04通目 ゴブリン王ボトムの手紙
ドラゴン族アルベリッヒ王、
並びにエルフ族の長フィロストレリア・エルフェンノルン殿
両名へ
粛啓 突然の手紙を許されたい。我が名はボトム・ゴブリンロード。中央平原に住まうゴブリン族を束ねる王である。
居城やら館やらと呼ばれるほどに立派なものはないが、中央平原の湖の更に東にある『鷲の大崖』を住まいとしている者である。
ゴブリンという世間的には卑しき種族が、こうしてドラゴン、およびエルフの長に書簡を出すとは、不敬千万甚だしいとお思いであろうが、何もかもが諸兄に劣っていることを知った上で、我らは諸兄らの結んだ友誼に預かりたく、こうして畏れ多くも手紙を出した次第である。
聞くところによると諸兄らはあのシュトラスレートル城の姫君のうち、上の二人をそれぞれ娶ることで義兄弟となったという。
しかし我は知っている。あの城にはもう一人姫君がいることを。
年の頃は十七。諸兄らの娶った姉姫二人の輝きに隠れ、目立つことのない姫君が城にいるとの噂を我々は耳にしたのである。
つまり、我らゴブリン族一同は、その人間の姫君を妃として迎え入れることで、人間達による無為無益な襲撃や収奪を免れることができるのでは、と考えた次第である。
もちろん、貴兄らドラゴン族およびエルフ族の威を借る何とやら、と謗られることも覚悟の上である。しかし我は、いかなる威を借りてでも、平原の同胞、領民達を守らねばならぬ立場である。どうかご理解賜りたい。
故に我もまた、シュトラスレートル城の姫君を娶り、諸兄らの『末弟』の席に着くことを何卒許し給え。 頓首敬白
ボトム・ゴブリンロード




