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押しかけ女房のお嬢様とオタクの俺は釣り合わない  作者: 海老の尻尾
第2章 オタクと練習試合
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第2章 オタクと練習試合 その2

 俺たちは教室の前の扉で立ち止まっていた。正確に言うと俺だけが入るのを渋っていた。だって昨日クラス全員の前で可愛い子からプロポーズされたんだよ。外にいても分かるから、この殺気。


 よし、今日のところはこれくらいにしておこう。これは逃げではない、戦略的撤退だ。すると180度回転したところにアイツがいた。そう、勇人だった。


「何してんだ侯輔。入らねえのか?」


 殺気の濃度が濃くなった。


「何! 後塚だと!」

「おいお前。花見崎さんとどういう関係だ! 説明しろ!」


 こうなるんだよなー、だからエスケープしたかったんだ。

すると突然救いの手が差し伸べられた。


「まあ落ち着け。実はこの二人は許嫁なんだよ」


 え? 違うけど? 俺が勇人にそう言おうとすると目配せした。これは俺に任せろの目だな。


「本当は昨日言うはずだったんだがこいつが緊張し過ぎてぶっ倒れちまったんだ。ま、そういうことだ。ちなみに花見崎家の権力は凄まじいぞ。二人の邪魔をしたら翌日にはホームレス生活になるかもしれないな」


 そういうとあんなに燃え盛っていた男どもが一気に鎮火した。皆権力に弱いようだ。ぞろぞろと元の席に戻り、いつもの日常に戻った。


「助かった、勇人。それにしても何であんなこと言ったんだ?」


 勇人は携帯電話を取り出し、俺にメールの長文を見せた。送り主は執事の島袋さんで俺と花見崎さんとのことについて書かれていた。


「昨日あの後送られてきて大体のことは理解した。全く、面白そうなことになってんじゃねえか。助けてやってくれってこの執事に頼まれてしまってな。許嫁ってことにすれば大人しくなると思ってな。まあ報酬が宇治の抹茶アイスなら仕方ない。ちなみに俺は彼女に手は出さないから安心しろ。お前の彼女だからな」


 流石有能執事。頼むべき相手とその相手の性格をしっかり判断している。こいつが無類のアイスクリーム好きなことまで調べている。それにしても流石勇人はスマートだ。世の女の子は放っておかないだろう。


「助かった。お礼は何がいい?」

「じゃあ今月分のエロ本代540円。税込みでな」


 この性格さえなければ。まさに残念イケメン。あと俺の彼女ではない。


 俺はようやく一息つこうとした。すると隣から肩をトントンと叩かれる。


「侯輔様、侯輔様。許嫁という関係も甘美でいいですわね」


 一息つかせてくれ。ちなみに彼女はこの日の授業中は俺のほうを見ており、休み時間中はずっと許嫁についてのトークをしていた。


 なんといってもお昼ご飯はひやひやした。俺は購買でパンとかを買おうとしたが花見崎さんに止められて一緒に食べないかと言われた。彼女のお弁当の中にはなぜか俺の好物ばかりが入っており、それを食べさせられた。とても美味しかったがお箸が一膳しかなかったのでお箸の共有。つまり漫画でよく見る、あーんをすることになった。すると小火になっていたはずの炎がいきなり火炎放射器レベルになった。正直明日から持ち物検査を行って欲しい。皆が刃物を持ってこないように。


 今日は一息すらつけることがなかった。

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