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押しかけ女房のお嬢様とオタクの俺は釣り合わない  作者: 海老の尻尾
第1章 オタクと猛アタック
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第1章 オタクと猛アタック その2

 次の月曜日になっても俺の気分は晴れなかった。原因はもちろんこの前の女の子である。それにしても見つめられただけで逃げてしまうとは我ながら情けないな。


「はあ、憂鬱だ」

「ため息をつくと幸せが逃げるって言うぞ、侯輔」

「お前は幸せそうだもんな、勇人」


 軽いステップを踏んでやって来たこのストレスフリーな男は前野台勇人(まえのだいゆうと)。俺の腐れ縁だ。同じ中学校で野球部仲間だ。高校でも当然野球部に所属し、共に頑張っている。ちなみにこいつはオタクではない。オタクではないが……


「それより聞いたか? このクラスに転校生が来るってよ。しかも女の子。可愛い子だったらいいな!」


 女の子の尻ばかり追いかけている奴なんだよな…… まあ悪い奴では決して無いのだが。


「あ、でもお前にとってはきついよな。ま、何かあったら俺が力になるぜ」


 毎回俺は女の子関係はこいつの手を借りている。まさに親友である。


「それに俺に惚れちゃうかも知れないしな!」

「それで惚れた子いないだろ。現に付き合ったことも無いだろ、お前」

「痛いとこ突くなよ。それにお前だってそうだろ」

「まあな」


 実際勇人はイケメンの部類に入ると思う。黙っていれば女の子は寄ってくると思う。だが、女好きの性格が災いして交際経験は皆無である。俺と勇人を足して2で割ったらちょうどいいくらいになるんだろうな。


 予鈴が鳴って生徒が集まりかけた頃、クラス中転校生の話題で持ちきりだった。皆どんな子が来るか楽しみにしているようだった。だが俺一人だけは違っており、とても不安であった。なぜなら俺の席は一番後ろの席であり、右隣は空席だったからである。つまり、転校生の女の子がここに座る可能性が高いということである。席替えのときも勇人に協力してもらい、周りを男子で固めてもらったくらいである。


 担任が教室に入ってきた。そして俺は極力気配を消そうと机に顔を伏せていた。


「皆さん、おはようございます。知ってるとは思いますが転校生がこのクラスにやってきます。じゃあ入って下さい」


 クラス中がどよめき立つのが聞こえる。俺の心臓も違った意味でドキドキだ。


「花見崎可憐(はなみさきかれん)ですわ。聖橘(せいたちばな)高校から転入して参りました。皆様と一日でも仲良く出来るように頑張りますわ」


「聖橘高校ってあのお嬢様学校の?」

「確か偏差値も70超えらしいぞ」

「それに何といっても可愛いな。な、侯輔」


 教室がザワつく。しかし俺は頭を上げて固まっていた。蛇ににらまれた蛙状態だ。可愛いという言葉につられて前を見たわけではない。ただ俺は知っていたのだ。その女の子の声を。


「じゃあ一番後ろのあの空いている席に座ってください」

「分かりましたわ」


 皆がその子の一挙手一投足に注目していた。だが俺だけは別の感情で注目していた。


「あ……」


 思わず息が漏れてしまった。すると彼女はそれに気づいたらしくこっちを振り向いた。

 すると満面の笑みでこっちに近づいてきて



「侯輔様~ 大好きですわ! 私と結婚してください!」



 俺の胸元に抱きついたと共に俺の意識は吹っ飛んでしまった。

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