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『最強』、学習

 さて、夏休みまで残りわずかである。

 全面戦争がどうだと盛り上がっている間に、大学受験はすぐ目の前に迫ってきているのである。


「……」

「どうしたの、一斗。ものすごい顔になってるよ」

「……俺は頭が悪いのか……?」

「え、うん」

「即答で肯定すんなよ! せめて何かあったのとか聞けよ!」

「イット、ドウシタノ。ナニカアッタノ」

「棒読みィィイ!」


 さて。

 現在、俺の目の前で机を叩きながら悔しがっているのは、毎度おなじみとなった『最強』永峰一斗である。

 今回の全面戦争において、最後に出てきて一瞬で戦争を鎮圧していったこの男は、坂凪町民に再び『最強』として認識されたところなのだが。


「冗談だよ。で、何かあったの」

「これ」


 ぺらり。

 一斗が俺に差し出してきたのは、いわゆる模試の結果というもの。

 どうやら三年になってから通い始めたらしい塾で受けたものらしいのだが。


「E判定だね」

「さらっと言うな」

「見事に合格圏外だよね。ヤバいね」

「追い詰めるな!」

「志望変えたら?」

「憐れむな!」


 はぁ、と目の前で深く溜息をついて、机に突っ伏す一斗。

 もう一度模試の結果に目を通す。何回見てもE判定だ。


「そもそも、今の一斗の成績じゃここは無理なんじゃないの」

「今はな! でも俺、結構頑張ってるぜ!?」

「そうかな」

「中間から期末にかけてかなりの成績アップが見込まれる! はずだ!」

「希望なんだな」


 いや、まあ。

 二年の春から比べれば、確かに成績はよくなっていると思う。

 しかしその進歩はまさしく牛歩のごとくであり、このペースでは大学受験には間に合うまい。


「なんか当てでもあるの? 夏休み中の成績アップに関して」

「夏期講習あるからな」

「それだけ?」

「? おう」


 それだけで一斗の成績が劇的に上がるものか。

 いや、失礼を承知で言うが、上がるわけがない。


「……ここ、陽色さんが通ってるとこだよな」

「おう」

「陽色さんに勉強教えてもらえば?」

「!」


 俺の言葉に、一斗は衝撃を受けたような顔をした。

 それから視線を下げ、俺が見ていた模試の結果をもぎ取ると、それを鞄にしまう。

 そして。


「…………その手があったか……」

「うん、やっぱりお前バカ」


 どうやら、こいつはすっかり忘れていたらしい。

 我らが陽色さんが、強いうえに勉強もできる真面目な不良だったことを。


「あとで陽色さんに連絡しとこう……」

「そうしろ、そうしろ」


 とりあえず、これでC判定くらいにはなるんじゃないだろうかと予想。



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