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願い  作者: 赤崎リヒト
3/5

第三章 担当わらび餅

 なぜこの花がここに? と、少しは疑問に思ったがそんなこと、どうでもよかった。

 もう、私には何もないのだ。たった一人の友の苦しみに気づけず死なせてしまった。ましてやそれを美しいと感じてしまった。

 怒りと悔しさと哀しみとがぐちゃぐちゃになっていた。そんな形のない感情をぶつける先もなく、ただ私の中に留まっていた。だから葬式にも行っていない。

 ……いや、そんなものただの怠惰なのだが、わかっているのに、考えるのも何もかもめんどくさい。

 もう全てがどうでもいいのだ。空っぽだ。それなのに、小さい頃も見た()()蝶は綺麗に感じた。ガラス細工のように繊細な模様の羽を動かし舞うその姿が、とても美しかった。

 そこでふと辺りを見渡す。懐かしい景色だ。

 この辺りの景色は昔も今も、変わっていなかった。私も何も、変わっていない。私を取り巻く環境は変わり続けているって言うのに、私とこの景色はずっと、うざいくらい変わってないな。なんて、思いながら小袋を拾いとりあえず、帰宅した。

 ……と、思っていた。目が覚めたらそこは馴染みのない白い部屋。とたんに横の人が声を出す。


 「目を覚まされました! 」


 どうやら私は下校中に気を失って倒れたらしい。……無様だ。自分にはもうなにもないのに、人様にだけ迷惑を掛け続けている。

 ただの動くゴミのようだ。とりあえず私はこれ以上迷惑を掛けないように病院を抜け出した。

 ……冷静に考えればそれも迷惑なのだが。なんで抜け出したかというと特に、理由はない。何も考えてなかった。


 家に帰ってからとりあえずお腹が空いていたので冷凍食品を温めて食べた。……おいしいともまずいとも感じなかったがひたすら食べた。

 ふと見るとその冷凍食品の賞味期限はとっくに過ぎていた。

 いつ買ったんだよ、これ……何も見ないで適当にとったからこうなるのだ……

 テレビをつけると最近そこそこ売れている芸人が出ていた。どうせ一発屋で終わるんだろうななんて思って見てた。

 そのうち電気代の無駄だと感じ消した。 そうやって着替えもせず惰性に浸っていたら、制服のポケットに違和感を感じた。何かある。取り出してみると例の花があった。

 そういえばポケットに入れたままだったな。あいも変わらず綺麗だな。本当に……

 本当に願いを叶えられるのだろうか。小さい頃見つけたこの花。ずっと持っていたため思い入れがあり、千切るのが惜しまれる。

 それでも。本当に願いが叶うのならば。私の想いが届いたのなら。私は花を千切り…願いを口にする。


「         」

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