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【第2巻発売中】引きこもりVTuberは伝えたい  作者: めぐすり
第五章ーBe Ambitious! 輝け虹色の未来祭ー
158/218

第158話 閑話 クリスマス特別編-三期生クリスマス配信「……おや!? 真宵アリスのようすが……!」-

 通常回はお休みです。

 カクヨム連載時のクリスマス更新話です。

 三期生のクリスマス配信の模様をお楽しみください。

 メリークリスマス!

 虹色ボイス公式配信では各期生ごとに分かれてクリスマスリレー配信が行わている。

 一番手は三期生。

 スターターとして盛り上げるのが務め。

 普段の配信とは異なり力の入ったオープニングアニメーションが流れ始めた。

 画面上部には【生アフレコ中】のテロップが表示されている。


 桜色セツナが夜の空に手を伸ばす。

 その手のひらにはひらりと雪が舞い落ちてきた。


桜色セツナ:「雪……降ってきたんだ。急がないと。リスナーさんたちが待ってる」


 服装はクリスマス用のミニスカサンタコスチューム。

 大きな白い袋を背負って大きなソリに乗り込んだ。

 そしてトナカイに話しかける。


桜色セツナ:「ミサキさん。走れますか?」


七海ミサキ:「雪降る中で山は走りたくないけどね。まあ今は蹄だし大丈夫。……まさか初めてのアフレコでリアルなトナカイをやるとはね」


桜色セツナ:「ミサキさんはまだいいです。リズ姉なんてセリフがないですからね。画面のどこかに映ってます。リスナーの皆様は見つけ出してください」


七海ミサキ:「それじゃあ行くよ」


 ソリが動き出し、画面が切り替わる。

 テロップには【イニシャルA。VR対応映像が流れます】の文字。

 峠を攻める二台の車。高ぶるエンジン音。命がけのコーナリング。フルCGで描かれた峠の戦いの中でドライバー達が毒づく。


ドライバー一(真宵アリス):「毎年の儀式とは言え、雪かよ」


ドライバー二(真宵アリス):「あちらさんも大変だろうな。そろそろ来るぞ。後ろに気をつけろ」


ドライバー一(真宵アリス):「来た! クリスマスの悪魔のお出ましだ」


 ミラーに映るトナカイ。

 ひいているソリに袋を背負ったサンタが乗っている。


ドライバー二(真宵アリス):「今年は抜かせるかよ」


ドライバー一(真宵アリス):「内に寄せろ。進路を塞ぐぞ」


 後ろから迫るトナカイ。

 囲むような位置取りをして抜かせないようにする二台の車。

 走り屋たちのサンタ捕獲作戦が毎年クリスマスの恒例行事。

 今日このまま抜かせなければ、サンタを仲間のもとにご招待できる。

 プレゼントゲットだ。

 片時も気の抜けない攻防。

 トナカイは少しの隙間からすり抜けるように前に出てくる。

 それがわかっているから二人のドライバーのコンビネーションが必要なのだ。

 レースは進み、崖に面した急カーブに差しかかる。

 減速するしかない。

 そのタイミングがずれてスペースが空いた。

 トナカイがその隙間を見逃すはずがなかった。


ドライバー二(真宵アリス):「しまった!」


ドライバー一(真宵アリス):「ここでスピード上げるだと!?」


 二台の車の前にトナカイとソリ。減速せず崖に突っ込む。そして跳んだ。

 トナカイはあの巨体でありながら時速八十キロで走り、垂直に近い崖もすいすい登る驚異の跳躍力を持っている。ただし後ろのソリはヤバイ。


桜色セツナ:「きゃああぁあぁっぁぁぁぁ~~~~~~~~~っ!!!」


ドライバー二(真宵アリス):「……クレイジー」


ドライバー一(真宵アリス):「今年のトナカイもやばかったな」


ドライバー二(真宵アリス):「つーか空飛ばねーのかよ」


 ソリはガタガタの山道を進み、凍結した雪道をドリフトし、途中で空を飛ぶことを思い出す。その間はずっと桜色セツナ視点の絶叫マシン映像が流れている。


 VR対応の体験型アトラクションだ。

 どこに力を入れているのだろう。

 そしてようやく巨大なクリスマスツリーに到着した。

 真っ暗なシルエット。

 飾りつけはされているのがかろうじてわかる。

 桜色セツナはボロボロだ。あきらかに叫び疲れている。

 一人だけVRゴーグルをつけていたから本当に疲れている。


桜色セツナ:「……無理です。これでアフレコは本当に無理です。テストプレイをアリスさんにさせないでください。アリスさん基準でセリフを用意されても困ります。セリフが完全に飛びました」


