表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2巻発売中】引きこもりVTuberは伝えたい  作者: めぐすり
第四章 ーBe yourself, Everyone else is already takenー
102/218

第102話 アニメ特番公式生配信②-一期生の変人枠-

なぜかこんなところで出される一期生の本気。

一期生が他の期生に比べてキャラが薄いはずもなく、先輩としてまとめ役として普段抑えているだけです。

 あまりの完成度の高さにコメント欄の流れが止まった。

 ゲストの天依スイは今作デビューの新人声優のはずだ。

 プレシア教官は確かにカッコいいタイプの女性だった。けれど声はハスキー。教官ということもあり高圧的だ。

 こんな物腰柔らかな男装執事などではない。

 新人なのにロールプレイが決まり過ぎている。

 驚愕により時間が止まる。

 その静寂を打ち破ったのは胡蝶ユイの魂の叫びだった。


胡蝶ユイ:「オッドアイ男装美少女執事のイケメンボイスキタァぁアぁあぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


 キィーーーーーーンとハウリング音を残す嬌声。

 その衝撃にコメント欄も息を吹き返した。


:うっせぇーーーーーー!

:ヤバい音漏れた

:あれなにも聞こえない

:鼓膜敗れた

:いい加減にしろ胡蝶ユイ

:ちゃんと事前警告する真宵アリスを見習え一期生

:マジでうっさい

:久々でビビったが間に合った

:古参気取るつもりはないが天依スイの登場でヤバいと気付いた俺スゲー

:俺氏回避することに失敗して無事死亡……想像してみてくれ……電車内に「オッドアイ男装美少女執事のイケメンボイスキタァァァ」と轟く光景を……そして周りの反応を……なぜか綺麗なお姉さんに素敵な笑顔で頷かれたんだが……こういう時どんな顔していいのかわからない

:笑えばいいと思うよ

:……出会いがあってよかった?

:長文投稿兄貴にも春が来たのか(棒)


胡蝶ユイ:「天依スイ様! なにか言って! もっと言って! ワンモア! とにかく甘いの!」


天依スイ:「え……ユイお嬢様。なにか御用がおありでしょうか?」


胡蝶ユイ:「甘くないっ! でも困惑した感じもまたよし! 次をさあさあさあさあ!」


竜胆スズカ:「あーごめん。こうなったランラン……もとい胡蝶ユイは私には止められない。イケメンボイスに従順だから適当に甘い台詞で黙らせて」


天依スイ:「……わかりました。ユイお嬢様。その美しい声をボク以外の誰か聞かせたくないな。楽しい語らい時間はあとでゆっくりと……ね?」


胡蝶ユイ:(コクコクコクコク)


 胡蝶ユイが身悶えしながら黙り込み、ようやく配信に平穏が戻った。


:え? え? 叫んだのランランなの?

:天依スイの登場も驚いたけど胡蝶ユイで全部吹っ飛んだ

:……ランランが壊れた

:三期生から虹色ボイスを見始めたリスナーは知らないか

:最近大人しかったからな

:二期生の問題発生と三期生デビューが重なり最近ちゃんと先輩してたから

:胡蝶ユイは虹色ボイス一期生変人枠だぞ

:変人枠?

:三期生は真宵アリスと桜色セツナの未成年コンビ、二期生は呑んだくれと残念という概念の擬人化、そして一期生は胡蝶ユイと花薄雪レナのマニアック変人ども

:全期生半分変人枠とか多くね?

:逆に考えるんだ……むしろ変人枠が半分で済んでいると

:変人枠の中でも二期生が一番ヤバそうなのはわかる


雨宮ひかり:「あの……胡蝶ユイさんはどうしたんですか?」


竜胆スズカ:「ランランは声フェチなのよ。それもイケメンボイス好き」


雨宮ひかり:「……イケメンボイス好きの声フェチ」


竜胆スズカ:「しかもただのイケメンボイス好きじゃない。男性のボイスにそれほど興味がないのよ。女性声優がわざと声を低くして少年を演じているイケメンボイス好き。……今の天依スイさんみたいな」


雨宮ひかり:「なんてややこしい」


竜胆スズカ:「この話は過去に何度かラジオや配信でしているし、隠しているわけじゃないからね。ランランの初恋はアニメキャラだった」


雨宮ひかり:「初恋がアニメキャラですか。たまに聞きますね」


竜胆スズカ:「で、そのアニメキャラの声優が女性だったことに衝撃を受けた。それがきっかけで声優になったわけ。一番活躍していた数年前は凄かったよ。少年ボイスと言えば胡蝶ユイ。業界内で評判になるほど上手かったんだから」


天依スイ:「ユイお嬢様が出演されている作品を拝見したことがございます。現在販売されているユイお嬢様のボイスも視聴させていただきました。執事という大任を賜る際にとても参考になりました」


