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欲張ってチートスキル貰いすぎたら、ステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します  作者: ゆさま


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故郷(前編)

 カイトが一人でヨクア村に向かった日。別行動するマユの視点。





 私は、クレアとフィリスと共に、街の入口からカイトの背中を見送っていた。


 カイトが見えなくなると、フィリスもハームジの街に行くと言って、一人で走っていった。私はクレアと街の中に戻っていく。


「カイト様、行ってしまいましたね」


 クレアは力なく肩を落として、深く息を吐いた。私だって、ため息の一つくらい吐きたい。


 カイトが喜ぶことを、一番に優先したいというのは本心だ。けれど、カイトが他の女の子に手を出すために見送るなんて、複雑な気分だ。


「カイトだから仕方ないでしょ。落ち込んでいないで、買い物に付き合って」


「ええ、それはいいんですけど、マユ様の故郷に行くのでは?」


「その前に、ちょっと買いたいものがあるの」


 市場に行って大量の食材を買い込み、マジックバッグに収納していく。クレアはそれを見て不思議そうにしている。


「こんなにたくさん買って、どうするんですか?」


「明日になれば分かるよ。今日はのんびり買い物をしよ。クレアも欲しい物があったら言ってね」


「はい……」


 私たちは、二人で市場を巡りながら必要なものを購入した。




 * * *




 ――次の日。


 クレアと二人で、ゆったりと出発の準備をして街の外に出る。


 私は、魔力で作った光球を広げて自身とクレアを包み込み、生まれ育った村を目指して飛び立った。


 魔力を操作して空を自在に飛べるようになるなんて、カイトと出会うまでは思ってもみなかった。それが今では、息をするのと変わらないくらい簡単にできてしまう。


 歩けば丸一日はかかる距離のはずなのに、ほんの数分でさびれた村が見えてきた。


 村の入口に降りた。街のような賑わいはなく、聞こえてくるのは鳥や獣の声だけだ。


「着いたわよ。ここが私の故郷のカソカ村」


「ここがマユ様の生まれ育った村なんですね。早速ご両親に会いに行かれるんですか?」


「父も母も、もうこの世にはいないわ」


「そうですか……」


 私たちは、黒ずんでひび割れた、木造の門を通り抜けた。


 村に戻ってきたといっても、家族に会いに来たわけじゃない。両親は私が幼いころに流行り病で亡くなっているもの。


 村の中を歩きながら、私は懐かしい風景を見つめる。ああ……ここは変わっていないなぁ……。


 二人並んで歩いていると、ガラの悪い男に絡まれている女性を見かけた。


「なぁ、いいだろ? 俺と遊ぼうぜ? 領主様の兵である俺の誘いを断ったりしねぇよなぁ?」


「いえ……ですから私はこれから用事があって……」


 男は顔を赤くして、足元はふらついている。こんな時間から酔っぱらっているようね。関わりたくはないけど、放っておくこともできない。


 クレアに視線を向けると、不快感をあらわにしてその男を見ている。


「マユ様。切り捨てますか?」


「カイトだって人を殺すのは避けていたでしょ? 悪人だからってむやみに殺しちゃだめだよ」


「分かりました」


 クレアはそう返事をすると、つかつかと男に歩み寄る。


「そこのあなた! その人は嫌がっているでしょ!? やめなさい!!」


 男は振り向き、クレアを舐めるような視線で見ると、いやらしい笑みを浮かべる。


「うひょぉ。いい女だなぁ。あんたが俺の相手をしてくれるのか?」


「ええ、私が相手になります。ライトボール!!」


 光弾がクレアの手のひらから撃ち出され、男の腹部に命中すると、その場に倒れ込んだ。


 絡まれていた女性は小走りで逃げていった。男は腹を抑えながら立ち上がりクレアを睨んだ。


「てめぇ……。領主様の兵であるこの俺様に……」


 クレアは構わず、再び手のひらを男に向ける。


「ライトボール」


 今度は顔面に命中し、軽く飛ばされて仰向けで倒れた。男は藻掻きながらも、どうにか起き上がってクレアを睨む。クレアも負けずに睨み返した。


「まだやりますか?」


「くそっ!! 覚えていやがれ!」


 男はお約束の捨て台詞を残して、よろめきながらもその場を走り去っていった。


「あなたのような人、覚えていたくありません!」


 クレアはフンッと鼻息荒く言い放つと、私の元に駆け寄ってきた。


「マユ様。行きましょう」


「うん。お疲れさま」




 * * *




 気を取り直して再び歩き、村の中央付近にある教会に到着した。


 老朽化した建物だが、隅々まで手入れは行き届いている。中に入ると礼拝堂がありその奥には祭壇があった。私が二年前、村を飛び出した時と何も変わらない様子だった。


 中にいた老齢の神父様とシスターの二人が、私の姿を見るとすぐに駆け寄ってきた。神父様は私を見て優しく微笑む。


「マユ、久しぶりですね。元気にしていましたか?」


「はい、おかげさまで。神父様もお変わりないようで安心しました」


 神父様は視線を巡らせると、表情を曇らせる。


「ザッコス、モブーラ、ヨワーネはもしや……」