七海ミサキ:「セツナちゃん。えーと……もう着いたよ。イルミネーション点灯させて」


桜色セツナ:「そうでした」


 ふらふらになった桜色セツナがクリスマスツリーの前に立ち、白い袋を開ける。

 すると袋から溢れ出した虹色の光が、巨大なクリスマスツリーのイルミネーションとなって煌めきを放った。


:始まった!

:冒頭からアニメーション?

:サンタコスセツにゃん!

:みさきちリアルなトナカイかよw

:人型ですらないwww

:クイズリズ姉を探せ

:イニシャルアリスw

:いきなりレーシングアニメーションぶっこんでくるなw

:相変わらずアニメーションに気合入ってるな……(呆れ)

:リズ姉いた!

:声アリスじゃねーかw

:男性役で一人二役か

:デッドヒート

:冬の路面でやることじゃない

:崖に飛んだ!

:……え? 落ちるの?

:セツにゃんガチの悲鳴www

:VR対応ってこれのことかw

:絶叫マシン映像

:酔いそう

:悲鳴が続くと思ったらセリフ飛んでたwww

:テストプレイがアリスか

:そりゃあ人選ミスってる

:アリスはむしろ喜びそう

:みさきちがフォロー回った

:クリスマスツリーが綺麗だな

:セツにゃん吐きそうだけどな

:あ……リズ姉


桜色セツナ:「そんなわけで! 虹色ボイスクリスマス公式配信の開始です! 今日は全員クリスマス仕様の特別アバターですよ」


 画面がスタジオに切り替わり、疲れた様子のサンタコス桜色セツナとトナカイのコスプレをした七海ミサキの二人が登場した。


七海ミサキ:「お疲れ様セツナちゃん。……なんか大変だったね」


桜色セツナ:「……ミサキさんが崖から飛び降りるから」


七海ミサキ:「そんなジト目されても。あのトナカイは私であって私じゃないからね」


桜色セツナ:「そうですけど」


七海ミサキ:「それよりもリズ姉を呼ぼうよ。リスナーの皆様先ほどのアニメーションの中でリズ姉をいくつ見つけられましたか?」


桜色セツナ:「正解は三つ。一つ目は私が見上げた空の雲の形がリズ姉。二つ目は走り屋の車がリズ姉の痛車。三つ目は点灯したクリスマスツリーのイルミネーションの中にリズ姉が混じっているでした!」


七海ミサキ:「そんなわけでリズ姉も登場して」


 スタジオに姿を現したリズ姉。

 深緑のドレスに煌びやかなイルミネーションで輝いている。

 クリスマスツリーのコスプレだ。


リズ姉:「……あたしの扱い酷くない? セリフないし、リズ姉を探せって」


桜色セツナ:「リズ姉も絶叫系VRしてみますか?」


七海ミサキ:「私はリアルなトナカイだったよ」


リズ姉:「……みんなも大変だね。絶叫系VRはお断り。あたしは今回のコスプレが久々に公式キャラクター設定に従っているだけマシかも。クリスマスツリーだしエルフっぽいよね」


桜色セツナ:「え?」


リズ姉:「なにを驚いてるの? さては忘れていたのかな。一応あたしはエルフだからね。今回はクリスマスツリー。つまり植物のコスプレなの。エルフっぽいでしょ」


七海ミサキ:「……忘れてないけど一つ言っていい?」


リズ姉:「なに?」


七海ミサキ:「……服のイルミネーションが煌びやかすぎてキャバ嬢にしか見えない」


リズ姉:「がーーーーーん!?」


:セツにゃんお疲れ

:ようやくスタジオか

:リズ姉の答え合わせか

:三つ?

:えっ……二つじゃねーの?

