まるでハーレム
さて、マユたちと合流したのはいいが、この大人数でオウデルさんの家に泊まるのも悪いよな。
何よりオウデルさんがいると思うと、夜のお楽しみが思い切りできないので、拠点にしているアーリキタの街に戻りたい。
「俺達これから出発しようと思うんですが、ほんとにアイリを連れていってもいいんですか?」
オウデルさんは、朗らかな顔でうんうんと頷く。
「アイリのことはカイトに任せた。アイリもカイトも、他のみんなもまだ若い。色々経験してくるといい」
「ダンジョンにも潜るし、危険かもしれませんよ?」
「カイトの傍が一番安全じゃろう。しっかり守ってやってくれ」
「はい、命に代えても!」
「それと、たまにはここに戻って元気な顔を見せて欲しいのぅ」
「はい! オウデルさん、お世話になりました!」
俺達はオウデルさんに見送られながら、ヨクア村を後にした。
* * *
街道を歩いて、アーリキタの街へ向かっていると、アイリが話かけてきた。
「カイト、ダンジョン寄っていかない? みんなの実力を知っておきたいの」
「いいよ。寄っていこうか」
アイリの希望によりティバンのダンジョンに寄ることにした。
街道を逸れて、ティバンの森のダンジョン方面に歩いていると、いくつかの建物と多くの人が行き交う、街のようになっている所が見えてきた。
最近は、冒険者ギルドのポータルから深い階層に直接行くので、ここに来るのも久しぶりだ。
ダンジョン入り口には、何組かの冒険者たちが並んでいる。俺たちも彼らに続いて、階段を下りた。
相変わらず一階層は人が多い。今となっては一階層で得られるものは何もないのと同じなので、みんなで走って深い階層を目指した。
マユが神聖魔法サンクチュアリを使ってくれているおかげで、雑魚モンスターは出ない。他の冒険者にぶつからないように注意して走った。
ほどなく三十階層に到達。そこそこ飛ばしていたけど、息を乱している者は一人もいない。
「アイリ、聖弓タスラムを出して。ここからはモンスターと戦いながら進もう」
アイリは弓を取り出し、魔力で体を覆った。彼女の気合が入った波動が肌で感じられる。
マユにサンクチュアリを解除してもらうと、すぐにモンスターの気配が迫ってきた。
アイリは聖弓タスラムで、モンスターを次々と射抜いていく。
そういえばオベラム湖のダンジョンの隠し部屋で、クラゲのモンスターを倒した時に、アイリも近くにいたからレベルも上がっているはずだよな。
マユの聖光のおかげもあるだろうが、ほとんどのモンスターを一撃で倒せている。アイリと聖弓タスラムの相性は良いみたいだし、まだ余裕はありそうだ。
マユ、クレア、フィリスは積極的にモンスターを攻撃せずに、アイリの力を確認しているようだ。
モンスターを次々と倒し、どことなく得意げなアイリの顔はとても可愛い。
順調にダンジョン奥へと進んでいく。俺はアイリの傍で、万に一つでもモンスターの攻撃がアイリに当たらないように備えていた。
マユも障壁を張ってくれているので、大丈夫だとは思うが念のためだ。
三十六階層に到達。
ここのモンスターはエンシェントオーガ。巨体で頑丈なモンスターだ。
アイリの矢では、一撃で倒せなくなってきた。徐々にアイリの表情は険しくなっていく。
でも俺たちなら、この階層はまだ楽勝なんだよね。
「アイリ、疲れたでしょ。ちょっと休んで」
アイリにセイグリッドヒールを使って、疲労を癒してやった。
「まだできるよ!」
「いいから、いいから。みんなの実力を知りたいんでしょ?」
俺が笑顔を向けると、アイリはしぶしぶ引き下がった。
これまでアイリがメインで戦っていたが、様子見をしていたマユたちが前に出て、モンスターの相手をする。
マユは遠近構わず高威力の神聖魔法でモンスターを正確に撃ち抜き、クレアはエクスカリバーの斬撃で複数のモンスターを薙ぎ払う。
フィリスもグングニルを自在に操って、モンスターを次々と消滅させていった。
アイリはみんなの強さに驚いたようだ。
「三人ともカイトと同じくらい強いなんて信じられない」
フィリスは苦笑いで首を横に振る。
「いやいや、カイトは私なんかよりもずっと強いからね」
「そうですよ! カイト様の強さは私たち三人が力を合わせても敵わないんですから!」
クレアはドヤ顔で得意げだ。それはちょっと言い過ぎでは?
