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一言

作者: 純愛







“頑張ったね”







たった一言が嬉しかった…


君がくれたその一言で救われたんだ…







――――――――



「今日は頑張ろう!!」


「「おー!!」」


クラスのリーダー的存在の涼太の掛け声。

それに共感する皆の声。


今日は待ちに待った体育祭。中学校最後の体育祭。



皆の顔はとても清々しくて、楽しそう。

でもあたしだけは違う…

たくさん練習したし、楽しみなのは確かなんだけど…


「頑張れよ」


ポンっと頭を叩かれて、後ろを振り向く。


「涼太っ!」


「頑張れよ、アンカー」


「プレッシャーかけないでよ、ばかっ!」


あたしが不貞腐れてそう言うと、涼太は

「ははっ」

って意味ありげに笑ってから男子の輪に混ざっていった。



顔、赤くなかったかな…?



今日は頑張らなきゃいけない。涼太の言う通り、あたしは責任重大のアンカーだから…

でも、緊張するな…



ふ、と涼太の混ざった男子の方を見ると、不意に涼太と目が合った。










体育祭も最高に盛り上がって、ついに最後のリレー。


各組とも大きな点差もできず、殆ど同点に近い。


「リレーで優勝が決まるな」

そんな風に言われていた。



だめだ…緊張する…




「位置に着いて、用意…」

パーン



担当の先生の掛け声により始まったリレー。

それに伴い、各組からの応援も盛大になっていく。



「あ!赤一番だっ!」


「頑張れー!」


「抜かれるなっ」



どくん…どくん…

心臓の音が早まっていく。

このまま一位でゴールできるかな?


「次、アンカー!コーナー入って!!」


リレーを始めさせた先生の言葉により、各組のアンカーが立ち上がる。

もちろんあたしも。


「一コース赤、二コース白、三コース………」



ふう…

大きく深呼吸をする。



「ッ…繋げて、優衣!!」


バトンを受け取ろうとしたその時だった。


あんなに練習したのに…

頑張ってきたのに…

あと少しだったのに…




あたしの手の中にはバトンが無くて、赤じゃない色の鉢巻を付けた人達があたしの横を次々に通っていった。




「あきらめんな、優衣ーーーーー!!」




思いっきり怒鳴った声。それは紛れもなく、涼太の声で。

悔しさと嬉しさで涙が出そうだった。



あたしは転がったバトンを拾って、遠い前にある背中を目指して走りだした。




パーン


誰かがゴールした音。

ゴールテープが切られた合図。


でもそんなことは関係なかった。ゴールした組の人達が騒いでいるのに、あたしの耳にはあいつの声だけが聞こえてくる。



あとちょっと…



目の前にはもう誰の背中もなかった。



パンパンパーン


続けて三回鳴らすのは、全員がゴールした合図。



あぁ、あたし…ゴールしたんだ…



凄く疲れていた。

だけど、あたしはクラスのところへ向かった。


謝らなきゃいけない…


中学校最後の体育祭なのに、あたしが最悪な結果にした。皆に謝らなきゃ…




「優衣!!」


出迎えてくれたのは、もちろん涼太。

皆の視線を一気に浴びる。


「…ごめんなさい、涼太!皆も…本当に本当にごめんなさいっ!!」


深々と下げたあたしの頭はごんっと殴られた。

相手なんか見なくても分かる。だけど涼太の目を、皆の顔を、確認するのが恐くて顔を上げられなかった。


「頭上げろ」


いつもより少し低めの涼太の声。完全に怒ってる、そう思ってゆっくり顔を上げた。



目に飛び込んできたのは、予想外の涼太の顔。

耳に聞こえたのは、予想外の涼太の言葉。




「よく頑張ったね」




微笑んだ涼太の顔を見たら、我慢してた涙が一気に溢れてきた。


涙で歪んだ目で周りを見渡すと、涼太以外の人達も皆笑ってて、余計に涙が溢れた。









―――――――――







「ふふっ」


思い出して、つい笑ってしまった。


「は?なに、お前?!」




あの日、私に最高の一言をくれた人は、凄く大切で大好き人。

これからもずっと隣で笑っててね。




「何でもないよ、涼太っ」

読んでくれてありがとうございました。…初めて小説らしい小説を書いた気がします。誰にでも、失敗はありますよね。その失敗をした時の周りの反応って凄く気になると思うんです。個人的に、涼太の性格は好きです!(笑)文章力はまだまだですが、これからも頑張ろうと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 前作の時も思いましたが、作品に感情を織り込むのが上手いと感じました。 行間の空白は人によって受け取り方は異なるかも知れませんが、私は良いと思いました。 同じ人物からのコメントではつまらないか…
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