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第2話 三ヶ月

――――レンと出会って三ヶ月が経った。



 彼は目的をまだ思い出せないでいた。

 村の人々はレンのことを最初は気味悪がっていたが徐々に打ち解けている。村の子供たちには、遊んでくれるいいお兄ちゃんとして好かれていた。


 「レンにぃ! 遊んで!」

 「畑仕事が終わってからな!」


 村の子供たちに囲われているレンを見ると微笑ましい。一通りみんなの頭をなで回したあと、私とともに畑に向かう。


 「おぉ! アリス! もうこの辺り収穫してもいいんじゃない!?」

 「うん! 明日にでも王都に売りに行こうか!」

 「王都!? 俺初めて行くぞ! 楽しみ!」


 レンはにこにこしながら収穫に勤しむ。

 彼は一、二週間もすれば村を出て行くと思っていた。あっという間に月日が経って三ヶ月もいる。

 レンが家にいることは嫌ではなかった。同年代の子が村にいなかったので友達ができたみたいで嬉しい。喧嘩をする時もあったけど、次の日にはお互いに謝り仲直りしていた。私の家にレンがいる生活があたりまえになりつつある。私は彼が目的があってこの世界に来たということを忘れてしまいそうになっていた。

 一通り収穫が終わり家に戻ろうとした時、子供たちが走って来る。


 「レンにぃ早く遊んで!」

 「おいおい、走ると危ないぞ!」


 レンの忠告も虚しく一人の男の子が派手に転ける。足をすりむいてしまい、わんわん泣き始めた。私は収穫した野菜のかごを置いて男の子に駆け寄る。


 「派手に転んだわね。泣かないの。アリスねぇの魔法で治してあげるからね」


 少し手をかざして治癒魔法を使う。すりむいた傷口は治り、男の子に笑顔が戻る。


 「アリスねぇありがとう! アリスねぇの魔法はやっぱりすごいや!」


 男の子は友達に手を引かれ立ち上がった。


 「魔法ってみんな使えるわけじゃないんだな。村で使えるのアリスだけ?」

 「うん。おばあちゃんが神官だったらしくてその血筋だと思う」


 私の治癒魔法は死者を生き返らせることや、四肢欠損を治せるわけではない。少しの傷の治癒や痛みを和らげることができるだけだ。村の人から王都の医者に診てもらう前の痛み止め代わりをしている。

 そのため村の人から私の魔法は重宝されていた。

 私も人助けをするための魔法だと思うので自分の使命だと思い責任を感じている。


 「さてと今日の仕事も終わったから、お子様たちの相手してくる」

 「私もあとで行くね」


 野菜の仕分けをしていると、女の子たちが私の家を訪ねた。野菜の仕分けを手伝ってくれるそうだ。


 「みんなありがとうね」


 女の子たちは私に早く遊んでもらいたいらしく仕分けの手伝いをしに来たらしい。小さい子でもできる作業なので分担してすぐに終わった。

 一息つくと一人の女の子が私をじっと見ていた。


 「アリスねぇ。レンにぃが来てから笑顔が増えたね」

 「うん! アリスねぇ遊んでくれるようになったし!」

 「……そうかな?」


 女の子たちに言われてレンが来る前の自分を思い出す。

 一人で生きていくことが精一杯で小さい子たちと遊ぶ余裕はなかった。毎日畑仕事をして、一人分のご飯を作って寝る。その繰り返しだった。

 確かにレンが来てから毎日楽しく感じている。

 女の子に手を引かれ、外に出ると男の子たちと楽しそうに遊んでいるレンの姿が見えた。無邪気に遊んでいる彼はとても微笑ましい。同時に胸に温かいものを感じるようになっていた。

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