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昼休み
俺は一人で食堂のご飯を食べようと教室を出ようとした。
「おーい見ろよあれ、一ノ瀬さんじゃないか?」
「本当だ、でもなんでこのクラスをじろじろ見ているんだろう?」
女子生徒と男子生徒たちが、教室の出入口で誰かを見ているようにたむろしていた。
俺はそんな様子が気になったので近くにいた男子生徒に声をかけた。
「おい、どうしたんだ?」
「おぉ竹中。見ろよあれ、学校一可愛いと言われている一ノ瀬 優菜だぞ。お前もこんな間近でみる機会なんて早々ないからじっくり見ておいたほうがいいぞ」
「い、一ノ瀬さん!」
教室から覗き込んだ俺が、一ノ瀬の存在に気付いた瞬間、急に心臓の鼓動が早くなってきた。
一方、一ノ瀬は白のランチバック片手に俺のクラスをチラチラ見ていた。
「はっ!」
一ノ瀬が俺に気付き手を振りながらこちらにやって来た。
「おい!こっち来るぞ!」
俺意外の、クラスメイト達は一ノ瀬がきた瞬間覗き込むことをやめ教室に入った。
そしてクラスメイト達はノ瀬と俺のやり取りを一ノ瀬に気づかれないように見ていた。
「みーつけた」
一方一ノ瀬は、まるでかくれていた子を見つけたように言った。
「ど、どうしたの?一ノ瀬さん」
俺は一ノ瀬が持っている物を見て、何しにきたかは想像ついていたが一応聞いた。
「竹中くん良かったら一緒にお弁当を食べよう?」
やっぱりか!俺はその言葉を聞いた瞬間跳び跳ねる気持ちだった。だが俺には一つ問題が・・・・・・
「悪い、一ノ瀬さん。俺弁当持ってなんだけど・・・・・・」
普段は自分で作った弁当を毎日食べていた。だが今日に限り、作るのがめんどくさいと感じてしまった俺は食堂で済ませようと考えてしまった。
俺はこの時、自分を恨んだ。
「うふふ、大丈夫だよ。私のお弁当のおかず、少し分けてあげるから」
「で、でもそれじゃあ・・・・・・」
一ノ瀬は弁当のない俺におかずを少し恵んでくれようとしてくれた。正直、一ノ瀬のお弁当を食べれるのは嬉しい。だが、これじぁ、一ノ瀬のお昼ご飯が、減ってしまうと考えた俺は貰うことをためらった。
「もおー!何か不満なの!?」
そんな俺の態度が不満だったのか、一ノ瀬は顔を膨らませながら怒ってきた。そんな一ノ瀬をみた俺は思った。
「怒っている一ノ瀬もやっぱりなかなか可愛いなー」と、そんなことはさておき俺はとりあえず不満はないことを伝えた。
「いや、別に・・・・」
「じぁ、いこっか?」
俺の言葉を聞いた一ノ瀬は早速、一緒に食べる場所へと案内しようとした。俺は一ノ瀬の言われるがままつい行ってしまった。
「い、一ノ瀬さん待ってー」
俺は朝と打って変わってこんなにグイグイ来る一ノ瀬に少し疑問に思ったが、今は一ノ瀬と一緒に食べれることと、一ノ瀬のお弁当のおかずを食べれるだけを考えた。