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村娘が世界を変えてもいいじゃない!  作者: 紀伊国屋虎辰


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魔人襲来:1

 翌朝、村人達に別れを告げて一行は森の中を目指す。

村の旧所在地から奥に続く街道跡は石畳も剥がれ道の両脇は子供の背丈ほどもある草と、鬱蒼うっそうとした木々が絡みつくように生い茂っていた。


 森の奥からは聞いたことも無いような鳥や虫の声が聞こえている。


 本来ならば虫除けの祈祷が必須なのだが、幸いフィオナやリアムは除虫香を持ってきていたので、それを焚いていた。また虫除けの祈祷は魔人アトラスには微少な高音が聞こえるらしくデメトリオスやヘリオスはあまり得意では無いようだった。

 

「やはり紋章でも無理だったのね」

 

 無念そうなフィオナのつぶやき。


「それは仕方が無い。いつまでも彩眼族イーリスの血で引き延ばすわけにもいかないのだし、どちらにせよ僕の中の魔精霊は倒さなくちゃいけない」


 あらゆる毒と病を癒やすライアン家の紋章でもリアムの手の痣は消えなかった。

ただし紋章が発動している間は浄化に伴う青い燐光が見受けられ、おそらく魔精霊ダイモーンの撒く腐食の魔風には有効だとフィオナは推測していた。


「過去の記録からある程度の傷は再生すると書かれていたわ。いずれも吸血鬼バシレウスの強大な魔法や高位司祭の第三階梯祈念で消滅させられているわね」


「そう聞くと不安になってきますね。第三階梯祈念といえば数十人の術者が必要になる高位正法じゃないですか」


 どちらも砦一つ消し飛ばす程の恐ろしい威力を持つ術。

使えば史書に記されるような代物なのだ。


「そんな恐ろしいものが僕の中にいるのか……。フィオナ。そういえば、初代の勇者イアソンは一人で魔精霊を倒したんだよな?」


「それもそうだけど、伝承では何度倒れても蘇ったというわ。正法教会が勇者の偉業を讃えるために創作した逸話ともいわれているけど、ヘリオスは何か知ってる?」


「甦ったという表現は正しくないかもしれんな。正確には『死ななかった』だ。だが、詳しいことは今は話せない」


 ヘリオスの紋章の力は人間族の秩序を護る大審問。

とても魔精霊相手に戦える戦争向きの奇跡では無い。


 そもそも、それ以前に貴族に列される以前に初代のイアソンは3人の魔精霊を倒している。

剣術の技能に関しては素人同然だった彼が強大な敵をどう倒したか?


 それは世界辞典にも記されては居ない。


「もしかしてそれが秩序の神との誓約?」


「『人を護ること。帝国を護ること。勇者の秘密を護ること』それが神との誓約だ」


「だから誓約の勇者なのね」


「それよりもフィオナ、多頭龍は何故巣から出てきたのだろうな?」


「それはそうよね。縄張り争いをするほど数も多くは無いだろうし、警戒した方が良いかもしれないわ」


 その時である。

 ガタンと音を立てて馬車が止まる。


「師匠! どうしたんですか?」


 即座に窓を開けてリアムが呼びかける。


「二人とも武器の用意をするでござる!」


 デメトリオスの前方には、紫青の大きな塊が横たわっていた。

それは話していた多頭龍の死体。


 その体からは真っ赤な血が噴き出して血だまりを作っている。

多頭龍の体外に流れ出た血は、毒の霧になって周囲に害を与える。


 数ある魔獣の中でも上位に数えられる危険な能力が発揮される範囲に知らず入り込んでいた。

急いで対処しなければ!


「メディア、急いで紋章の解放の準備をして。リアムの紋章なら多頭龍の毒も大丈夫なはずよ!」


「わかりました、先生。リアムさんもお願いします」


「メディアさん。お願いします」


 リアムが左手を掲げ、メディアは紋章解放のための精神の集中を開始。


「二人とも待つんだ。ヒドラの死体にしては様子がおかしい」


 準備を始めた二人をヘリオスが制止する。


「どういうことですか。ヘリオス様?」


「あれだけの血が流れていれば、すでに毒の霧が発生しているはずだ。だから俺達は奴らを狩るときは火で止めを刺すようにしている。あれは……おかしい」


「ヘリオス殿、ひとまず様子を見るべきであろうか?」


 牽引用の留め金を外し、鎗を構えたデメトリオスが壁面の投げ槍を手に取り馬車の前に立つ。


 体外に流れ出た多頭龍の体液が毒になっていない。

普通はあり得ないことにフィオナは考える。

 

 血は青黒くなく赤いまま。

つまり他の動物と違い、多頭龍の毒は体内にある間は毒では無い可能性に思い至る。


「デメトリオスさんは下がって。ヘリオスは馬車の外に! そこにいるんでしょう? リック・ヴィオラ!!!」


「ご名答でありますね。フィオナ・グレン。ヒュドラーの血は魔法の力で毒へと変わるのです」


 フィオナの問いかけにズズンと音を立てて死体が跳ね上がる。

噂に聞く象よりも重いはずのそれを片手で放り投げると、そこに居たのは漆黒の体毛に覆われた右腕を高々と天に掲げる銀髪の青年。リック・ヴィオラであった。


 魔法の無効化。後からデルフォイの町を出て全力疾走の人馬ケンタウロスに追いつく異常な速さ。全てが予想される最悪の答えを指し示していた。


「その様子ですともう私の正体にも気がついておられるのでしょう?」


 不適な笑みを浮かべ、目の前の人狼リュカオンはそう告げた。  

わかりにくい箇所が多かったため8月28日に改訂しました。

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