:俺一つしか見つけてない

:冒頭の雲の形www

:そりゃあわからん

:痛車はわかった

:リズ姉痛車www

:なんか事故率高そう

:運動音痴だからな

:クリスマスツリーの中にいたwww

:よく見ていればわかるw

:一応感動の点灯シーンにリズ姉いたからな

:おおーリズ姉が登場した

:これは……クリスマスツリーを模しているんだろうけど

:皆扱いが酷いな

:エルフっぽい?

:そういえばエルフだったか

:エロフだったな

:エロいからな

:キャバ嬢www

:みさきちナイスwww

:言いやがったw


桜色セツナ:「さて次は皆様お待ちかねのアリスさんの登場です。アリスさんの登場です。アリスさんの登場です!」


七海ミサキ:「三回言った」


リズ姉:「……キャバ嬢」


桜色セツナ:「サンタメイドコスのアリスさん。メイドサンタコスのアリスさん。どっちでも可です。さあどっち!?」


七海ミサキ:「違いがわからないけど、アリスちゃん登場して」


桜色セツナ:「ん? ……え?」


 光の中にずんぐりむっくりしたシルエットが現れる。

 明らかに人型ではない。

 想定外の造形のアバターに全員が困惑する中、ついに真宵アリスが姿を現した。


真宵アリス:「スシーーーーー!」


桜色セツナ・七海ミサキ・リズ姉:「「「なにそれ!?」」」


 それは巨大な握り寿司だった。

 白いシャリにネタはサーモン。顔はサーモンの部分から出ている。

 一同困惑の着ぐるみコスプレだった。


真宵アリス:「なにってお寿司」


桜色セツナ:「カァッーーーーートッ!」


真宵アリス:「カットってセツにゃん。これ生配信だからね」


桜色セツナ:「ダメです! いくらアリスさんでもダメです。今回は認められません! 可愛くないです!」


真宵アリス:「えっ!? このお寿司可愛くない?」


 ずんぐりむっくりした真宵アリス寿司が首を傾げる。

 その姿に桜色セツナはたじろいだ。


桜色セツナ:「う……ゆるキャラ的な意味で可愛いかも。でも誤魔化されません! 一体なんですか巨大なお寿司って」


真宵アリス:「今年は間に合わなかったけど、来年ブームが来るかもしれないコスプレ。モンスターを育てる某国民的な人気ゲームの新作にこんなモンスターが出てくるの。水辺で寿司に擬態するんだよ! 寿司に擬態して敵をやり過ごすの! しかもドラゴンタイプとか! なにこの意味の分からない生態系。その生き方にもの凄いシンパシーを感じたんだよ!」


七海ミサキ:「……なんかアリスちゃんに凄く刺さりそうなモンスターだね」


リズ姉:「建物内でカバンに擬態して人との接触を避ける子だからね」


真宵アリス:「このコスプレは来る。集団で色違いのコスプレして寿司の盛り合わせとイベント向きだし」


 グッと拳を握りしめて力説する真宵アリス。

 その姿は本気だ。

 本気で寿司のコスプレを気に入っている。


桜色セツナ:「気に入っているのはわかりました。でもダメです! だってクリスマスと関係ないですから」


真宵アリス:「なに言っているの! ネタがサーモンだよ! シャケだよ!」


桜色セツナ:「え? シャケとクリスマスになんの関係が?」


真宵アリス:「……え? セツにゃん本当にわからないの? セツにゃんはクリスマスにシャケを食べる文化圏出身なのに通じないの?」


桜色セツナ:「クリスマスにシャケを食べる文化圏?」


真宵アリス:「セツにゃんのデビューは実写の魔法少女だったよね?」


桜色セツナ:「は……はい。そうですけどクリスマスにシャケに心当たりはないですよ」


真宵アリス:「……失望しました。セツにゃんはセツにゃんにあらず。ダメにゃんです」


桜色セツナ:「ダメにゃん!? あれ……少し可愛いからそんなに嫌じゃない」


七海ミサキ:「名前に原型がなくなったね。さっきから笑っているけど、リズ姉はクリスマスとシャケの繋がりわかるの?」


リズ姉:「クリスマスにはシャケを食え! ってね。ニチアサ戦隊モノから出た恒例のネタなのよ」


七海ミサキ:「なるほど」


リズ姉:「戦隊モノと実写魔法少女は局が違うから同じ文化圏か怪しいけど」


:欲望に忠実なセツにゃん

:サンタメイドかメイドサンタか……それが重要だ

:なるほど……違いがわからん

:アリスはメイド服しか着ないからサンタ風のメイドでサンタメイドだろ

:このよくわからない理解度深いな

:ん? シルエットがおかしい

:すしーーーーー!

