あしたば王子
あしたば王子は かわいい王子、
かやぶき国の 貴公子さ。
おもちゃの兵隊 ずらりとひき連れ、
ぐるんぐるんと ひとまわり。
王さま ひめさま 国民だれもが
あしたば王子を ご溺愛。
かわいそうな あしたば王子、
床屋になると 言いだして、
王さま ひめさま こまらせ あげくに
ある月の晩 逃げだした。
国民あわてて 国じゅう 総出で
あしたば王子を 捜したが、
どこを捜せど 行方わからず、
しまいに だれもが あきらめた。
王さま しだいに だんだん 弱り、
今生さいごの ごいいつけ。
「あしたば王子を かならずさがせ。
この国すべて やつのもの。」
誰ひとりとして いいつけ守らず、
たちまち世界は 阿鼻叫喚。
たたかい、たたかい、いくさのはてに
僭主が王座に ついたとさ。
あしたば王子は かわいい王子、
行方が知れずに はや10年。
とある衛兵 散歩の帰りに
かれを見かけて 知らんぷり。
こういう話はお嫌いですか。え?嫌い?そうですか、それはまた結構なことで。皮肉を言うのではございません、まことに本心からの言葉ですよ。