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2話

 拓也の双子の妹にして学校一の美少女、千歳玲奈。

 大人気トップアイドルと言われても納得できるほどの整った顔立ち、モデル顔負けの抜群のスタイル。また、拓也同様に文武両道な完璧美少女。それが千歳玲奈である。

 

「一緒に帰るのは別にいいんだけど……」


 玲奈とは小学校の頃から一緒に登下校している。断る理由なんて思いつかない。ただ、一つ気になるのは…………なんで腕に抱きついてるんだ?


 なぜか俺に対してだけはやたらと距離が近い玲奈だが、腕に抱きつかれたのはさすがにこれが初めてである。正直、今までの距離感と違いすぎて戸惑っている。玲奈の豊満で柔らかな胸の感触を堪能する余裕すら無いほどに。


「ありがと、和樹っ。じゃあそう言う事だから、ごめんね」


 しかし当の本人はまったく気にしていないらしく、玲奈はポカンと口を開けて俺達を見ていた3人に向かって言う。3人はこくこくと首を縦に振って頷いた。

 

「じゃっ、行こっか」

「お、おい、引っ張るなってっ」


 玲奈に腕を引かれたまま俺は廊下を進んで行く。てか、いつまでこの状態のままなんだ!? 


「……なぁ、玲奈。一体どうしたんだ?」


 信号待ちをしている間、俺は玲奈にそう尋ねた。


「どうしたって?」

「いや……なんか距離が前よりもかなり近くないか?」

「そ、それは……」


 玲奈は珍しく言い淀み、サッと顔を逸らした。心なしか玲奈の頬が赤くなっている気がするが、夕陽のせいだろうか。


「と、というか、そもそも和樹が悪いんだからねっ」

「なんで俺?」

「だ、だって、普段は全然やる気ないのに、今日の体育に限ってあんなにカッコイイ姿見せてさ」

「あれは拓也の為だよ」

「えっ、どうゆう事?」

「実はさっきの体育の授業、天童先輩が教室の窓から眺めてたんだよ」

「そうだったんだ」


 どうやら玲奈は気づいていなかったらしい。


「それで万が一にも拓也の負ける姿を天童先輩に見させたくなかったから、真面目にプレイして勝ちに行ったんだよ」


 まぁ、そもそも俺が真面目にプレイしなくても勝ってたと思うけど。拓也、天童先輩に見られてるからってめちゃくちゃ張り切ってたしな。実際、さっきの試合で拓也はハットトリックを決めて大活躍している。


「じ、事情は分かったけど……でもやっぱり和樹が悪いもんっ」

「えっ、なんで今の話の流れでそうなる?」

「だ、だって……」


 だって、拓也に彼女が出来て落ち込んでいる女子が多いなか、普段はやる気がなくて目立たない和樹があんなカッコイイ姿を見せればギャップを感じて注目されるに決まってるじゃん! と正直に言えるはずもなく玲奈は、むぅー、と唇を尖らせて拗ねるのだった。


「それにしても、さっきの3人は俺に何の用があったのかな」


 さっきの3人とは普段は殆ど関わりが無い。どうして声を掛けられたのか皆目見当もつかない俺を見て、玲奈は呆れの籠もったため息と一緒に言葉を溢す。


「……鈍感」

「えっ、なんで?」

「……まぁ、和樹が鈍感なのは今に始まった事じゃないからね」

「……」


 ……俺って鈍感野郎なのか?

 玲奈は組んでいる腕に更に力を込めた。


「……でも私、負けないから」

「玲奈、誰かと勝負してるのか?」

「……うん。勝負してるよ」

「そっか。頑張れよ。玲奈なら勝てるさ」

「……何、他人事みたいに言ってるの」


 そう言って、玲奈はジト目で俺を睨む。

 えっ、他人事じゃないのか? もしかして、その勝負に俺が関わってるのか?


「……まぁ、いいけど。ほら、そろそろ和樹の家の近くだよ」


 気がついたら、俺の家のすぐ近くまで来ていた。俺はそこで玲奈と別れる。


「じゃあな、玲奈。また明日な」

「うん。また明日ね」

 

 そして歩き出した俺の背中に向かって、玲奈はしっかりと決意を込めた声で小さくこう呟くのだった。


「今さら和樹の魅力に気づいたって……渡さないんだから」



◇◇◇


 

「んっ……」


 翌朝、俺は目覚ましの不協和音ではなく、腹の上に乗っかっている謎の重みによって目を覚ました。なんだ? なんか……重いものがお腹の上に乗ってる?

 ゆっくりと瞼を開けていくと、俺の目に映ったのは……


「おはよ、和樹♡」


 俺の腹に跨っている制服姿の玲奈だった。

 …………なんでいる?




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