「この世界にカイトより強い人なんてきっといないわ」
マユまでそんなこと言って。褒められすぎだとは思うけど、悪い気はしない。ところがアイリは眉を寄せて表情を曇らせている。
アイリはしきりに自分の強さを気にしていたもんな。みんなが強いのを直に見て落ち込んでいるのかも。
「何度も言っているけど、アイリもすぐに強くなれるからそんな顔しないで」
俺の言葉に「でも……」と、不安げな顔をするアイリ。俺が彼女の肩を抱き寄せ、背中をポンポンと軽くたたくと、クレアが抗議するかのように声を上げた。
「カイト様! さっきからアイリ様ばかり可愛がっていませんか?!」
「そう? じゃ、クレアもおいで」
俺が言うとすぐにクレアは飛びついてきた。よしよしとクレアも撫でてやると、嬉しそうに目を細めた。
なんだか犬みたいだなぁ……。
背中から突き刺さるような視線を感じたので、振り向いて両手を広げる。
「マユとフィリスもおいで」
二人は躊躇うことなく俺の腕の中に収まると、マユは俺の首筋に吸い付くように唇を押し付け、フィリスは俺の頬へとキスをした。
四人とも俺のことを好きすぎるだろ? つい顔が緩んでしまうのが自分でも分かった。
そのままピクニック気分でダンジョンを進み、四十階層のポータルでアーリキタの街の冒険者ギルドへと帰還した。
アーリキタの街の冒険者ギルドに戻ってくると、コアを買い取ってもらってからテンプーレ亭に向かった。
テンプーレ亭ではアイリの歓迎会ということで、ごちそうを注文した。
食事しながらマユ、クレア、フィリスが俺との出会いをアイリに話し、アイリも俺との出会いやヨクア村での出来事をみんなに話して、終始和やかな雰囲気だった。
このままアイリも、みんなと仲良くしてもらいたいところだ。
夕食の後は、この街の冒険者区画では最高グレードの宿屋で部屋をとった。お値段一泊200万イェン。
金銭感覚が壊れてる? いや、これくらいダンジョンに潜れば余裕で稼げるから問題ない。
部屋に入るとすぐにマユ、クレア、フィリスの三人は服を脱いで、部屋に設置されている大きな浴室に入っていった。最近はいつもこんな感じだ。
「カイト様ー! 早くお風呂に入りましょう!」
クレアの呼び声に俺は「ああ、今行くよ」と応える。
アイリは呆気にとられて目を丸くしている。
「みんなカイトの前で堂々と服なんて脱いで……こんなの、まるでハーレムじゃない!?」
「うん! ここにいるみんなのお陰で俺の夢が叶ったよ」
アイリは俺に抗議するかのような視線を向ける。
「俺の夢って言えば、何でも済まされると思ってない?」
「ならアイリは一人で入る?」
「うぅ、私もカイトと一緒に入る」
アイリは力なくそう言うと、渋々服を脱いでみんなと一緒に風呂に入った。
三日ぶりということもあり、マユもクレアもフィリスも思い切り甘えてきた。はじめは戸惑っていたアイリも、吹っ切れたのか俺に甘えにきてくれた。
今夜も俺は女神様に感謝をしつつ、体力の続く限り彼女たちと盛り上がったのだった。




