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08通目 リネッテから姉姫二人へ

シュトラスレートル城より

親愛なるお姉さま達へ


 前略 同じ内容のお手紙を送ることを許してください。取り急ぎ。


 色々あって、ゴブリン族の王様の元に急遽嫁ぐことになりました。


 今、嫁ぎ先に必要なものを城中からかき集めて、ロバの荷台に詰めこんでいるところです。


 着るものに関しては、ゴブリン族のサイズでは合わないので、服は持って行けるだけ詰めています。


 あとは大きな布(向こうには麻でできた布しかないので、今ルネが部屋の絨毯やカーテンを引っ剥がしています)と、調理道具(特に食器はサイズが違うようなので必須)、そして庭の道具(必ず役に立つと言われました)があれば良い、とのこと。


 ゴブリン族の移動手段は馬よりもロバだそうです。王様の身長ですらあたしの腰くらいまでしかないのだから、当然といえば当然。侍女のルネがついてきてくれるので大丈夫。


 そして、あたしの夫になるヒト(人ではないのだけれど)のお名前は、ボトム・ゴブリンロード様。


 先程『様』をつけてお呼びしたら、


「我は夫であり、末弟の座に座るものであるからして、『様』などは不要である。気安く『ボトム』と呼ぶように。そなたの姉姫や義兄達にもそう伝えるとよい」


 とのこと。なんだかとても真面目で、ちょっとびっくりしてしまいました。気難しいヒトでなければいいのだけれど。


 肌は緑色で、身長は私の腰くらいの高さです。もしあたしに小さな弟がいたら、このくらいの身長だったのかしら?


 年齢に関してはよくわからないのだけれど、アンフィーサお姉さまよりは年上で、あたしのお父さまよりは(多分ですが)年下だと思います。


 背は小さいけれどやっぱり王様なだけあって、若者にしては威厳がありすぎるの。けれど、髪から察するに、おじいさんではないのよ。幸いなことに! 


 そう、ゴブリン族は禿げ頭のイメージだったけど、ボトム王にはちゃんと黒々とした髪が生えていて(正直な話、ちょっぴり安心しました)、色々な木の実で出来た冠をかぶっています。


 清潔な麻の布に、何かの染料で独特の模様が描かれた服をきちんと身につけていて、お付きのゴブリン達も礼儀正しく、挨拶から手伝いまで何でもこなしてくれます。


 マリィという小さな女の子のゴブリンが、あたし専用の侍女兼ゴブリン語の通訳としてルネと一緒にせっせと働いてくれています。


 王様やお付きのゴブリン達は皆、共通語ができるので今はまだ困ることはないのだけれど。


 そう、今のところ、困っていることはありません。


 『鷲の大崖』には人間サイズの部屋がない(もちろん作ってくださるとのこと)ので、しばらくは多少の苦労があるかも知れないけれど、お姉さま達がくれた火打ち石と緑の本がついています。大丈夫。


 お妃様としての作法とか、よくわからないことがあったらまたお手紙を出します。


 いわゆる有象無象の諸侯のうちの、何か適当な人に嫁がされるものだとばかり思っていたので、ドラゴン族やエルフ族に連なるお姫様の一人としてきちんと振る舞える準備なんて、正直な話、全然出来ていなかったのです。恥ずかしいことだけれど。


 他にも書かなきゃいけないことが山にようにある気がするけれど、今はここまで。もうすぐ日が昇ります。出発の時刻です。旅をするのって何年ぶりかしら。


 お義兄さま達にも宜しくお伝えください。 草々


お姉さま達の忠実なる妹

リネッテ・ブリンク

(これはゴブリンの妃専用の名字だとのこと。シンプルで何となく気に入っています)

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