第4章 オタクとフェス その2
「あら、いかがなさいました?」
そこにいたのは可憐さん。今はその部屋に住んでいるのだから当たり前なのだがタイミングが最悪だった。今彼女はお着替えの真っ最中であり、ピンクの可愛らしいパンツを丸出しにして、上の服を脱ぎ終えたところで扉を開けてしまった。
「ご、ごめんなさい!!」
扉が壊れるほど勢い良く閉じた。や、やってしまった……ノックぐらいしとけよ俺。女の子のあんな姿見てしまうなんて迂闊だった。一瞬だったから良かったものの後一秒でも長く見つめていたら赤い染みになった床や壁紙を張り替えないといけないところだった。いわゆるラッキースケベを生で味わったのは初めてだ。
「可憐さん、さっきは悪かった。ノックもしないで」
しかし返事が無い。何かあったのかと思い、今度は心構えをして扉を開けた。するとさっきと同じ格好で座り込んでいた。
「どうした!? どこか具合でも悪いのか?」
薄目で見ることで何とか会話は成り立っているがものすごく恥ずかしい。今にも決壊しそうだ。
「ふ、ふふふ」
笑っている。何がおかしいのだろうか。そう思った矢先、いきなり俺に野生の獣のごとく飛び掛ってきた。下着のままなので体の感触がほぼ直に伝わってくる。あ、ちょっと決壊した。
「私の下着姿が見たいのでしたら直接言って下されば良かったですのに。シャイでかわいいですわね。もう登校の時間ですが……致しますか?」
いつもやっているギャルゲーならここで下の方に“はい”か“いいえ”の選択肢があるのだが今のこの状況ではなぜか“はい”と“YES”が浮かび上がっている。もちろん比喩ではあるのだがそうならざるを得ないほどがっちりホールドされ、俺の制服が脱がされていく。初めて会ったときのような目にも止まらぬ速さではなく、じっくり優しい感じだった。まあそこで優しさを見せられても困るんだがな。
「ちょ、待って俺はそんなつもりじゃ……」
「ふふ、口ではそう言ってもココはしっかり立っているじゃないですか」
ああ、ばっちり鳥肌が立っているとも。逃げられない恐怖で体がすくむんだよ。誰でもいいからこのゲームを終わらしてくれ。
「朝から何をやっているんだー!!」
「痛ってーー!」
俺の背後から愛歌が飛び蹴りをかまして来て、その衝撃で可憐さんから離れることができた。
「全く、登校前だというのに盛るんじゃない、二人とも」
俺は盛っていないぞ、愛歌。というかお前の蹴りすごい体に響くんだけど。まだもんどり打っているんだけど。
「あらあら、折角いいところでしたのに」
「いいから二人とも着替えなさい。学校に行くわよ」
「分かりました。それでは侯輔様、続きは帰ってから……」
「絶対にしないぞ」
食い気味で言った。俺の身とフローリングが持たないからだ。帰ってからここの染みの掃除をしないといけないのかと思いながらようやく登校することができた。
妹は俺が卒業した萌芽中学校に通っている。この辺りの中学生はほぼ全員そこの公立中学校に行っている。そして今俺が在籍している八重葎高校と萌芽中学校は行く先が同じなので俺たち三人は一緒に登校していた。
「それにしてもお前が一緒に登校するなんて今までなかったよな。いつもは登校時間ずらしていたし」
「兄貴と花見崎を二人だけにしたら何しでかすか分からないからね。後塚家の評判を落とさないためにも私がこれから監視するわ」
可憐さんは露骨に嫌な顔をしたが俺にとってはありがたい。これで周りから変な目で見られることも……
「チッ、なんだよあいつ。美女を二人もはべらせやがって」
「ハーレム野郎はゴートゥーヘル!」
そうだった。愛歌は胸は無いけどものすごい美人だったんだ。お袋の遺伝を強く受け継いだから人目を引くくらいのルックスは持っている。胸は無いけど。
そんなことを考えていると愛歌の右足が俺の左足を踏みつけた。割と失礼なことを思い浮かべたタイミングとぴったりだったのは偶然だと思いたい。歩いていくとようやく高校、そして中学校に到着した。真横に隣接しているので俺たちは校門の前で愛歌と別れた。朝からヘロヘロになりながらも授業に入ることができた。




