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勇者と盗賊退治1

魔王たちと愉快な出会いをする前の勇者を襲った、衝撃的な出来事。


長い文になると読みにくかったので、分けます。

 その日、灰芽はとても機嫌が悪かった。

 理由は簡単だ。朝から王子に呼び出されたから。


「おいっ!朝っぱらから人をゴーレムみたくホイホイ呼び出すな!」

「ゴーレムみたくって…。お前、ゴーレムなんてホイホイ呼び出せるわけないだろう。下準備が大変なんだぞ?お前と同列に扱うなぞ、ゴーレムに失礼だろう?」

「お前の言い草は俺に失礼じゃないのか!?……大体、ゴーレムってポンポン出てくるじゃん!」


 言うなり、灰芽は足元にぽんっと小さなゴーレムを呼び出した。実はこれ、呼んでいるのではなく、術者の魔力がよくわからない反応をして出来上がっているのだが、灰芽がそれを知るのは魔界に行ってからになる。


「……王宮の魔法使いでも、簡単には出さんわ!」

「普通に家で家事してるよな?レイミー」

 灰芽に呼びかけられた子供サイズのゴーレムはこくりと頷いた。ちなみに、ちびっこゴーレムのレイミーの担当は庭の草むしりである。


「じゃねえ!朝と言うのもおこがましいわ!早朝三時は朝とは言わねえよ!」

「お前が、今、自分で朝っぱらからと言ったのではないか」

「お前がよこした奴が、早朝から申し訳ありませんとか言うからだ!」


 灰芽は爆睡しているところを叩き起こされた揚句、王子が呼んでいるからと連れ出されたのだ。使者としてやってきたおっさんは、半泣きだった。きっと、心根の優しい人なのだろう。

 普段の働きが人間に出来るレベルを凌駕しており、そのせいで怒らせたら殺される・怖いと思われていることを、灰芽は知らない。

                    

「で?何の用なんだよ。俺はできれば二度寝したい」

「あ、そうだった。とりあえずちょっとここ行ってこい」

「は?」


 ものすごく嫌な顔をしながら、灰芽が受け取ったのは一枚の地図。


「おい、ここって…」

「盗賊団の根城だ」

「根城だ、じゃねえよ!なにかっこよくポーズ決めて言ってんの!?」

「私は恰好いいから、普通にしていても決め顔になるんだ。ひがむな」


 物憂げに溜息をついた王子に対し、灰芽が思ったことはただ一つ。


 この、残念王子が!


 だった。この実態を知らない国民に声高に宣伝したい。こんなのが自国の抱かれたい男No.1だなんて恥ずかし過ぎる。というか、内容が何であれ、これに負けているだなんて自分が情けなさすぎる。

 王子の顔も知らないような田舎の人間には、勇者としての仕事が王子の偉業として伝えられ、それで票を集めていることを、灰芽は知らない。


「お前、これ…」

「母上から頼まれた。でも、私は忙しい。だから、お前行って来い」

「ふざけんな!お前を甘やかしたっつって後で怒られんのは俺なんだぞ!?」


 正確には、灰芽は甘やかそうと思ったことはない。なにが悲しくて同い年の男を甘やかさなきゃならんのだと思う。

 しかし、無自覚に王子に対して甘いことも事実だった。


「…お前、私は一週間後に婚約者の姫に挨拶に行くんだが、わかってるか?」

「……いや、知らないけど…」

「傷だらけの姿で姫に会い、振られて来いと?そもそも、一週間で片付かなければ馬鹿にしていると言われ、同盟関係にひびが入り、最悪戦争になれと?」

「言ってない!そこまで言ってないだろ!」

「お前が行かないということはそういうことだ。大体、今だって誰かがその盗賊団の被害にあっているかもしれないというのに…。お前、それでも勇者の家系か!?」


 灰芽は盛大に顔をひきつらせた。元々、勇者と呼ばれるのは嫌いなのだが、最近は王子がそう呼ぶせいで、周囲も灰芽のことをそう呼ぶのだ。勘弁してほしい。


「おま…!」

「国のためにも、頑張れよ」


 抗議しようとした灰芽を遮って、王子が指を鳴らす。それを合図にしたかのように、灰芽の足元が白く光り、すぐに灰芽はその光に呑みこまれていく。

 反射的に、ゴーレムのレイミーを抱き込んでかばいながら、灰芽は青褪めた。これが、長距離の転送の魔術であると気付いたからだ。初めから、移動用の魔法陣が仕込まれていたのだ。同時に、自分が丸腰であることにも思い至った。なんという無理ゲー。

 色々と言いたいことも、言わなければならないこともある。

 だが、その場から消える寸前、灰芽が叫べたのは一つだけだった。



「この、かっこつけがあぁぁあぁあ!!」



 魔法陣の起動に、わざわざ指を鳴らす演出は要りません。



《つづく》

 

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