『神官』と『発端』
高校一年から二年にかけて、そいつとは同じクラスだった。
正直、眼鏡で校則順守の目立たないやつという印象しかなかった。
どちらかといえば素行不良が多い自分としては、あまり仲良くなれなさそうな印象。
名前は、上川架月。
俺こと三崎拓史がそいつと飛躍的に仲良くなったのは、高校一年の学園祭での出来事。
「拓史、どうしよう!」
「おかん!? 来てたのかよ、何だよ!?」
「実は……!」
当時、学園祭をサボって校舎裏にいた俺。
そこに、俺に内緒で遊びに来ていたおかんが、弟二人がどこかへ行ってしまったと泣きついてきたのが発端。
「ちゃんと見とけよ、ばかん!」
「おかんとばかを足さないで、可愛いじゃない!」
「言ってる場合か!」
そこから俺は、元々楽しむ気もなかった学園祭を楽しむどころじゃなく、弟の捜索に駆り出されたわけである。
「なあ、うちの弟見なかったか!?」
「へ、さっきママさんと一緒にいたの違うのか?」
「ママさんって言うな! そいつじゃなくて……」
決して広い校舎ではないはずなのだが、いくら探しても見つからない。
何度かおかんと合流したが、おかんも見つけられなかったようだ。
まさか勝手に校舎の外に出てしまったのか……?
「おかん、俺ちょっと外回ってくるわ!」
「わ、わかった! 母さんもうちょっと中探してみる」
「おぉ!」
校門から外に出て、外周をぐるり。
少し走ったところで、曲がり角の向こうから耳慣れた声がした。
急いで角を曲がれば、俺の弟たちと、スーパーの袋を持った人影がもう一人。
「! お前ら!」
「あー、お兄ちゃんだ!」
「にいちゃーん! 来たよー!」
弟たちは俺の姿を見ると、何事もなかったかのように笑顔で、飛びついてきた。
弟の頭を撫でながら正面を向けば、そいつ……俺の弟たちと一緒にいた上川架月は、ため息をついて眼鏡の位置を直した。
「上川、お前」
俺が何か言う前に、上川は俺の近くまで歩いてきて、小さく笑う。
「兄ちゃんに会えてよかったね」
俺に抱き着いたままの弟たちの頭を撫でて、そのまま、まるで自分は何もしていないとでも言わんばかりの無表情で、校門の方へ歩いて行った。
「か、上川!」
「ん?」
「ありがとな、弟たちのこと」
「……別に。その子らが勝手についてきただけだ」
そう言って歩き去るそいつの後姿を見送った後で、弟が俺の制服の袖を引っ張って、言った。
「あんなー。ちょっと公園で遊んでから兄ちゃんの学校帰ろうと思ったら、道分かんねーくなって! そしたらあのお兄ちゃん通って、連れて来てくれた!」
「にいちゃん、あの人ともだちー? こんどつれてきてよー!」
この件で、俺の中の架月の株は急上昇。
学園祭後の月曜から、俺と架月の友人関係は始まったわけだ。
ちなみに、学園祭の時に弟を探す俺の姿が誰かしらの目に留まったようで、それから一時的にモテ期が訪れていたのも、今となってはいい思い出でしかない。




