学校の話
ワシは、学校が好きじゃった。大好きじゃったと言っても良いかもしれん。
学校は楽しい。
その第一の要因は、クラスメイトの存在じゃな。
学校のクラスメイトというのは、まず歳が同じで、立場は対等じゃろう。しかも、教師を除けば先輩も後輩も混じらない。つまり、理論上は全く気兼ねする必要が無いんじゃな。
そんな者たちと毎日顔を合わせ、同じスケジュールをこなすという場所は、一種の理想郷じゃ。
対等な立場の同じ歳が相手なら好きなだけふざけられるし、同じスケジュールをこなしているんじゃから日常会話の話題が途切れることは無い。
他人と関わる上で、これほど都合の良い条件は学校でしかあり得んじゃろう。
そして、学校は自由を保障してくれる。
とりあえず毎日学校に通って、テストで赤点を取らなければ、後は ほとんど何をしていてもいいんじゃ。
条件さえ満たせば学生という立場を振りかざして好きなだけ遊んでられる。
静かに授業を受けていれば優良生徒扱いして貰えるし、居眠りしてても起こして貰えるじゃろう。
好きなだけ怠けられる怠け者の楽園なんじゃ。
ワシにとっては学校は常に楽勝じゃった。
授業を聞いていたら だいたいのことは分かったし、ノートをとれば勉強した気分になる。
分からないなら分からないままにしててもテストの点数が下がるだけで、テストの点数なんて話のタネ程度としか考えてなかったからどうでもよかった。
「実力テスト」というのもあったが、実力を測るものなんだからと言って一度も予習はせんかったな。
別に、成績が良かったわけではない。中の下。公平に考えれば、悪い方じゃった。
ただ、それでも自分の牙城、平穏は揺るがないと見切っておったんじゃな。
もちろんこれは学業という本分を忘れた考えじゃ。今から思い返せば考えが甘すぎるし、とんだ思い違いをしておると思う。
実際、「勉強する」という能力が身についてないことや、黙ってやり過ごしておるだけで上手くやれている気になっておったことで、後々大いに困った。
だからこれは ただの思い出じゃ。
怠け者なりの学校の思い出。
といっても、特筆するべきエピソードがあるわけではないんじゃがな。
学校の思い出 概論じゃ。