『戦場』、拡大
不良同士の抗争。
その言葉では表しきれない現状。
ちょうどいい言葉はおそらく、『戦場』。
動いているのは数十人。
倒れているのは何人いる?
戦えるのは、あと何人だ。
そんな三座川高校・校門付近。
こっそりと帰ろうとした皇牙の視線の先に現れたのは。
「……ゲッ……これは……」
思わず後ずさり、軍勢の最後尾に戻る。
冷や汗が落ちる。
「やばいんちゃうの……」
校庭の中央付近で爆発音が聞こえたのは、皇牙がつぶやいた直後。
巻き上がる土煙の中で、数人分の咳ばらいが聞こえた。
「ちょっと、もうちょっと優しい運び方出来なかったの」
「仕方ないじゃないですか、私にはこれが精一杯です」
「いや、嘘だと思うそれ……」
土煙が晴れた後に立っていたのは。
一高代表、『炎帝』千里、『神官』架月。
三高代表、『百式』奈音。
「さて、どういう感じでしょうか」
「ほとんどただの乱闘だよね」
「乱闘……これ、乱闘で片づけていいんですかね?」
奈音、千里、架月の順に口を開く。
その最後に、奈音が深い溜息をついて、言った。
「乱闘じゃないでしょ。……戦争ですよ」
その言葉に、異論はない。
その場の全員が、その言葉に酷く納得した。
「じゃあ」
「一番たくさん倒した人が優勝で」
「それで行きますか」
そう言い合って、三人同時に駆け出していく。
その様子を見ていた詠時と仁時は、顔を見合わせて、笑い合った。
「俺らも、あっち行ってくるか」
「そのほうがいいな」
「灯熾も行く?」
「行くー」
続々と、続々と。
参加人数が増えていく。
元々戦っていた彼ら以外にも、どこからか生徒が現れては、増えていく。
戦場は広がっていく。
倒されるそばから、新手が来る。
「……この戦争、終わるんですかねぇ」
三座川高校屋上、校門付近の様子を見守っていた深花は、誰にともなく呟いた。
相変わらず重なって倒れている帆風と飛鳥に、その声は届かない。




