『神官』と『極神』
やはりと言えばいいのか、何と言えばいいのか。
僕が想像した通りのことが、その四月に起きた。
「やあ、架月」
「帆風?」
ある日のこと。
下校のために校門まで来たところで声をかけられた。
振り向いてみれば、一高の制服を着て片手を挙げている帆風と、目が合った。
「入学した」
「来るだろうとは思ってたけど、本当に来たんだ」
「恩人の頼みは断れまい」
「また恩人」
「一高の次の三年間をよろしくと言われた」
「すごい人だな、その人」
帰路につけば、帆風が当たり前のようについてくる。
「架月さぁ」
「今更だけど、何で帆風は僕のことを呼び捨てにしてるの。先輩なんだけど、僕」
「なんとなく?」
「なんとなく!?」
なんとなくで後輩女子に呼び捨てにされる僕って。
つらいわ、なんとなく。
「で、架月さ」
「何」
「眼鏡、いつまでかけてるの」
首をかしげながら、不思議そうに帆風は言う。
「……あー」
確かに、僕にはもう眼鏡というものが必要ない。
視界の霞が取れてから、視力はかなり良くなったし、矯正の必要もない。
それでも僕が眼鏡を手放さないのは、きっと。
「外しちゃうと、違和感なんだよね」
慣れだ。
眼鏡をかけている状態に慣れてしまったもので、かけないと違和感があるのだ。
眼鏡からコンタクトに替えたばかりの方ならわかってくれるとは思うが。
「ふーん。じゃあ今それ、伊達なんだ」
「まあね。度は入ってない」
「へえ」
帆風はそう言うと、ひょいっ、と僕から眼鏡を奪い取った。
手口が鮮やかすぎて反応もできなかった。
「ほへー、本当だ。景色が歪まない。黒くないサングラスだ」
「サングラスが全部黒だと思ったら大間違いだぞ」
帆風から眼鏡を取り返して、かけ直す。
やっぱり、眼鏡をしていた方が安心感がある。
「僕の眼鏡の話はいいんだ。それより帆風」
「ん?」
「いつまでついてくる気?」
「あれ、違うよ架月」
「は」
帆風はきょとんと首をかしげてから、前方を指さした。
「私、バス通学だからバス停に行くんだよ」
「えっ、そうなの」
「そうだよ」
へらり。帆風はそう言って笑うと、前を向いた。
「架月は? 家がこっちなの?」
「まあ、徒歩圏内」
「徒歩で行けるの羨ましいなー」
「帆風なら一足飛びで来られそうな感じするけどね」
「さすがに疲れるよ、距離的に」
そんなくだらない話をしながら、バス停。
「じゃーね、架月。また明日以降」
「あ、うん。また明日以降」
帆風に手を振られながら見送られて、また帰路の続き。
「帆風と同じ学校、か……」
何故だろう。
悪い予感しかしないんだが。




