『極神』、の噂
「あんな条件、クリアできるわけねーよ」
一ノ宮高校、二年一組。
深く溜息をついて、がっくりと肩を落とすのは、三崎拓史。
例の全面戦争を言い出した、図書館で勉強する真面目な不良だ。
「まあ、なんて言うか、ドンマイ」
「慰め方が投げやりすぎる!」
「そう言われても、僕には関係ないし」
「お前っ、そんな薄情な男だったとは! 見損なった!」
「勝手に過度な期待するのやめてくれないかな」
小さな溜息をつきながら、愚痴を聞かされているその少年は窓の外へ視線を送る。
「なあ、なんか心当たりねーか?」
「そう言われてもね…というか、なんで僕にそれを聞くの。自分で言うのもなんだけど、僕って戦いとは縁遠い人間だよ?」
「逆になんか知ってるかなって」
「逆」
そんな逆はない。ツッコミの言葉を飲み込んで、代わりに溜息をつく。
上川架月というこの生徒は、いわゆる優等生というものだ。眼鏡、着崩していない制服、見た目からして優等生そのもの。
「悪いけど、まったく知らない。本当、まったく知らない」
「逆に怪しい! え、なんか知ってんの?」
「知るわけがない」
「架月…今お前、嘘ついてるな?」
じとっ、とした目で架月を見る三崎。架月は三崎からゆっくりと目を逸らし、窓の外を見た。
「今日はいい天気だね」
「逸らし方! へたくそか!」
「ち、ばれたなら仕方がない……」
「逆によくばれないと思ったな、お前」
「だって三崎って単純だから」
「ひどくね?」
「まあ、それはそれとして」
「いや、ひどくね?」
架月は三崎の言葉を受け流しつつ、メモ帳を取り出し、何やらさらさらと文字を書き始める。
「言っとくけど、『最強』レベルってほどの強さではないと思うよ」
「ええっ、それじゃ意味ねーじゃん!」
「一人ならね」
「へ」
ペンを置き、メモ用紙を一枚破り取る。
それを三崎に差し出しながら、架月は面倒くさそうに言った。
「まずは、この子にコンタクトとって」
「……『極神』? 一年三組、竜崎帆風……?」
「その子をうまく引き入れられたら、もう一人紹介できる当てがある」
「架月……! 俺はお前のこと、やれば出来る子だと思ってたよ!」
バシバシと架月の背中を叩く三崎。
架月は呆れたように溜息をつき、小さくつぶやいた。
「ある意味、正解」




