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押しかけ女房のお嬢様とオタクの俺は釣り合わない  作者: 海老の尻尾
第2章 オタクと練習試合
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第2章 オタクと練習試合 その8

「お前……“THEセンター”か!?」

「おいおい、ここでは東山中悟(ひがしやまちゅうご)って呼んでくれよ」


 まさかの俺と知り合いであった。この特徴的な声の男とは東京で毎年五月に開かれる某サブカルチャーの祭典、サブカルフェスティバル、通称フェスで出会った。お互いに中学1年生のときに出会い、好きな漫画の押しキャラがかぶっていたことがきっかけで知り合うことになり、それから年一回会う良き友人である。なお、“Mr.バック”や“THEセンター”という名は同人本を書くときに使っている名前であり、普通の場で言われると少し恥ずかしい。

 だが俺の知っている東山は眼鏡をかけたもっとヒョロっとした男で、こんなマッチョでは無かった。それに出身も千葉県で大阪府では無かった。


「でもお前もっとガリガリだっただろ? それが何でこんな風になっちまったんだ?」

「あー、実は去年お前と会った後急に転校になってな。大阪に行ったんだがそこで大阪限定放送の『肉体少女』っていうアニメにドハマリしてな、エッチなアニメかと思って見てみたら予想外にもハイクオリティの筋トレアニメで俺自身影響されて肉体改造したらすごいムキムキになったんだよ」


 なんだその面白そうなアニメ、俺も見たかった。


「それで近くの竜胆高校に入学したらこの容姿のせいで野球部に勧誘されてしまったけどお前と対戦してみたかったからちゃんと練習していたらいつの間にかスーパールーキーなんて呼ばれたってわけだ」


 たった一年でこんなに人は変わるのか。以前とは別人のように堂々としている、眼鏡からコンタクトに変えてイメチェンもしているし脱オタクしたのかもな……


「メアド交換しようぜ。また来月フェス行くよな?」


 “THEセンター”は変わっていなかった。そうそう人は変わるもんじゃないなと感じながらメアドの交換をした。俺が高校に入るまで携帯を買ってもらえなかったので今の今まで連絡を取れなかった。ちなみに俺の携帯の中に入っている連絡可能な人物は今日入れた東山と家族と勇人と、なぜか入れた覚えの無い花見崎さんだけである。一応パスワードかけていたはずなのにいつの間に……


「おーい、侯輔ー、いないのか? いなかったら返事してくれ」

「いなかったら返事できないだろ」

「お、ここにいたのか。あれ? その人……」


 勇人は俺の隣にいる東山に目を移す。


「ああ、こいつは……」

「千葉の東山中悟だろ? 侯輔の友達の」

「そういう君はあのときの前野台だな。後塚の唯一無二の親友……だっけ?」


 え? 何で面識あるんだこの二人。あ、そういえば中二のとき無理矢理勇人をフェスに連れて行ったんだった。そこで出会ったはずだけどよく覚えていたな二人とも、俺が鈍いのか?


「久しぶりだな、ずいぶん風貌変わったじゃないか」

「まあな。それより中学で全国制覇したんだってな、おめでとう」

「お、知っているのか。ありがとよ」


 二人とも仲睦まじく話している。昔と比べて勇人ともしっかり会話できているが、さっきの野球部のメンバーの様子を見るにまだ不可友好は装備しているようだ。


「あ、それより監督がお前探していたぞ。早く行けよ」

「分かった。それじゃあまた後でな、“THEセンター”」

「だからその名前はやめろって」


 俺は別れて急ぎ足でベンチに戻った。



「すみません、遅れました」

「ああ、来たか。今ワンアウトなんだが次代打で出てもらうから準備しておけ」

「か、監督!? この前野台勇人の出番は?」

「あー、スマン。また今度な」

「嘘ですやん。そんなことホンマにあるんですか? ちょー待って下さいよー」


 向こうの監督の喋りがうつっているぞ。俺あんまりやる気ないし勇人と変わってやろうかな。こいつの方がやる気まんまんだからな。


「あの、監督……」


 そう言いかけたときだった。


「ストライク! バッターアウト」

「よっしゃこれでツーアウトや。最後は東山、お前が決めたれ」


 抑えとして東山が出てきた。おそらく両監督とも最後はルーキー同士をぶつけようという魂胆だろう。


「ん? 何か言ったか後塚」

「……俺、頑張ってきます」

「うむ、期待しているぞ」


 さっきのさっきまでミジンコ以下のやる気だったが相手が東山なら話は別だ。あの棒っきれみたいだった見た目からどれほどの速球を繰り出すのか非常に見物である。

 俺はわくわくした気持ちで打席に立った。

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