『最強』と双子
それは、高校一年の頃。
俺が『最強』などと呼ばれるようになってしばらくの頃。
「『最強』! 覚悟!!」
「うわっ!」
「ぐえっ!!」
お分かりいただけるだろうか。これが俺の、ここ最近の日常である。
つまり、俺を倒して名を上げようとする輩が現れる、襲われる、思わず叫ぶ、能力が発動する、何もしていないのに倒してしまう……何だこの悪循環。
「くっ、おのれ……不意打ちなどとは卑怯な……」
「それお前が言っちゃうの? 明らかに不意打とうとしたのお前だよね?」
倒れ伏すそいつの頭の辺りにしゃがみこんで、思わず溜息。
手をそいつの頭の上にかざして力を籠めたけれど、能力を発動しようとしているときには大したことにならない。
ごんっ、なんて音がして、そいつがどうやら頭を強打したらしいだけ。
「……なんだかなぁ」
俺の思っていた『最強』と、今の俺とは、違う気がしている。
今の俺は、能力がなければただの人だ。
その能力だって、自分で制御しきれているわけじゃない。
俺は、『最強』などではない。
「お前のそれ、どうなってんだ」
「おかしくね? 今ので今の反応っておかしくね?」
落ち込んでいる間に何があったのか、俺の目の前に人影が二つ。
二つ並んだ同じ顔が、俺を覗き込んで首をかしげていた。
「なっ、だ、誰だよお前ら!?」
「ああ、悪い! ついつい名乗り忘れてた!」
「別に名乗る必要もねーだろ」
「あるわ! あるよ! 名乗りはしようよ、人として大事だよ! ごめんなー、こいつちょっと人格に難ありでさー」
「お前もな」
目の前で繰り広げられる会話についていけず、ぽかんとしてしまう。
同じ顔をした二人のうち片方、非常に明るそうな性格のそいつは、もう片方の暗そうな性格のそいつの肩を叩いて、言った。
「俺は石動白斗! こっちは俺の双子の兄貴で、石動黒斗」
「たぶん由来は囲碁だと思う」
「俺はチェスだと思ってる!」
「そこはどうでもいいわ」
ちなみに言えば、俺はオセロかと思いました。余談。
「それより、何だよ。俺の何がおかしいって?」
「ああ、そうそう! お前……なんだっけ、イット?」
「永峰一斗。あってる」
「イット! お前の能力さ、どっかおかしいんだよ!」
「ドストレートにディスられた!?」
初対面でいきなり能力についてディスられる俺って何だ。
「ちょっと実験したいから付き合ってくんない」
「大丈夫大丈夫、痛くしないから!」
「ちょ、いやいや、おかしいおかしい、お前らが持ってるものの方がおかしい!」
兄貴の方、黒斗が何やら薬品らしきものを鞄から取り出して。
弟の方、白斗は何やら工具っぽいものを大量に鞄から取り出して。
「お前の能力について調べたい」
「調べ方! その調べ方は絶対おかしいだろ!」
「大丈夫大丈夫!」
「大丈夫じゃねーわ!」
「「あ」」
命からがら逃げ出した。
本当に、その表現が一番正しい気がする。
俺に物心というものがついて以降、あそこまで命の危機を感じたのは、それが最初で最後である。




