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押しかけ女房のお嬢様とオタクの俺は釣り合わない  作者: 海老の尻尾
第2章 オタクと練習試合
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第2章 オタクと練習試合 その6

 一日経ち、俺はグラウンドに集合していた。昨日勇人とともに練習試合に参加することになり、正直テンションが全然上がらない。だが俺と勇人は、槍柱を含めてものすごく期待されており、ここでその期待を裏切ると悪い意味で目立ってしまう。「折角目立つなら皆から好かれるように目立って来い」、今年の冬アニメの『キラワレモノ』で主人公に向けて友人が言った台詞だ。この大好きな言葉通りに取り組んでみよう。

 今日花見崎さんは華道のお稽古があるとのことなので急襲……じゃなくて応援には来られないようだ。その代わり運動会レベルの大きさのお弁当を渡されたけどな、重い。もし来てしまったらレギュラーの計18人からフルボッコされるからな、お稽古ありがとう。


「何してんだ侯輔、もう皆集合しているぞ」


 少しモノローグが長かったようだ。勇人に呼ばれて俺たちは先輩たちの輪の中に入った。


「よし、お前たち。今日の対戦相手は知っていると思うがあの竜胆(りんどう)高校だ。大阪府で何回も甲子園出場している名門だ。しかも今年はスーパールーキーが入ったらしい」


 野球をする人ならば誰もが知っている大阪の名門、竜胆高校。そこの監督とウチの監督は友達同士らしく、新年度一発目の対戦校は竜胆高校なのは伝統らしい。分かっていても先輩たちから緊張のオーラが漂う。俺みたいに意気込んでいなければ緊張することも無いけど。


「監督ー、スーパールーキーってどんな人ですか? もしかして俺よりもすごかったりします?」

「詳しくは知らないが左投げで豪速球を投げるらしい。名前は……『ヒガシヤマ』だったかな? まあとりあえず前野台とは月とスッポンだろうな」

「えー、ひどいですよ監督」


 勇人の言葉で先輩たちが笑い、なんとなく強豪校との戦いで萎縮していた先輩たちの緊張がほぐれたようだ。こいつにはこういう才能はあるのになぜか女の子にモテない、まあ理由は明らかだけど。

 スーパールーキーということは俺と同じ1年生、そして左利き、加えて『ヒガシヤマ』という名前……もしかして……でもあいつは野球部っぽく無かったし、それに千葉県だったし……うん、俺の知っている人とは違う人だな。


「お、そろそろ向こうの高校が来たぞ。しっかり挨拶しろよ」


 現在の時刻は7時25分。予定の5分前に到着するとはしっかりしている。


「おはようございます!」

「おはようございます!」


 野球部特有の大きな挨拶が響き渡る。俺はあまり好きではないがライブの音に比べればはるかにマシだ。

 バスからぞろぞろと部員が降りてきて、最後に一際大きい人が現れた。威圧感のあるその人はウチの監督に近づいてきた。


「今日はよろしく頼むで、わての自慢のメンバーがお前らを叩き潰すさかいな」

「はっ、お前こそ俺の最高のメンツで返り討ちにしてやるから待ってろ」

「それよりお前背ちっこくなったんちゃうか? 去年より2センチくらい目線下やぞ」

「お前こそ顔老けたんじゃないか? 去年より3箇所くらいしわできてるぞ」

「何やコラァ、いてまうぞ!」

「うるせえ!」


 コテコテの関西弁を話す向こうの監督とこっちの監督との間にバチバチと火花が見える。この二人仲が悪いのか? と思い、先輩に尋ねてみた。


「ああ、これはいつものことだからな。あの二人はああやってお互いを高めあっているんだ。すごい仲いいぞ」


 そうは見えないが……まあいいか。喧嘩するほど仲がいいって言葉もあるし。



「まあそれはええ。とっとと試合始めんで。整列や」


 二人が口喧嘩している間に準備運動なり何なり済ませておいたので、こっちも向こうもいつでも試合始められる状態である。俺も一応代打で出る予定なので列に並ぶことになった。


「それでは八重葎高校と竜胆高校の練習試合を始めます。どちらが先攻にするかじゃんけんで決めて下さい」

「折角だから後塚、お前が行け」

「お、俺ですか?」

「中々無いチャンスだぞ、さあさあ」

「わ、分かりました」


 あまり皆の前に立ちたくないんだよなあ、それに運弱いし。だが断れないので前に出た。


「ほんならこっちは……『ヒガシヤマ』やってきてや」


 噂の『ヒガシヤマ』が現れた。ずっしりした体格の大男であり、まさにスーパールーキーという名に相応しい出で立ちだ。なので俺の想像していた人物とは別人だった。あいつがこんなマッチョなわけないしな。

 じゃんけんはやっぱり俺が負けて後攻となり、試合が始まった。

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