竜胆スズカ:「ああ……胡蝶ユイの男装ボイスコレクションシリーズを参考にしたんだ。だからそんなロールプレイになったわけね。実はあのシリーズはファンサービスでも収益目的でもない。後進育成のための資料としてランランが趣味全開で作成しているんだよ。ほらランランも本懐を遂げられて喜んでる」


胡蝶ユイ:(コクコクコクコク)


天依スイ:「そうなのですか? ずいぶん人気シリーズのようでしたが」


竜胆スズカ:「……世界にはランランと同じ趣味の人が割と多かった。あとからわかったんだよね。あの売り上げには事務所も予想外。ボイスの容量と比較して値段もかなり抑えていたから。事務所としては価格設定を見直したいけど、ランランが断固拒否していてね。据え置き価格でシリーズが増えていく」


雨宮ひかり:「宝塚とか熱狂的なファン層がいますから」


:……女性のイケメンボイス好きの声フェチとか業が深い

:好きが高じて声優となり少年ボイス極めているからな

:初恋がアニメキャラか

:割と有名な話だぞ

:一期生変人枠に納得

:胡蝶ユイお姉様の男装ボイスコレクションシリーズにはお世話になっております。

:ランラン色んな意味でやべー奴だった

:胡蝶ユイ演じる少年の恋人ヒロイン役に竜胆スズカが多かったんだよな

:公式カップルと呼ばれていたな

:四クール連続つまり一年間別作品でカップルやり続けたこともあった二人

:キャスティングされた時点でネタバレ扱いだったし

:この二人を同じ作品に出してカップルにならなかったから炎上したこともあったな

:名実とも大人気トップ声優だったのに胡蝶ユイがスランプに陥ったから

:しかもあんな理由で……

:スランプ?

:VTuberになるまでの流れが定番だから聞いておけばわかる


竜胆スズカ:「VTuberになった経緯も面白いよ。正確には声優から距離を置いた経緯だけど」


雨宮ひかり:「声優から距離を置いた経緯?」


竜胆スズカ:「ここからはせっかくだし本人に語ってもらおうか。天依スイさん。そろそろランランも落ち着いただろうから封印を解いて。できるだけ甘く」


天依スイ:「甘くですか……承りました」


雨宮ひかり:「承っちゃうんだ。かなりの無茶振りだよ。天依スイさんはちゃんと仕事選んだ方がいいよ?」


天依スイ:「ひかりお嬢様。お気遣いいただきありがとうございます」


雨宮ひかり:「くっ……面と向かって言われると」


胡蝶ユイ:(ニッコリ)


雨宮ひかり:「私は大丈夫……私は大丈夫……私は大丈夫」


天依スイ:「それではユイお嬢様。無知な私めにあなたのことをお教えいただいてもよろしいでしょうか。……できれば囁くように」


胡蝶ユイ:「ふ……ふふふ……わかってる。囁くようにね。大丈夫。胡蝶ユイはできる子だから。どれだけテンション上がっても叫んだりしないよ。よし……こうなったら久しぶりに本気を出す」


:声優から離れた経緯?

:リンリンはランランのエピソードトーク好きだから

:できるだけ甘くって

:承っちゃった

:雨宮ひかりのガチトーンの心配

:天依スイもかなり困惑しているのによくキャラを崩さずロールプレイし続けるよな

:心配してくれた雨宮ひかりを沼に落とそうとするなw

:サムズアップw

:天依スイ様のお声も素晴らしいですわ。

:でも私はやっぱり胡蝶ユイお姉様の方が好きですわ。

:久しぶりに胡蝶ユイお姉様がやる気になられたみたいですわ。

:……コメント欄にお嬢様が湧いてる

:胡蝶ユイのファン層は濃いからな


胡蝶ユイ:『ボクは夢を叶えたんだ。幼い頃に抱いた夢を。声優になって活躍するという夢を。憧れた大好きなあの少年に声を当てる夢を。ボクは夢みたいな時間を必死に駆け抜けた』


雨宮ひかり:「えっ!? 本当にカッコいい。さっきまで悶えていたのに」


胡蝶ユイ:『楽しかった。充実していた。ボクの推しに声が当てられるなんて。この物語の主人公はどんな声だろう。そんな妄想をいつもしていた。困難に立ち向かう真剣な声は? 理不尽に抗う慟哭は? 好きな人に愛を告げる甘い言葉は? その全てをボクの思うがまま演じることができる。歓喜せずにはいられなかった。でも……』


雨宮ひかり:「でも?」


胡蝶ユイ:『ある日気づいてしまったんだ。これが本当にボクのやりたかったことなのか? きっかけはボクの出演作品を見直したことだった。大好きだった原作。大好きだった推しの少年。もちろんボクは全力を捧げて演じ切った。最高傑作さ。それなのに……それなのにボクは……視聴しても以前のように悶えることができなかった!』