:すしーーーーー!

:すしーーーーー!

:なぜ寿司www

:カットwww

:セツにゃん起こったw

:可愛くないwww

:首を傾げられて可愛いと認めたw

:元ネタアレだよな……ウオノシラミの

:国民的な

:ブーム来るのか?

:めちゃくちゃアリスに刺さってたw

:やべー共通項が多すぎる

:小さいし頭いいし実はドラゴンタイプだし

:カバンwww擬態好きだもんなw

:クリスマスにはシャケを食えw

:まさかここで聞くとはw

:戦隊ネタまでぶっこんでくるなw

:これはわからないセツにゃんが悪いな

:セツにゃんはクリスマスにシャケを食べる文化圏出身だったw

:実写魔法少女は微妙に違うけど


桜色セツナ:「この際、私はダメにゃんでもかまいません! だがしかし! そのコスプレはチェンジです! これをこうしてと」


 桜色セツナが画面上のテロップに【……おや!? 真宵アリス(寿司)のようすが……!】と書き込んだ。


真宵アリス:「その文言はまさか!」


桜色セツナ:「今から特設ページで決戦投票を行います。お寿司なアリスさんがいいか、サンタ風のメイドなアリスさんがいいか! リスナーさんに判断してもらいましょう」


 セツにゃんの宣言により画面上に投票数と対戦ゲージが表示される。

 すでに特設ページから投票は開始されているようで、七割がサンタ風のメイド。なんと三割もお寿司に票が入っている。

 けれど劣勢なのでお寿司な真宵アリスから光が放たれ始めた。


真宵アリス:「これは進化の光!? ダメです。お寿司は進化しないんです! リスナーの皆様早くキャンセルボタンを押してください!」


桜色セツナ:「進化です! サンタ風のメイドさんへの進化を止めることなんて許されることではありません!」


 二人が必死で呼びかける。

 一進一退の攻防。……なんてことにはならない。

 お寿司は一気に押し負けた。短期決戦だったが九対一で文句なしの大敗だ。


真宵アリス:「お寿司がサンタに負けた……」


リズ姉:「むしろ一割も入ったことに驚きだからね!」


 落ち込む真宵アリスはそのままうずくまり、顔も引っ込めて隠す。

 スタジオにあるのは完全に巨大なお寿司だ。

 しかも進化の光で輝いている。

 光はだんだんと強くなり画面を真っ白に覆いつくす。

 その光が消えると、赤と白のサンタクロース風のメイドロボが無表情で立っていた。

 上部のテロップの文言も【おめでとう! 真宵アリス(お寿司)は真宵アリス(クリスマスバージョン)にしんかした!】に変わっている。


真宵アリス:「お寿司充電完了。お仕事モード起動。皆さまおはようございます。強制進化の圧に負けて誕生したサンタクロース型駄メイドロボ真宵アリスです。皆お寿司嫌いなの!?」


桜色セツナ:「きゃあぁ~~~~~アリスさん可愛い! スタジオでも着ぐるみ脱いでくれた! 可愛いです! お揃いです! サンタクロースです! プレゼントありがとうございます!」


リズ姉:「お寿司が嫌いなわけじゃないけど、ずっとスタジオに巨大なお寿司がいたら配信がシュールすぎるから助かったわ」


七海ミサキ:「それでは全員がちゃんと揃ったところで改めてオープニング挨拶をしようか」


リズ姉:「せーの!」


全員:「「「「メリークリスマス! 虹色ボイスのクリスマスパーティにようこそ!」」」」


お読みいただきありがとうございます。

明日から第6章(最終章)です。

毎日1話 朝7時頃更新です。

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― 新着の感想 ―
[一言] クリスマスにはシャケを食え!! これ農林水産省からオファーものでしょ(戦隊のときに本当にありました)
[一言] スタジオでも着ぐるみ着てるとか芸が細かいw
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