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廃棄少女は終末世界で深海の夢を見るか  作者: 宮浦 玖
第二章 傭兵のお仕事
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傭兵のお仕事:5

「あのバカ……」


 土煙の中、瓦礫がれきの影に身を潜めていたサクラの耳元にプロペラの音が届く。

 レイミアがサクラの指示を無視して、ドローンを動かしているのだろう。


『動体反応検出 脅威度判定 脅威度E 簡易排除行動を開始します』


 ギガンテスもまたドローンの動きに気がついたのか、プロペラの飛行音をき消すように、ガトリングの掃射音が鳴り響いた。

 だが、都合がいい。レイミアの目論見もくろみが上手くいかなかったとしても、ギガンテスの攻撃がドローンに向かっているのなら、相打ち覚悟の奇襲は狙える。

 まもなく土煙も晴れる。タイミングを狙うならそこだろう。


「……ちょいと地味だが、悪くない死に場所か」


 何かに期待するような声をらし、サクラは大剣を握る手に力を込める。


――あのデカブツ、『粒子反応』とか言ってたからな。粒子防壁の自動展開をオフにしておけば、見つからずに切り込めるだろう――


 そして、物陰から飛び出そうとした瞬間、インカムの向こうでレイミアが叫んだ。


『サクラさん、わかりました! ギガンテスのメインカメラ直上――頭の上に飛び乗ってください!』


 その声に出鼻をくじかれたサクラは、釣られて同じくらいの声量で叫ぶ。


「頭ぁ? あのデカブツに飛び乗れってか!」

『サクラさんならできますよね!』

『排除対象発見 攻撃目標を変更します』


 その声が原因で、ギガンテスがサクラの存在に気づく。

 これでは奇襲も何もあったものではない。


「っち、やってやるよ!」


 見つかったからには気配を消しても意味がない。そんな破れかぶれの気持ちで、サクラは兵装の粒子防壁の自動展開を再起動し、改めて物陰から飛び出した。

 土煙が収まり徐々に視界が広がる中、ガトリングの掃射に対して回避行動すらとらず、一直線にギガンテスに突っ込む。


『粒子残量十パーセント、危険域に到達』


「うらぁ!」


 防壁が消える直前に力強く地面を蹴ったサクラは、ギガンテスの左腕を経由しての二段跳びでなんとかその頭部へと飛び乗ることに成功した。


「乗ったぞ!」

すごいですサクラさん!』

「お世辞はいい! 次はどうする!」

『ギガンテスの集積回路は頭部に集中していました! そして、電子部品が集まったその部分には火薬の反応はありません。つまり……!』

「頭を斬れば爆発はしないわけだな!」

『はい!』


 サクラは残る力の全てを込め、大剣の刀身を自らの足元に突き立てた。


『深刻……な…ダメー……回避……行……』

「『企業』の開発者ってのは現場を知らないみたいだな……致命傷を受けてから逃げようとしてもおせえっての」


 断末魔のようなシステムメッセージを吐き、ギガンテスはその動きを完全に停止した。


「はぁ……はぁ……本当に勝っちまったよ」


 バチバチと電子機器が漏電ろうでんする音を聞きながら、ギガンテスの頭頂部に深々と突き刺さっていた大剣を引き抜くと、サクラは足元で鋼鉄のしかばねとなった最新鋭機を見下ろす。


『サクラさん、ご無事ですか! 生きてますか!』

「おかげさまでな……でも、この短時間でよくギガンテスの弱点がわかったな」

『コーラルにいた時、炸裂反応装甲について調べたことがあったんです。爆風の二次被害がセンサー類に影響を及ぼすことがある、って記述を思い出して、センサー類が集まっているところを探して……』

