コヨルシャウキの伝説
メキシコの伝説
コヨルシャウキの伝説
この物語では、ウィツィロポチトリが彼の母親を殺そうとする企みに対して、どのように復讐を果たしていくか、が語られています。
コアテペックと呼ばれる地域で、トゥーラという部落近くに、センツォンウイツナウアというインディオ部族とコヨルシャウキという月の女神の母である、コアトリクエという名の婦人が住んでいたと云われています。
或る日、コアトリクエがコアテペック山を掃除していますと、突然空から糸玉のような、もつれた小さな塊が落ちてきました。
コアトリクエがそれを拾い、乳房に押し当てると、思いがけないことに妊娠してしまいました。
彼女の子供たちは母親の状態を見て、激怒してこのように言いました。
「一体、何処のどいつが母を妊娠させたのだ?」
「我々の名誉を傷つけ、恥をかかしたのは何処のどいつだ?」
一番下の娘であるコヨルシャウキは兄弟たちと母親を追い払うために秘密裡に協議をしました。
彼女は言いました。
「兄弟たちよ、妊娠なぞして我々の名誉を傷つけた母を殺そうではないか」
自分の子供たちがなそうとしていることに気付いたコアトリクエはとても恐れましたが、お腹の中にいる胎児がこのように言って彼女を慰めました。
「怖がることはありません。僕は自分がなすべきことを知っています。」
この言葉を聞いて、母親は心をふさぐ悲しみは大きかったが、前よりはずっと心の落ち着きを取り戻しました。
コアトリクエのお腹から、顔を戦士のように塗り、戦士の盾と槍を持ったウィツィロポチトリが生まれました。
そのあと、ウィツィロポチトリは彼の兄弟たちを追いかけていき、手足をばらばらにもぎ取り、コアテペック山に捨てました。
センツォンウイツナワのインディオたちは身を守ることが出来ませんでした。
多くの者が負けて殺されました。
逃れ得た者たちはウィツランパと呼ばれるところに行きました。
ウィツィロポチトリはトチャンカルクイという名の男に命じ、シウコアトルと呼ばれた松明で作られた一匹の蛇に火を点けさせました。
それに火を点け、それを武器にしてコヨルシャウキに傷を負わせました。
コヨルシャウキはぼろぼろになって死にました。
彼女の頭部はコアテペック山に残され、体は麓にばらばらにされて捨てられました。
- 完 -