『幻影』、見る
「お邪魔します。『審判』殿はどこでしょう?」
開いていた窓から、にこりと笑って彼は言う。
その言葉に、彼女はきょとんと首をかしげる。
「あいにくですが、生徒会長は本日お出かけしております」
「それは残念だな」
「何の御用でしょうか」
「少し遊ぼうと思って来たんだけど」
窓から生徒会室に侵入しながら笑う千里。その様子を見ながら、彼女は、どう見ても戦いそうもない印象の彼女は、しかし席を立たない。
「『審判』がいないなら君でいいや」
「は」
「俺の目はごまかせないよ」
次の瞬間。
じゃき、と言う音とともに、彼女の首元に突き付けられた刀。
その刀を視認し、なおも彼女は動かない。じっと、千里の目を見返すのみ。
「眼鏡、やめたんだ」
「……えっと」
「あと、髪も伸びたね」
「人違いでは」
「ないね。そんなことで俺を誤魔化せるとでも思ったの?」
刀を突きつけたまま、にっこり、嬉しそうに、千里は微笑んだ。
「久しぶりだね、『幻影』」
「……それで呼ばれるの、好きじゃないです」
わずかに眉根を寄せた彼女に、千里は少しだけ驚いたような顔をする。
それからもう一度、笑った。
「ごめん、そうだったね」
「でも、人違いじゃないことはわかりました。確かにそれは、私のことです」
突き付けられた刀を片手で退かしながら、彼女は立ち上がる。
真正面から千里と向き合った彼女は、じっと無表情に、千里の目を見つめた。
「ですが、あなたは誰ですか?」
「……覚えてないかぁ」
少しだけ残念そうに、千里が笑う。
首をかしげる彼女に、千里は笑顔のまま、口を開いた。
「俺に勝てたら教えてあげようかな」
「は」
「だから、俺と遊ぼうよ」
刀を構え直しながら、千里は彼女の目を見て、言った。
「ね、浅宮灯熾さん」




