく必要がある。でもブロック肉のローストビーフにしっかりと下味つけるのは難しい」


七海ミサキ:「だから切り分けたあとに少し塩を振ってから配膳したわけ」


真宵アリス:「ローストビーフに塩味と旨味。ショコラソースにチョコレートとバターの甘味と酸味とコク。あとはカレー粉の辛味と香り。ちゃんと美味しい……安心した」


:美味そうな肉の塊

:本当に分厚くカットしあがって! しあがって!

:チョコレートとカレー粉のソースか

:ミワちゃんが実食!

:もうミワちゃんの感想が美味しい

:お肉に甘いソースが苦手はわかる

:美味しんだけど量を食べようと思わないよな

:安定のカレンwww

:カレンがすぐにあわせて飲みたいお酒を出すときはガチ

:塩?

:ほへぇ~

:……マジで腹減ってきた

:その辺で買ってきたローストビーフでは満たされそうにない飢えがきつい

:やはり斜め上の女子力


真宵アリス:「あとトリュフチョコレート作りのときに取っておいたガナッシュにローストしたナッツを砕いて加えて、パオで挟んだり、パンでディップしても美味しい」


桜色セツナ:「そんな食べ方まで!?」


次回はバレンタインのおまけ回


朝7時頃更新です。

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