『極神』と鏡
私がその子と出会ったのは、中学に入ってからのこと。
今でもその第一印象は明確に覚えている。
私はあの子を見た瞬間、気持ち悪い、と思ってしまった。
後で聞いた時、あの子も同じ感想を抱いていたことを知った。
「今日から一年間、このクラスで過ごします。みなさん、クラスメートの顔と名前を早めに覚えましょう」
中学校の入学式の後、担任教師からのそんな言葉。
正直、人の顔と名前を覚えること自体は苦手ではないが、人間関係そのものがあまり得意ではなかったりする。
内心ではため息ばかりだ。
「一緒に帰ろうよー」
「いいよー」
同じ小学校同士の子たちが、そうしてグループになっていく。
まあ、そういうものだ。
放っておいても、他の小学校からの子とも勝手に仲良くなっていくんだろう。
知らないけれど。
「あ」
ふと、私の足元をころころと消しゴムが転がった。
「あ、ごめん、それ私の」
「ああ、今拾うね」
消しゴムを拾い上げて、持ち主の方を見る。
「え」
「……え」
せっかく拾った消しゴムを落としてしまったのは、無理もないと思う。
消しゴムの落とし主は、女の子だった。
髪の短い、女の子。
私と、ほとんど同じ顔をしていた。
「あ、えあ、えっと、ごめん、もう一回拾う」
「いえいえー。ごめん、ありがとう」
「う、うん」
見れば見るほど私と似ている。
なんというか、やる気がなくてダラダラしているときの私の顔だ。
……ああ、何だろう、これがいわゆるドッペルゲンガーと言うあれか……。
「じゃ、じゃあまた明日」
「ん、また明日ー」
その時は、それ以上は言葉を交わさずに、逃げるように帰った。
翌日からもそのドッペルゲンガーは教室にいた。
クラスメートなのだから当たり前だ。
その子の名前が『竜崎帆風』ということを知ったのは、出会いから数日後。
「似てる子がいるとは思ったんだ、私も」
「あ、そうなんだ」
「でもいざ顔を見たら、思った以上に似てて気持ち悪かった」
「ああ……ごめん、私も帆風の顔見たとき気持ち悪くなった」
その会話は、同じクラスになって数か月後のこと。
その頃にはお互い名前の呼び捨てで呼び合うようになっていて、さらには同級生たちにも似た顔をネタにされるようになっていた。
「気になったから家系を辿ってみたんだけど、分からなかったよ」
「それはわからないと思う。私も分からなかった」
「だよねぇ」
お互いに顔を見合って、首を傾げ合う。
やはり分からない。私たちが何故こんなにも似ているのか、分からない。
「まあ、たまたま似たんだと思うよ」
「そうだねぇ」
「私に似てるせいで何か厄介に巻き込まれたりしたら、すぐ言って」
その時は帆風の言葉の意味がよくわからなかったけど、今はわかる。
けれど意外なことに、帆風と似ていることが原因でトラブルに巻き込まれたことは、今のところ一度もない。
「頼りにしてるね」
「ん」
そういった経緯で、私と帆風は別々の高校に進学した今も、マメに連絡を取り合っている次第である。




