21
昼休み
屋上にて・・・・・
「はい、あーん」
「あーーーーん」
一ノ瀬が俺に、春巻きを食べさせようとしてくれた。
なので俺も一ノ瀬が食べさせようとしてくれた春巻きを遠慮なく食べた。
口の中で噛むと外側の皮がパリパリと音をかなで、そこから出てくるとろっとした野菜などのうま味が、たまらずおいしかった。
俺は、この時間がとても幸せな時間だった。
だが現実はそれほど甘くなかった・・・・・・
なぜなら、これは俺の妄想上のお話だからだ。
実際は・・・・・・・・・
「うんーおいしい!」
そう言いながら一ノ瀬がくれた春巻きをおいしそうに食べたのは、原田 由奈だった。
一方俺は、一ノ瀬が俺の口に、おかずを入れるイベントはおろか、一ノ瀬のおかずではなく原田から貰ったおかずをお弁当こど受け取りあらかじめ予備に持っていた原田の割り箸を使ってしぶしぶ食べていた。
俺はこの場になぜかいた原田にツッコミをいれた。
「て、なんでお前がいるんだよ!」
「えっ、私も呼ばれたからだよ。あれ~?もしかして、二人っきりで食べれると思ったの?」
そんな俺のツッコミに対して原田はあっさりとした口調で答えた。
そして、俺が想像していたことに感づいたのか、原田はまるで俺を嘲うようにニヤニヤし、ズバリと当ててきた。
「バ、バカ、そんなわけねぇだろ!」
原田にズバリと言い当てらた俺は動揺を隠しきれなかった。
「ほんとうかな~?」
もちろん、原田はそんな俺の言葉を聞き捨てるはずもなく、また俺を嘲うかのようにニヤニヤしながら聞いてきた。
「あぁーもう、しつこい!」
このままだと、原田にバカにされ続けると思った俺は、この話から逃げるように切り上げた。
「アハハ、ごめん、ごめん」
原田はそんな俺をからかいすぎたと思ったのか一応俺に謝ってくれた。
だが、原田の笑い方が未だに俺をからかっているような笑い方でなんだかイラっとした。
「うふふ、二人とも仲いいんだね」
そんな俺たちのやり取りを見ていた一ノ瀬が、口を手で押さえながら上品に笑った。
「そんなことないよ 一瀬さん」
俺は原田と仲がいいわけではないので否定した。
「そうそう、誰がこんな色ボケ男と仲がいんだか」
そして原田も俺の言葉に頷き、仲が良いことを否定した。
そこまでは一緒の意見で問題はなかった。
だが、原田は最後に余計なことを付け足してきた。
俺はその部分が、気に入らなかったので言い返してやった。
「はぁ?俺だってお前みたいな、クソ女と仲がいいだか」
「はぁ?あんた失礼ね。いい、大体クソ女はあんたとこの東雲だけだからね!」
そんなに、言われた言葉が嫌だったのか、俺の言葉を聞いた原田は、少し強めの口調で逆に言い返してきた。しかも今度は正論を付きで・・・・・・
「た、確かに、そうだな・・・・・」
よくよく考えてみれば原田の言葉は正論だ。
なぜなら東雲は、クソみたいなことしかやってこなかった。
例えば、俺をしもべのように扱ってきたり、好きな人に、ばらされてほしくない秘密を平気でしかも、好きな人の前で、ばらまいたりしてきた奴だ。
そう思った俺は、原田に言われた正論を否定す逆に肯定してしまった。
「でしょう~」
原田は腕を組ながらどや顔を決めてきた。
悔しいけど俺はそんな原田の態度に何も言えなかった。
「もう!二人とも東雲さんの悪口は良くないよ!」
今度は俺たちを黙って見ていた一ノ瀬が、口を尖らせながら俺たちを注意した。
すると原田が急に大きなため息をつき、まるで落胆したように一ノ瀬に言った。
「ハァ~優菜は東雲の性格の悪さを知らない。だからそんなことを言えるのよ~」
「ううん、東雲さんはそんな人じゃないもん!」
そんな風に言われた一ノ瀬だったが、原田の言葉をまるで聞いてなかったように否定した。
すると原田は、一ノ瀬の言い方に何かが、頭をよぎったのだろう。
原田はさりげなく一ノ瀬に尋ねた。
「えっ、優菜、東雲と知り合いなの?」
「うん、私の友達だよ。」
原田の質問を聞いた一ノ瀬は、否定することなく、あっさり友達だと認めた。
「もう手遅れだったとは・・・・・・」
その言葉を聞いた原田は、はぁ~と大きなため息をし額を押さえた。
「もうー由奈ちゃんたら!東雲さんは、由奈ちゃんが思っているほど悪い生徒じゃないよ!ねぇ、竹中くん」
そんな原田の態度を見た一ノ瀬は、また口を尖らせながら原田に注意した。
そしてなぜか俺に話を振ってきた。
「えっ、俺?」
まさか急に、一ノ瀬から話を振られるとは思わなかった俺は、自分の顔を指でさしもう一度、一ノ瀬に確かめた。
「うん」
どうやら、本当に話を振ったようだ・・・・
俺はどうするべきか迷った。
最初俺は、東雲の事をクソ女と認めてしまったし、実際のところ本当にクソ女だと思っている。
だが、一ノ瀬は、東雲の事をクソ女とは認めてない。
そんな状況でもし、東雲の事をクソ女と言ってしまったら、一ノ瀬は悲しむいや、俺まで怒られさいやく、東雲に言いつけるかもしれない・・・・・・
そう思った俺は、一ノ瀬の意見に少しだけ便乗してあげることにした。
「そ、そうだね。東雲は、決してすごい悪い生徒じゃないぞ」
「いや、さっき、クソ女と言っていたじゃん・・・・・」
原田は、小声でツッコんできた。
だがさっき俺は、東雲のことをクソ女と認めたが、決してクソ女とは言ってはいない。
「あれ~?俺そんなこと言ったけ?」
俺は東雲のことをクソ女とは言っていないことを利用し、まるで何のことか知らないような顔しながら言った。
「あんたね・・・・・」
そんな俺の顔を見た原田は、ハァ~と大きなため息をし、あきれ返ってしまった。
どうやら、原田の方も俺がクソ女とは言っていないことは、分かっていたようだ。
「ほらね。あの、竹中くんもそう言っているよ。だから由奈ちゃんも一緒に東雲さんに関わればわかるよ」
一方、一ノ瀬は、俺の言葉が本当だと思っていた。そして原田に東雲がいい人だと説得しようとした。
「うんん、あいつは悪い奴だよ・・・・・・・・」
だが、原田は一ノ瀬が聞こえるか聞こえないくらい小さな声一ノ瀬の言葉を否定した。
結局原田はいまのいままで、東雲の事をクソ女として評価していた。
一体なぜ、そこまで東雲の事をクソ女と評価しづけるのか・・・・・・・・
「えっ?」
「ううん、なんでもないよ。それよりも優菜ー、もっとおかず頂戴ー!」
一ノ瀬はもう一度原田に聞き直そうとしたが、「原田はなんでもない」と言って何も答えなかった。
そして原田はこの話を切り上げようとするためなのか・・・・・
一ノ瀬に、おかずを貰おうとおねだしを始めた。