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町子さんが続けて言う。
「貴方が仕事に行った後、大掃除してたのよ。そうしたら整理された原稿用紙の束を見つけちゃって。どの話も全部、読んじゃった♪これだけ、【完】ってなってないね♪」
僕は、彼女と出会う前に己が、物書き気取りで書いていたことをザックバランと彼女に話した。
彼女は、夕食を既に拵えてくれており、僕らは座り向かい合って、それを食べ始めた。
食事しながら僕は彼女に聞かれる。
「あの完成していない話、未練ある?」
「未練…!?いやさぁ、僕、小説、書いてたの、すっかり忘れていたよ……まさか、君に色々と読まれてしまうとは…。」
僕は、そう返しながらも、彼女が作ってくれた美味しい料理を食べるのは止めずにモリモリ食べていると、
「…まだ、書きたいことあるの?あれらの御話の他に…?」と僕には彼女の声が聞こえ、
「…確かね、書いてた時、長編小説を書きたいと思ってたんだな……君が唯一、完成されていないと言ったのが、それになる予定だった…ような気がする…モグモグ…。」
彼女は先に食べ終わり、
僕も己の御膳を空にして「ごちそうさまでした!」と言い、その時、彼女を見ると、正しく目と目が合い対面した。