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00 序章。
ハロハロハロー
獰猛な牙が向けられる。
私達を噛みちぎるためのものだ。
「さぁかかってきなさい!」
私は背にする彼のナイフを構えて、虚勢を張る。
その獰猛な牙から、彼をどころか自分を守ることもままならない。
それでも構えた。
彼は私を庇って深傷を負ったのだ。動けない今、私しかいない。私が守る。
「この世界に来て、まだ二日目で死んでたまるか! まだ楽しみ足りないのよ! チョーカーを買う予定しかないけれど、この世界で一生分笑って過ごすって決めてるの!」
私は異世界に来たという奇跡が起きたから、一生分泣いて、それから一生分笑うと決めていた。
だから笑って見せた。彼が笑って見せたように、歯をむき出しにしてにんやりと笑う。