『百式』、出会う
「あんまり興味ない」
放課後、三座川高校・図書室。
『百式』・斑鳩奈音は、無表情のまま言い放った。
「そう言わないで、ぜひとも参加を」
「や、あんまり興味ない。学校対抗のケンカとか興味持ちにくい」
「ええっ、強い人いっぱい来るよ? きっと楽しいよ?」
「私はおとなしく本を読んでいたい」
桧山の言葉に返事をしながらも、本棚から目を離さない奈音。
やがて読みたい本を見つけたのか、無表情のまま本棚に手を伸ばした。
「大体、戦えもしないのに全面戦争なんて言い出すとか、桧山先輩って無責任」
「う、それを言われると返す言葉もないんだけど」
「桧山先輩のおバカっぷりに付き合わされるなど、笑止千万」
「そこまで言う?」
取りつく島もない奈音の言葉に、桧山は肩を落とす。
「わかった、わかったよ。あきらめる」
「分かっていただけてよかった」
「いったんあきらめる」
「いったん?」
「奈音さんが興味を示す材料をそろえてから、もう一回説得にくる」
「無駄だと思う」
眉を寄せる奈音に、桧山は笑う。
諦めが悪そうな顔で、笑う。
「無駄かどうかはこれからの俺の頑張りによると思う」
「……それは確かに」
「絶対に興味示させてやるから、手洗って待ってな!」
どやっ、というような自慢げな顔をして、桧山は上機嫌で去っていく。
その後ろ姿をしばらく見送ってから、奈音は手元の本に視線を落とした。
「……あ」
小さく声を漏らした桧山は、踵を返して図書室へ戻る。
再び戻ってきた桧山に、奈音はきょとんと首をかしげて見せた。
「間違えた」
「?」
「首。首洗って待ってな、だった」
「……わざわざ訂正しに来たの」
恥ずかしそうにうなずいてから、桧山は今度こそ背中を向けて立ち去る。
その後ろ姿を見送ってから、つい先ほどまで無表情だった奈音は、くすくす、小さく笑った。
「何あの人、面白い」




