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【第2巻発売中】引きこもりVTuberは伝えたい  作者: めぐすり
第六章ーThis is my life, This is my story.ー
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第176話 真宵の桜色配信④-ジェラートの消失と真宵アリスの実在性-

ある意味真宵アリスに切り込む話。

そして子役の世界を生き抜いた桜色セツナが無意識に接する相手の本質を探ってしまう。

そんな悲しい習性の話でもある。

 食後の即興ファッションショー。

 わざと灯りを消して、暗闇の中に浮かび上がる猫耳パーカーではしゃぎ回る。

 そんな楽しくも煌びやかなひと時は終わりを告げた。


真宵アリス:「それじゃあデザートのジェラート食べよう」


桜色セツナ:「ジェラート! いいですよね。もしかしてそれも手作りですか?」


真宵アリス:「なんちゃって手作りだけどね。市販のバニラアイスにバニラエッセンス足したり、市販のチョコレートソースやフルーツソースを混ぜただけだけどね。事務所からアイス用の冷えるプレート借りて昨日色々作ってた」


桜色セツナ:「また美味しそうなことをしますね。でも……そのさっきから気になっていたんですけど、ねこグローブ先生とマネージャーさんはお食事いいんですか? さっきから悲しそうな目がドアの隙間から見えていますけど」


真宵アリス:「……いいの。あの人達は今日コンビニ飯だから」


桜色セツナ:「コンビニ飯!? アリスさんもしかして……怒ってますか? ひと悶着あったって聞いてますけど」


真宵アリス:「さっき『ファンタジックわん』の皆さんとお仕事したって言ったよね」


桜色セツナ:「聞きましたね」


真宵アリス:「学生時代の仲間と久しぶりの集合。ねこ姉達は呑み会を計画してね。行われたのが昨日の話」


桜色セツナ:「まさかアリスさんがその準備を?」


真宵アリス:「さすがに人数が多いからそれはない。ちゃんとした店で楽しんでいたみたい。それは別にいいの。私は一人でお留守番でも気にならないし、今日の配信の準備とか色々あったから。……でもね!」


桜色セツナ:「でも?」


真宵アリス:「酔ったまま集団で家に帰ってきて。私が仕込んでいたモノを無断で食べたのは許せない! 確かに今日の収録で出すつもりはなかったけど味付け卵は全滅。ジェラートもかなり食べられた。確かに多めに作っていたし、量に余裕はあったよ? 確認されたら食べていいって言ったよ? でも無断はダメでしょ!」


桜色セツナ:「は、はい!」


真宵アリス:「特に自信作のレモン味とラムレーズン味は完全に食べつくされた。レモン味の『美味しくて……つい』は許せた。でもラムレーズン味は『微量でもお酒が使われているラムレーズン味の手作りジェラートは配信で使えないから』とか言い訳されて! 配信で使えなくても食べつくしていい理由にはならないでしょ!」


桜色セツナ:「おっしゃる通りです!」


真宵アリス:「そんなわけでねこ姉とマネージャーは本日コンビニ飯なのです」


:てぇてぇ

:こいつら本当に仲いいな

:ご機嫌なアリスの鼻歌がなんか癖になる

:心が浄化された

:もう終わりか

:ジェラート?

:手作りジェラートか……いいな

:さすがに一から作ってないにしても十分美味そう

:市販のアイスにウイスキー少しかけたりするだけで味が変わるからな

:ねこグローブ先生とマネージャーwww

:なにしてんのw

:コンビニ飯?

:なにをしたらそんなことに

:またアリス呑み会の準備をさせられたのか?

:うん……無断はダメだ

:怒ったアリス珍しい

:そりゃあ準備したもの食べられたらな

:手作り味付け卵美味しいよね

:なくなるのは一瞬

:レモンジェラートさんはお亡くなりになりました

:ラムレーズン味は配信でダメなのか?

:未成年だし手作りでお酒を扱うお菓子は変に炎上する可能性あるからな

:重箱の隅をつつく人がいるから間違ってはいない……でも食べつくす言い訳にはならない

:未成年に怒られる大人たち

:その結果コンビニ飯か

:姉妹喧嘩って感じだな

:コンビニ飯も『本日』だけだからアリス優しいだろ

:本当の姉妹喧嘩なら一生責められる案件

:食べ物の恨みは怖い


桜色セツナ:「ぷっ……ぷ……ははははははぁ」


真宵アリス:「なに!? 急に笑い出してどうしたのセツにゃん? バナナジェラートに笑えるところあった?」


桜色セツナ:「い……いえ。バナナジェラートは甘くて美味しいです。ただアリスさんもちゃんと生きているんだな。生活しているんだな。そう実感するとなんかおかしくなってしまって」


