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勇者と盗賊退治3

 なぜだ。終わらない…。

 振り向いた灰芽を見た盗賊たちは、一瞬驚きに声が出せなかった。

 その様子を見た灰芽は、ああ、やっぱり夢オチなんて幸せな終わり方はしなかったか…と悟ると共に、何とも言えない悲しい気持ちになってレイミーを抱いていた腕に力を込めた。

 そこで、やっと盗賊たちは我に返った。


「子ども…」

「というか、女?」

「え、男じゃないのか…?」


 盗賊たちの反応は、失礼極まりないのもだった。ただでさえ、睡眠不足でいらついていた灰芽の限界を、軽く超えるくらいには。


「誰がっ、女だー!?」


 レイミーを抱えたまま、灰芽は絶叫した。

 この時、灰芽14歳。悲しいことに、小柄な背丈に加え、国一番といわれる美女な母と姉を持つ当時の彼は、間違いなくぱっと見は美少女にしか見えなかった。

 そして、それは灰芽の逆鱗とも言っていいコンプレックスだった。


「いや、お前さんが?」

「…おい、王子様が来るはずじゃなかったのかよ?」

「あの子は違うのか?」

「どう見たって、ありゃ十二歳になってるかなってねえかだろう。王子殿下は十四だぜ?」

「髪の色は…金髪……か?見えなくはねえけどよ…」

「眼の色が違うだろーが。殿下は青色。あっちは黄色だぜ」

「大体、殿下はイケメンのはずだろ?綺麗な顔してっけど、ありゃ違うだろ」


 盗賊たちは自由な人の集まりだった。

 灰芽は心に消えない傷を負った。人間相手には怪我を負ったことのない灰芽に膝をつかせるとは、彼らは実はやり手だったのだろうか。

 灰芽は涙目だった。


「王子がこんなとこに来るか、馬鹿かー!?」


 必要以上に大声で叫んでしまった灰芽は悪くない。しかし、そのセリフにカチンとくるものがあったのか、お頭らしいひときわかっぷくのいいオヤジが、灰芽に怒鳴り返した。


「何言ってる?王子殿下は、しょっちゅう盗賊退治をしてくださっているそうじゃねえか!」


 負けじと灰芽も怒鳴り返す。


「そんなの初耳だね!あいつ、いつも椅子に座ってふんぞり返ってるよ!」


 そして始まる怒鳴り合い。


「馬鹿言うな!北の町の盗賊団【盗賊だもの】一味を叩きのめしたのは王子だろうが!」


「なっ、そんなハズい名前だったのかあいつら!?…確かにそんなプリントのTシャツお揃いで着てたあけど、チーム名だったのか?てゆか、なんで盗賊になれたんだよ、あいつら雑魚だったぞ!?」


「人様の名前にケチつけてんじゃんねえよ!南に市商店街の【僕らはみんな生きている】なんて、あの後【お前らみんな死んでいる】っつー陰口叩かれたんだぞ!?」


「知らねえよ!なんだよそのほのぼのとした団体名は!あと人聞きの悪いこと言うな!一人も殺してねえよ!」


「じゃ、じゃあ、あれはどうだ!西本町を中心に活動してた盗賊団は!?」


「やめろ!!思い出させるなぁっ!」


「あの変態連中に、手前が敵うはずもねえ!」


「…ああそうだよ!下っ端には(大人な意味で)襲われかけるし、それ以外にはオカマ扱いされた俺の怒りがわかるかー!?」


「……なっ!?さ、さすがは【ロリータ至上主義結社】だ…。なんという真正の変態の集まり」


「そいつらだけはボッコしましたけどね!?基本的に俺無駄に怪我させてないからね!?」


 そして、彼らはほぼ同時に違和感に気づいた。


「…これ、王子のした偉業じゃないのか……?」

「え?これ、王子がしたことになってんの…?」


 そのつぶやきを聞き、周囲にいた盗賊たちも一切の動きを止める。立場は違えど、彼らの心はこの時、一つになったのだった。


「「「「「「何してんじゃ、あの王子ー!?」」」」」」



とうぞく の こうげき


つうこん の いちげき !


ゆうしゃ は こころに きえない きず を おった 。



次回

騙され勇者とおちゃめな盗賊たち な話

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