村娘が世界を変えてもいいじゃない!:1
今は敵の意識下にいるリアムに直接声を届ける。
そのための方法には一つだけ心当たりがある。
しかしそれを実行するのは余りにも無謀な挑戦といえた。
あのヘリオスが命を削って戦わなければいけない強敵に、彼女が近づく方法などあり得るのだろうか?
「メディア。私はね、誰かを犠牲にして誰かが助かるなんて大っ嫌いなの」
「はい。それは知っています。でもそれでフィオナ先生が犠牲になるのはそれこそ本末転倒です!」
メディアはフィオナの考えを良くわかっている。人の心を見透かすことは得意だと思っていたフィオナだが、こんなにも簡単に真意を悟られるなんて無様な話だ。
だが……気分は悪くない。
メディアはそこまでわかっていてもフィオナが止まらないことを知っているからだ。
「リアムが騎士になりたかったのは何故だかわかるかしら?」
「おそらく、いざとなれば紋章による大審問で魔精霊ごと消えるためです」
「ご名答。リアムの意識がある状態なら帝国貴族として、彼を勇者の紋章で殺すことはできるわ」
「でも、それではフィオナ先生が納得できませんよね」
「ええ。だから私は考えたの。彼と一緒に私も大審問を受けられないかとね」
「それは危険すぎます。そもそも大審問を受けて生き延びた人なんて聞いたことが……」
「そうよね。最後に大審問を受けたのは私の父さんと母さんの仇。オイディプス親王だわ。でもね、その前に一人だけ生き延びた人がいたのよ。その人に話は聞いてきたわ」
「それって、まさか!?」
「そう、帝国騎士シニス・テオドリック。彼は自ら大審問を受けて身の潔白を証明したのよ」
デルフォイを発つとき、フィオナはテオドリックと長話をしていると思ったが、まさかそんなことを聞いていたなどとは……。
「どのみち単純に魔精霊を倒すだけで彼を救えないなら、ヘリオスはリアムを焼き尽くす以外にないわ。それなら私が行って彼を助けるしか無いわよね?」
本当にこの人はできそうも無いことを簡単に語るものだ。とメディアは思った。
たぶんきっと初代勇者であるヒューペリオもこんな人だったのだろう。
「敵が再生するまでの時間に二人分の道を作ります。紋章の力を使うんです。わたしだって前に出ますよ」
不思議とメディアの身体の震えも止まる。
絶望の中で希望を失わぬ者。どんな強大な相手でも怯まずに立ち続ける者。
それこそが彼女の主や目の前の女性の持つ勇者の資質だ。
その気に当てられたのかメディアの弱気も吹き飛んだようだった。
「ヘリオス様が優位に立ったときに一気に駆け抜けます。行きますよ」
顔を見合わせてうなずく二人。
その正面では今まさに二人の精霊人間による決戦が繰り広げられていた。
次回、光の精霊VS風の精霊です。




