【揺花草子。】[#4025] 感動巨編。
Bさん「昨日は黒玉王子が女の子である事を自覚し、
そしていつの日か敵方の幹部であるビーすけと禁断の恋に
落ちてしまうかも知れないと言う話をしました。」
Aさん「いや・・・うん・・・。」
Cさん「黒玉王子は薄月の夜、館のバルコニーに立って
瞬く星空を見上げながらこう独白するのよ。
『ビーすけ、ああビーすけ、あなたはどうしてビーすけなの?
名前が何だと言うの。
ビー玉がビー玉と言う名前でなくっとも
その転がりっぷりには変わりはないはずよ。』」
Aさん「ロミジュリですかね?」
Bさん「『ロミジュリったら許さないからね!』とか怒られるよ。」
Aさん「スレミオ!!!」
Bさん「一方のビーすけも黒玉王子が実は女の子である事を知り、
次第次第にその人柄に惹かれていく。
人知れず逢瀬を重ねるビーすけと黒玉王子。
黒玉王子が実は女の子だと言う事は黒玉軍では公然の秘密だったけども、
2人の逢瀬の発覚を期にビーすけたちの組織にも早晩
その事実が伝わる事になる。
そして2人の関係は長年続いたお互いの諍いを収める
融和の希望になるのではないかと言う機運が盛り上がり始める。」
Aさん「おぉ。良い事じゃないですか。」
Cさん「しかしこの雰囲気に動揺するのは黒玉王子の母親その人よ。」
Aさん「まあ・・・敵方だからって事ですかね・・・?」
Bさん「違う違う。
いやそれはそうなんだけど、それ以前に、忘れちゃいけない、
ビーすけと黒玉王子は血を分けたきょうだいなんだよ。」
Aさん「あっ・・・そ・そうだった・・・。
やたらと人間関係込み入って来てたから忘れてた・・・。」
Cさん「多くの人々が期待や希望を持ち暖かく行く末を見守る
ビーすけと黒玉王子の関係だけれども、
それは決して許されぬ禁断の関係でもあった。
『母親だったら実の娘の恋路を応援してくれてもいいじゃない!』
理由を話してくれない母親に反発する黒玉王子──この頃にはもう
すっかり女らしい身なりやふるまいとなり、
黒玉姫と呼ばれるようになっていたけれどもね。」
Aさん「黒玉姫・・・。」
Bさん「姫に詰め寄られ、遂に重い口を開く母親。
涙ながらに語られた2人の出生の祕密は黒玉姫を
深い絶望に落とすのに十分だった。
自分の姿形よりも暗い闇に陥る黒玉姫・・・。」
Aさん「うわー・・・切ない・・・。」
Cさん「そんな暗闇の中で姫は思い出す。
あれは幼き日。
まだ黒玉王の後継を夢見て功名心と言う小さな刃を胸に隠していた日々。
そんなある日、同じ年頃の敵方の少年と共に暗い谷底に落ちたものの、
力を合わせて生きて帰ったあの出来事。」
Aさん「おっ・・・!!!」
Bさん「『とにかくこの恐ろしい谷から抜け出すんだ。』
『躊躇うな。下を見るな。』
『暗黒の谷から抜け出すんだ。』
不安に押し潰されそうになる自分をずっと励ましてくれた。
導いてくれた。
──手を、伸ばしてくれた。」
Aさん「っっ・・・!!!」
Cさん「そして今、またしても運命の悪戯に翻弄され暗闇に閉ざされた姫。
絶望の谷底に沈み泣きじゃくる。
そんな自分を救ってくれたのは。
手を伸ばしてくれたのは。
やっぱりビーすけだったの。
──あの日と、同じようにね。」
Aさん「ビーすけ・・・!!!」
Bさん「生まれがなんだって言うんだ。運命がなんだって言うんだ。
──ぼくは、全部、覚えている。
谷底で母親の名を呼びながらすすり泣くきみを、ぼくは覚えている。
ぼくが伸ばした手を、躊躇いながら、戸惑いながら、
弱々しく握り返すその手を、ぼくは覚えている。
冷たく震える小さな指先を覚えている。
『きっと助かる。──きっと助ける。』
そう言ったときの、きみの頬に小さく差した安堵の色を、覚えている。
谷底から無事に帰り着いたあと、
『また会おう』と言ったぼくに微笑んでくれた
ぎこちない笑顔を、瞳の色を、覚えている。
──全部、覚えているよ。
手を伸ばすんだ、姫。
その震える手を。冷たい指先を。
握るのは。
きみの手を取るのは。
ぼくだ。
あの時、絶望を切り開いて、暗黒の運命を打ち破って。
そうして、今、こうしてきみの前に立っているのは。
──ぼくなんだ。」
Aさん「・・・っっっ!!!」
Cさん「そうして2人は姿を消した。
2人の間に横たわっていた運命の軛を乗り越えた。
そうであるならば、黒玉軍とビーだま軍の間の諍いもまた
乗り越える事ができるのではないか。
2人は去り、その行く末は誰も知らないけれども、
2人が残した想いは、運命を乗り越えた勇気は、
かつて分かたれた一族をひとつにし、未来をもたらした。
──道は、繋がっていたのよ。」
Aさん「お・おぉ・・・。」
Bさん「・・・どうかな。
ここしばらくの間、だいぶ長い事時間をかけて
『ビーだまビーすけの大冒険』シリーズに隠された
秘話を紹介してきたわけだけど。」
Aさん「いや・・・ああ、そう言えばそうだったね・・・。
そう言う取っ掛かりだったね・・・。」
Cさん「何しろこの話を始めたのは1月22日だったからね。
2週間近くに渡ってこの話してきたもの。」
Aさん「近年稀に見る集中連載になりましたねえ。」
Bさん「でも、素晴らしい結末に辿り着いたと思うよ。
終わり方をどう解釈するかは人それぞれだと思うけど、
運命を乗り越える勇気の素晴らしさは示せたと思うんだ。
それこそがまさに『ビーすけ』シリーズのテーマなわけだから。」
Aさん「んん。」
Bさん「これは
『ビーだまビーすけの大冒険 THE MOVIE』
公開待ったなしじゃないかな。」
Aさん「まさかの映画化!!!!!」
人間讃歌は勇気の讃歌。