「……へぇ」


 当てずっぽうではなく、理屈に基づいての結果だったとわかり、サクラは感嘆かんたんの声を漏らす。

 ここまでのナビゲートで、彼女が“情報収集”にけているとは薄々感づいてはいたが、レイミアのそれはさらに一歩進んだ“情報分析”の領域におよんでいた。


「しかし、コーラルってのは大変だな。そんな一昔前の兵器のことまで勉強させられるとは」

『ああ、いえ。調べたのは個人的な趣味です』

「……あんた、変わり者だな」


 もしかしたら、彼女は単なる『情報マニア』なだけかもしれない、と一旦評価は保留することにした。


『でも、ギガンテスも倒しましたし、戻ってくるルートを探しますね』

「おいおい、帰るにはまだ早いだろ?」


 レイミアは強敵を倒した達成感に満たされているようだが、本来の仕事である遺跡内部の調査はまだ完遂かんすいしていない。


「お前が見つけたんだろう? 隠し部屋。さあ、案内してくれ」

『あ、そうでした!』


 『企業』が配備していた兵器は、ギガンテスで打ち止めだったらしい。それからは妨害も大した危機もなく調査は進み、サクラ達は遺跡の最奥に隠された一室にたどり着いた。


「ほいっと」


 サクラがゆがんで開かなくなった扉を大剣で叩き斬り、こじ開ける。


『貴重な旧世界の遺跡なのに、斬っちゃっていいんですか?』

「ギガンテスの大暴れに比べれば可愛いもんだろ。ほら、中の確認、頼む」

『はーい』


 サクラが切り開いた扉を通り、ドローンがその中へと飛び込んでいく。そして、その隠し部屋をカメラ越しに見たレイミアは、サクラへの安全報告も忘れて呟いた。


『これが……旧世界の……』


 彼女の声には隠しきれない好奇心がにじみだしていた。


「おーい、一人で楽しんでんじゃねえよ」

『あ! ごめんなさい! 内部に危険はありませんでした』


 ドローンの後に続き、サクラも隠し部屋の中に入ると、無数のまばゆい青の光が彼を包み込んだ。

 そこはこの遺跡の管理室だったのだろうか。広大な部屋の壁面には数百近い数のモニターが埋め込まれており、それが青い光の光源だった。部屋の最奥には、サクラには使い方どころか読み取り方すらわからない計器が集まったコンソールがあった。


『っていうか、これ、動いてるんですか? 旧世界って、わかってるだけでも五百年以上前ですよ!』

「これくらいは珍しい話じゃねぇよ。『企業』の最新技術すら、旧世界と比べられたらオモチャ同然ってことだ」

『『企業』が無人兵器で調査をするのも納得です』


 この一室だけで、いったいどれほどの未知の装置があり、未知の技術が見つかるか。

 旧世界の遺跡の奪い合いは資源の争奪と並んで、地上で行われる『企業』による戦争の原因の代表例だ。


「まあ、俺にはその手の話はよくわからんし、興味も湧かない……重要なのは、これが金になるってことだ」


 依頼者の理由や目的はどうでもいい。傭兵とはそういうものだ。


「今回の仕事、上手くいったのはお前のおかげだ。それに『企業』の最新兵器の残骸ざんがいなんておまけ付き。報酬ほうしゅう、期待しとけよ?」

『……は、はい!』


 まだ実感が湧いていないらしいレイミアの様子に、サクラは苦笑を漏らす。


――この様子だと、報酬の額を聞いたらまた派手に叫んでくれそうだな――


 そうして、サクラとレイミアのはじめての共同任務はアクシデントもありつつ、無事完遂となった。


 ◇


 後日、ギガンテスの売却値が上乗せされた報酬の分け前を聞かされたレイミアは、そのあまりの額に卒倒した。


TIPS:

【粒子防壁】


ネフィリミニウム粒子が持つ「エネルギー吸収」の性質を利用した兵器用の防御機構。

粒子を周囲に散布、滞留させることで攻撃から身を守ることができる。


エネルギーを吸収した粒子は使い切り。そのため大型兵器ほど大容量の粒子貯蔵タンクを搭載でき、防御能力が高くなる傾向にある。


吸収するのはあくまでも「一定以上のエネルギー」のため、内部が絶対零度になったり、酸素の動きを阻害したりする心配はない。

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