 私の隣にクレアしかいないので、三人の身を案じているのね。


「いえ、三人とも元気です。私はあの三人とは別の人とやっていくことになったので」


「そうですか……それなら良かった。では、そちらの方とパーティーを組んでいるのですね」


 神父様の視線が、私の横に立っているクレアに移る。


「初めまして、神父様。私はクレアと申します。よろしくお願いします!」


 元気に挨拶して、にこっと笑うクレア。


「彼女は頼りになる仲間です。それと、今は別行動していますが、とても頼りになる人とも出会えました」


「そうですか。それは良かったですね」


 穏やかに微笑む神父様とシスター。


 二人は孤児となった私の面倒を見てくれた。ザッコス、モブーラ、ヨワーネも私と同じ境遇でここの世話になっていた。


 二人は神聖魔法が使えるので、治癒魔法で村人の怪我や病を癒し、村人からの寄付で生計を立てていた。とはいえ、強力な魔法は使えないので救えない命も多かった。


 今の私の力があれば……、そんなことを思っても、仕方がないのだけれど。


「それで今日は何用でここへ?」


「お世話になったお返しに」


 私はマジックバッグから封筒を取り出し、神父様に手渡した。神父様はそれを受け取ると中身を確認する。


「ありがたいですが、こんな大金は受け取れませんよ」


「今の私ならこの程度すぐに稼げます。気にせず受け取ってください。今も多くの子供たちの面倒を見ていますよね?」


 そのとき、入口のドアがバン! と乱暴に開いて、八人のガラの悪い男が礼拝堂に入ってきた。先ほどの男が仲間を呼んできたみたいだ。


「その金は俺様によこせ! さっきの慰謝料として受け取ってやる!」


 私は彼らの言葉に返答するもせず、神聖魔法を発動させ全身を覆った。攻撃的な波動を放ち威圧する。


 男たちは顔を引きつらせて後ずさる。そのうちの一人の男が拳を握りしめて、殴りかかってきた。


「女二人にびびってられるか!」


 けれど、私の展開する魔法障壁に阻まれて、近づくことさえできない。


「私はレベル54のBランク冒険者。あなた達が束になってかかってきても、指一本触れることさえできない。それでもやると言うなら、全力で叩き潰すわ」


「なっ!? レベル54?」「Bランク!?」「やべぇ、俺等より強ェぞ」


 動揺する男たちに向かって、私はより攻撃的な波動を叩きつけた。


「これ以上騒ぐようなら容赦しないわよ? 今すぐ立ち去りなさい」


「くそっ!! 覚えていやがれ!」


 本日二回目の捨て台詞を吐いて、男たちは逃げていった。神父様は目を見開いて驚いている。 


「マユ、強くなったのですね」


「いえ、私なんてまだまだです。それよりもあいつら、領主の兵士とか言っていましたが?」


 私の言葉に、今まで穏やかだった神父様の表情が険しくなった。


「彼らは、この辺りを治めている領主様の私兵です。ひと月前に伯爵様が代替わりしてから、ああいった輩がうろつくようになりました」


「代替わり?」


「ええ、新たにダナウェル伯爵家当主となった長男のヨックバル様は、兵士を多く雇って領地の村々から略奪まがいのことをしているのです」


 クレアから怒りを伴った波動が立ち昇る。見ると、顔を真っ赤にして目を吊り上げていた。


「クレア、腹立たしいのは分かるけど、抑えてね」


「すいません、つい……」


 クレアはふうと息を吐いて、漏れ出す波動を抑えた。


 悪徳領主か、放っては置けないな。でも今すぐにできることは無いか。それよりも……。


「神父様。お金は受け取ってください。私がお世話になったのは事実です。子供たちのために使ってほしいです」


 神父様は少し迷ったあと、封筒を受け取った。


「ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」




 * * *




 日が落ちて夕食の時間になった。


 私はマジックバッグに入れて大量に持ってきた食材を調理して、孤児たちに振る舞った。


 元気に食事をとる子供たちの姿を見て、神父様は嬉しそうだった。


「マユ、食事まで頂いてしまって……。ありがとうございます」


「いいえ、これくらいのこと、気にしないでください」


「……子供たちの未来を考えると、今の領主様のやり方には不安を感じてしまいます」


 神父様はそう呟くと、子供たちに視線を向けて続ける。


「次男のフィリップ様は賢く領民からの人望もあります。もしフィリップ様が領主となられていたのならば……。いえ、今の言葉は忘れてください」




 * * *




 その夜、私とクレアは教会内の空いている部屋に泊めてもらった。部屋は一人用なのかベッドは一つだ。私はクレアとそのベッドに横になる。


「ねぇクレア。カイトだったらどうするかな?」


「悪徳領主のことですか? きっとカイト様ならお仕置きしに行くと思います!」


「女の子が絡んでなかったら、見過ごしそうじゃない?」


「それは……。でも、マユ様や私に手を出そうとしたら、きっと怒って暴れると思います!」


「そうだよね……」


 このまま何事もなければ、放っておこう。もし、私たちにちょっかいを出すようならその時は……。


 そんなことを考えながら、眠りについたのだった。


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