39通目 リネッテからベラへ
ベラお姉さま
急啓 もしかしたらもう誰かから知らせが届いているかもしれないけれど、取り急ぎ。
たった今遭遇した『大トロル』の大きさは二十フィーバス。『鷲の大崖』の高さが十五フィーバスです。
そんな大きな生き物が、この世に存在していたなんて!
しかもその大トロルの狙いはこの崖の皆だけでなく、北の山と南の森もです。絶対に許されないわ。何としてでもこの『鷲の大崖』で倒さねばならない相手です。
今ちょうどエコールとシーバスレリアが飛んで来てくれました。エコールの樽に、崖中の子ども達と妊婦さんを詰めて『木叢の館』まで送ることを許してください。ルネにどうかよろしく伝えて。
ロバの馬車三台には樽に入りきらない老人や女性達がいます。ここから一番近い頑丈な城はシュトラスレートル城。あの父さまと母さまが城門をあけてくれるかは分からないけど、あのあたりならまだ安全なはず。
平原を走り抜けるしかないようです。私は馬に乗って皆を誘導する係です。
ゴブリン族だけでは到底敵わない相手だけど、若者達と陛下はありったけの石と矢、投石器(崖の倉庫にあった古いもの)を急遽引っ張り出しました。援軍が来るまでなんとか持ちこたえる気満々です。
親指だけであたしの身長くらいある大トロルと、小トロルが百体なのよ。
あたしは戦えない民の先頭に、陛下は戦える民の(こんな無謀なことってあるのかしら!)先頭に立つことになって。ああ、今、馬車が満員になってきたわ。
お互いに、お互いのことを心配するの。こんな時なのに。そんな場合じゃないのに。胸が苦しくてしょうがないの。
大きな弓を持ったシーバスレリアが陛下の護衛になりました。私の護衛はオリバー(煉瓦職人の男の子です)とマリィです。ああ、もう行く時間。無事を祈っていてください。 早々
あなたの妹
リネッテより
追伸 お姉さま。あたしにもしも、もしものことがあったら、陛下にきちんと『愛してる』って伝えてください。本当は、自分で伝えたいのだけど。