雨宮ひかり:「もだえ……へ?」


胡蝶ユイ:『ボクは慌てて出演作を全て見直した。他の女性声優の声には以前のように悶えることができる。でも自分の声には悶えることができない。ボクの演技が悪いのか? ううん……同好の士からの評判はいい。それなのになぜっ!? ……答えは簡単だった。ボクにナルシストの素質はない。自分の声で悶えることができるはずがなかったんだ!』


竜胆スズカ:「あの日泣きながら電話してきたんだよね。全く理解できなかった」


胡蝶ユイ:『その日からボクは少年の声を当てるのが怖くなった。全ての少年がボクの推しだ。それなのに声を当ててしまったら、ボクが悶えることができなくなる。悶える機会の損失だ。それはボクの中で推しを殺してしまうことと同じじゃないか。他の人が演じてくれたらボクの推しは推しのままボクに語りかけてくれるのに。ボクが愛するものを、ボクの声で創り上げてしまったら、ボクが愛することができない。……それがボクのカルマだった』


天依スイ:「運命は残酷だったのですね」


胡蝶ユイ:『ボクは少女の声にも挑戦した。でもボクには少年のイメージがついていた。少女役は他にもいる。少女の演技では他の人たちを圧倒するものがない。それではボクを起用する意味がない。ボクはどうすればいい? あれだけ眩く見えていた道が振り返ると輝きを失っていたんだ。ボクは闇の中で迷子になっていた』


雨宮ひかり:「真剣な声で……カッコいい台詞で……胡蝶ユイさんはなにを言っているのだろう……?」


胡蝶ユイ:『でもボクにはアリアドネの導きがあった。糸ではなく鈴。そこにいる竜胆スズカ君からVTuberへの誘いという福音があったんだ』


竜胆スズカ:「ぷっ……アリアドネ……こんなおバカな子を誘わずにいられないよね」


胡蝶ユイ:『最初は虹色ボイス事務所もボクに男装アバターを与えてくれようとした。もちろん善意だよ。でもボクは躊躇した。それでは環境を変える意味がない。そんなボクの葛藤を理解してくれたアリアドネが事務所に直訴してくれたんだ』


竜胆スズカ:「胡蝶ユイは素のままの方が面白い。男装させたらずっと完璧に演じ切ってしまう。それでは面白さが薄れるからね」


胡蝶ユイ:『その言葉に救われた。ボクには少年役のイメージがあった。男装アバターにして売り出した方が成功率は高かったはずだ。でも虹色ボイス事務所はボクをボクのまま肯定してくれたんだ。そして今に至る。好きなことを楽しみながらボクはボクでいることができている。今もアニメでオファーがあれば少年役をさせていただいている。けれど声優一本だったときのような葛藤はない。少年役を演じることがやっぱり楽しい。演技を純粋に楽しむこともできている』


天依スイ:「人に歴史ありですね」


雨宮ひかり:「ぽかーん」


竜胆スズカ:「ぷはははははーこれよこれ。あー久しぶりにランランの本気を見たけど、やっぱりおもしろ生物だよね」


胡蝶ユイ:『ふっ……笑いたければ笑いたまえボクのアリアドネ。君を笑顔にできるならば、どんな形であってもボクは本望さ』


竜胆スズカ:「たまえ……たまえって……ぷははははははは」


:ぽかーん

:ぽかーんw

:ぽかーんwwwwww

:胡蝶ユイのマジモードはヤバいw

:さすが胡蝶ユイお姉さまですわ。

:最近はこれがなかったので私は寂しくて。

:後進のために目立たないように振舞っていらっしゃいましたから。

:中毒性がおありですわ

:三者三様の反応ですわ

:天依スイはロールプレイに徹して必死に抑えているけど雨宮ひかりはぽかーんですわ

:コメント欄がお嬢様に浸食されましたですわ

:こんなん草ですわ

:ほんまおもろい姉ちゃんですわ

:あーそうですわ……二期生三期生がアレで一期生がまともなはずなかろうですわ


天依スイ:「あの……本日の予定はアニメ『アームズ・ナイトギア』の特番ではなかったでしょうか」


胡蝶ユイ:「そだったそだった。これやるとリンリンが使い物にならなくなるんだよね。リンリン笑い上戸だから」


天依スイ:「……笑い上戸とは少し異なるかと」


胡蝶ユイ:「そう? ではプレシア教官役の天依スイさん改めまして挨拶をどうぞ」


雨宮ひかり:「ぽかーん」




お読みいただきありがとうございます。


毎日1話 朝7時頃更新です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アメピカはショーとした。
[一言] 長文放送ネキw 今回は押忍がなかったから忍ちゃんはご一緒ではない? あめピカのぽかーんはもはや持ちネタ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