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町子さんが言う。
「貴方じゃなくてもいいじゃない…。」
「え?」
「長編小説が、どのくらい、この世界に溢れてる?貴方が今から、それを書かなくても別に、いいんじゃない…?」
ちょっと沈黙があって、
僕は、ニッコリ笑って、
「そうだね♪」と返した。
そうして、
二人で食べた食器を全部、僕が洗った。
今、彼女を不安にさせる言動は良くない…と即座に思って僕の身体は、それに反応してくれた。
町子さんに「明日、仕事、早番だから。」と僕は述べ早めに消灯。
真っ暗い部屋で、僕は目をつむった…。
すると、町子さんの声がした。
「あのね……私、20代の頃まで実はスゴい文学少女だったの……特に好きなのはミステリー、サスペンスとかで、何か驚かしてくれる小説が好きだったんだけど……」
そこで彼女の声は止まり、
僕が、
「…だったんだけど?」と聞く。
すると暗闇の中、また彼女の声がした。
「今の私は、もう驚かないな…この御時世、何が起きても変じゃない、不思議ではない……貴方の作った御話では、全てに貴方が表れていたわ……おやすみ♪♪」
しばらくして、彼女の寝息と
外からの希に車が行き交う音だけが暗闇の中、僕の耳には聞こえていた…。
……一つだけ、たった一つだけ、僕は町子さんを、それは、それは驚かせることが出来る御話を持っている……
悪魔に会った……
その悪魔は、己のことを… …
… … …
《男は、そのうち深い深い眠りに落ちていった…。》
【完】