真宵アリス:「ん? 私は生きているけど」


桜色セツナ:「ですよね。知っていました。でも私の中のアリスさんは少し特殊だったので。普段のアリスさん。正確には家でのアリスさんはこんな感じなんだと思っただけです」


真宵アリス:「もしかしてイメージと違ったとかそんな話?」


桜色セツナ:「いえ……ん? そうなのかな? そうであってほしいままだったからイメージ通り。イメージと違うわけではないんですけど」


真宵アリス:「悪い意味で裏切ったのでないならいいけど」


桜色セツナ:「アリスさんのことをもっと好きになったので悪い意味ではないですね。そうですね……アリスさんはその人が持つ空気感とかオーラって理解できますか? 芸能界だとよく言われる話ですけど」


真宵アリス:「実際に会うと光って見えたとか、その人が現場にいると空気が変わるとか」


桜色セツナ:「特に役者の世界では言われます。華がある。華がない。重みがある。空気を持っている。それによって主役になれる人や脇役で輝く人が分かれます。オーラのあり過ぎてもよくない。演技が下手なわけでもないのに『いつも同じ演技』と叩かれることもあります。役ではなくその人自体から受ける印象が強いせいですね。声優さんだともっとわかりやすいかもしれません。声に特徴的過ぎて役幅が狭い。でも演技自体は本当に上手いし、演じ分けもされている」


真宵アリス:「それはわかるかも」


桜色セツナ:「私にとってアリスさんは儚い人です」


真宵アリス:「儚い?」


桜色セツナ:「人に夢と書いて儚い。夢のような人と言ってもいいかもしれません。実は最初にアリスさんと出会ったとき私は怖かったんです」


真宵アリス:「えっ!? そうだったの? なんか変なことを言ったかな? あまり喋らなかった気がするけど。一年近く引きこもっていて久しぶりの外との会話だったし」


桜色セツナ:「そう口数は少なかった。でも受け答えははっきりとしていて頭がいい。会話の間が上手くて他の人の話をちゃんと聞いている。我が強くない。一つ年上の引きこもり女性と聞いていたので、警戒していましたが拍子抜けだった記憶があります」


真宵アリス:「警戒はされてたんだ。仕方ないけど」


桜色セツナ:「そして話し終えたあとにぞっとしました」


真宵アリス:「ぞっと?」


桜色セツナ:「話した内容もアリスさんの印象も残っている。それなのにアリスさんの存在が見えなかった。こんなにも無色透明な人がいるんだと怖くなった」


真宵アリス:「それは存在感がなかったという話? オーラを全く感じなかったとか」


桜色セツナ:「違いますよ。むしろ存在感は強かった。それなのに見えなかったから怖かったんです。透明な存在感。持っている空気が儚い。それが私のアリスさんに対する第一印象でした」


真宵アリス:「なんか幽霊みたいな扱いだね」


桜色セツナ:「そうかもしれません。実際に私はアリスさんのデビュー配信までアリスさんの実在を疑ってましたから。デビュー配信も行われるか不安だった。途中で消えてしまうんじゃないかって」


真宵アリス:「私が引きこもりだから土壇場で逃げだしそうということ?」


桜色セツナ:「そうも考えていたかもしれません。けれど私は同期となる虹色ボイス三期生真宵アリスの実在そのものを疑っていた。引きこもり云々はただの理由付けですね。本当にいるのかがわからなかった。そしてアリスさんデビュー配信で確信したんです」


真宵アリス:「デビュー配信でようやく実在を認識してもらえたと」


桜色セツナ:「いえアリスさんは儚い人だと確信したんです。あまりに儚い。そこにいるとわかっているのに不安になる。実在についてはそのあともずっと不安でした。なんなら今も不安です。だからさっき笑ってしまった。目の前にいる相手の実在を疑う私自身がおかしくて」


真宵アリス:「目の前にいるのに不安なの!? もう一年の付き合いなのに!」


:手作りジェラート美味そう

:実際に美味いんだろうな

:なんで画面越しで腹減るんだろ

:匂いと味が想像できるから余計に食いたくなる

:セツにゃんどうした?

:なんか急に笑い出した

:オーラか

:さすが子役出身というか見え方があるんだろうな

:まあ本当に演技が下手だったら主役になれてないな

:演技が下手だと存在感よりも下手さが目立つから

:アリスは儚いか?

:わかる気がする

:むしろ強烈なインパクトがあるような

:無色透明なオーラ

:存在感があるし忘れてもいないけど存在がつかめない

:だから儚いか

:今も実在を疑われているw

お読みいただきありがとうございます。


毎日1話 朝7時頃更新です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ねこ姉とマネージャーだけじゃなく、ファンタジックわんの面々も含めた酔っぱらい集団による食べ尽くしだったのか~。 ねこ姉とマネージャーへの制裁は晩ごはん抜き。それでは共犯のファンタジックわん…
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