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平凡ほど良いものは無い  作者: 晴曇空
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第一話 雨が舞った入学式は何かと悲しい

 この世界中の人々のうちほとんどは高校生活を送ったことがあるだろう。それが充実した高校生活だったのか、はたまた悲しすぎる高校生活だったのか……。

 そんな高校生活だが俺の場合はなんとも普通なものだ。

 だが例えばそれは厨二病をこじらせ、できるものなら厨二っぽい話を延々としまくるやつだったり、例えばそれは授業中であれなにであれ一生懸命机に少女漫画を落書きしているやつだったりという偏屈ものもいる。もちろん普通の奴が多い。だから普通だ。

 どちらかというと俺も偏屈もんかもしれない。なにせこんな普通で溢れた生活をこうやって書こうとしているんだから。ただそれまでしてこの生活は面白いものだと、俺は自負しているね。だから書こうと思ったのかもしれない。

 それじゃあ何処から書こうか…。ま、無難に入学した時のことでも書くとしようか。


 桜吹雪が舞う春。卒業式が終わりたった二週間で桜は満開を迎え、そして風も徐々に暖かくて気持ちいい……。それこそが世間一般的に言う入学式の代名詞とも言えるだろう。だが、残念な事に俺たちの入学式の代名詞はこうだ。

「雨が舞い、桜はまだ咲いておらず、風も冷たい」入学式だ。どうでしょうこの悲しすぎる入学式は。

 青春の最初が雨でスタートというなかなかな展開になってしまったわけだがクラスのメンバーは面白い連中だった。……ちなみに自己紹介はスタンダード中のスタンダードの「高岡恭太郎です、これからよろしくお願いします」だ。

 さて翌日、いきなりにも三人話しかけてきた。一人はおっとりした女子、名前を片岡七保(ななほ)と言うらしい。また一人はバリバリのスポーツ少年という感じの少年、馬場康太。そしてもう一人は漫画とかによく出てきそうな委員長キャラの時坂篠音(しおね)。三人とも俺と気が合うようでいきなり仲が良くなった。


 またまた翌日、今度は委員会を決めることになった。窓から春の暖かな日差しが差し込む教室の中で委員は決まっていったのだが、ただ一つ決まらないところがあった。それは副学級長という役職だ。学級長は予想通りの時坂。書記の二人は一生懸命手元のノートに何かを書き込んでいる。で、時坂は……おい、何故か俺のほうを見ている。俺に副学級長やれっていうのか?!ちょっと無理があるんじゃあないか?!俺はさりげなーく手で意見を述べる。その意図が分かったかどうかは分からんが明らかに態度が変わっている。今度はあれか、借金を貸して欲しいとせがむ奴か?!……そろそろ突っ込むのも疲れてきた。もうどうなってもいいや……。俺は手を挙げた。

 おおーという感謝と尊敬の声。時坂を見るとうるうると目が潤んでいる。俺はため息をついた。

 その後の放課後。

「いやー恭太郎君本当に助かったよー」

「そうだぞ高岡!皆が手を上げない中君が颯爽と手を上げるその勇姿、かっこ良かったぞ!!」

「勇姿っていうかね、時坂俺のほうをじーっと見てるしさー、うるうるしてるしさー」

「あははっ!ゴメンゴメン!だってさ、そうしないと高岡君やってくれないじゃーん!」

「……。まあいいけど…。」

「きょーすけくんって優しーんだねー」

 話がめんどくさくなったので話題を変えてみる。

「ところで明日部活説明会あっけど、何処に入る?」

「えー私はまだ決めて無いけど。」

「わたしもーまだ決まってないです」

「俺もだ!」

 それを聞いて俺は口角を上げてこう言った。

「じゃあさ、文芸部、やらないか?」

「「「文芸部?」」」

 三人の顔が驚きの顔に染まる。

 しばしの無言の後、時坂が口を開いた。

「で、でもさ、創部するの、5人以上じゃなかったっけ?」

「え、マジでか」

「おう、生徒手帳にもそう書いてある」

 俺は今いる顔を見た。

 時坂、高岡、片岡と俺。

「……一人足りないな」

「……うん」

「……足りねえ」

「足りないですねぇ…」

 文芸部創部に当たりあと一人どうしようか、俺たちはそんな問題にぶち当たったのだった。

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