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【揺花草子。】(日刊版:2023年)  作者: 篠木雪平
2023年05月
134/363

【揺花草子。】[#4126] TPO以前の話。

Bさん「『眠り猫』ってあるじゃないですか。」

Aさん「え、あの日光東照宮の?」

Cさん「見た事ある?」

Aさん「確か小学校だか中学校だかの修学旅行で

    日光東照宮に言った覚えはあります。

    でも『眠り猫』を見た記憶は・・・うーん・・・。」

Bさん「これだから犬派は話にならない。」

Aさん「ちょっ!! 犬派全体を敵に回すような発言やめて!!?

    犬派だから『眠り猫』の印象が薄いってわけじゃないからね!!?」

Cさん「それはそうよね。

    阿部さんにとって学生時代は遠い記憶の彼方に封印した

    暗黒時代だものね。」

Aさん「やめて下さいそう言う言い方。」

Bさん「ちなみにこの『眠り猫』、作者は誰でしょうか。」

Aさん「そりゃもちろん、左甚五郎ですよね。」

Cさん「あらあっさり。」

Aさん「いやこの程度の常識は。」

Bさん「まあ厳密には左甚五郎の作と伝わる、が正確なところのようだけどね。

    ちなみにこの左甚五郎と言う人物ですが、彼が残した作品の制作年は

    安土桃山から江戸後期まで実におよそ300年に及ぶそうだよ。

    この事から左甚五郎と言うのは特定の個人ではなくて

    名跡のようなもので代々襲名されていたものではないかと言われる。」

Aさん「へえ、そうなんだ?」

Cさん「じゃなければアンデッドのどちらかね。」

Aさん「左甚五郎アンデッド説は新しすぎますね!!!」

Bさん「そんな左甚五郎の作と伝わる作品が、『眠り猫』と同じく

    日光東照宮に存在するんだけど、それは何か分かるかな?」

Aさん「そりゃもちろん。

    あれだよね、『見ざる聞かざる言わざる』。」

Cさん「そうね。いわゆる『三猿』と呼ばれるものね。

    これは語幹から日本発祥の語呂合わせみたいに思われるかもだけど、

    こう言う感覚を断つ猿のモチーフは実はシルクロードを伝って

    海外から入って来たものとも言われているわ。」

Aさん「へえ、そうなんですか? それは知りませんでした。」

Bさん「『見ざる』即ち目を塞ぎ視界を断ち、

    『聞かざる』即ち耳を塞いで聴覚を断つ。

    『言わざる』は口を塞いで言葉を断つのよね。」

Aさん「ですね。」

Bさん「これは論語にある

    『礼にあらざれば視るなかれ、礼にあらざれば聴くなかれ、

     礼にあらざれば言うなかれ、礼にあらざればおこなうなかれ』

    を表したものと言われている。

    ざっくり言えば常に礼を持って行動し、場を弁えよと言う事になるかな。」

Aさん「なるほどなるほど。」

Cさん「君子危うきに近寄らず的な

    ネガティブな処世術のようにも捉えられがちだけど、

    そう言う事じゃないってわけね。」

Aさん「ふむふむ。」

Bさん「そしてぼく的には阿部さんに対しこの『三猿』に加え、

    もうひとつ大事な教えを授けたい。」

Aさん「きみが授けるの?」


Bさん「『幼女に触らざる』。」

Aさん「触りませんが!!???」


 ノータッチの精神。

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