表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/60

33通目 ベラからリネッテへ

『木叢の館』より

私の花冠リネッテへ


 前略 危ない目に遭ったそうね。まさかトロルなんて!(エルフ族の古い文献を漁って仔細調べてくるように、と早急に学者達に命じています)


 平原で何かが起きた場合、ドラゴンとエルフが黙ってはいないでしょう。そのための同盟です。安心してちょうだいね。


 先日、エコールが物々しい一振りの剣をフィロストレリア様に届けてくださいました。弓はシーバスレリアに届けるそうよ。彼はあなた達を一番近くで守ってくれるエルフの一人ですものね。そう言うとエコールが笑って


「ま、いつもどっかふらふらしてる奴だけど、『鷲の大崖』とあの夫婦は例外的にすごく気に入ってるようだしね」


 と少し意味深に笑って答えてくれました。あなた達の人徳かしらね?


 そして、とうとう雨期がやってきました。木叢の館の窓硝子(この「硝子」の技術はとても貴重なもの。特に、窓にはめ込むことができる大きさの硝子の作り方は、エルフ族の門外不出の伝統技術だとか)にも、小雨が打ち付けています。


 それでも私の体調はすこぶる良くて、これも平原から毎日届く新鮮な『エルシノアの実』のおかげかも知れません。ルネもしっかりと面倒を見てくれています(ルネをここに置いてくれたあなたの英断に感謝を!)


 晴れていたら、もう少し運動をしたいところなのだけれど。アンフィーサお姉さまからも様々なお祝いが届いています。


 ドラゴン族の宮殿でお姉さまが愛用しているものと同じ温石には本当に助けられています。まだ寒いシーズンではないけれど、部屋に置いておくと湿気を追い払ってくれるので、眠るときに随分と快適になりました。


 正直な話、お姉さまより先に御子を産むことになってしまって、少し気後れしていたの。杞憂で良かったわ。


 いつもならこんな、はしたない杞憂なんて抱くはずないのに、お腹に子どもがいると、何事にも用心深くなってしまうのかしらね。いつもなら冷静に考えられることが、少し靄がかかってしまう感じなの。


 いつもならきちんと歩ける道が、少し険しくなるのが、子供を宿す、ということなのね。


 夫のフィロストレリア様も心配してくれています。雨期を乗り越える肌触りのよい織物を取り揃えてくれて。でも


「君に似た子どもだといいなあ。うつくしい緑の瞳か髪があれば万々歳だ!」


 なんて気の早いことを時々仰ったりもしているのです。殿方は呑気で羨ましい限りだわ!


 私の可愛い子、いったいどんな子かしら。


 それよりも、今はトロルの件が気にかかります。何故そんな、ここ百年ほどは鳴りを潜めていた生き物が突然出没したのかしら(全力で調べさせているところなので、何かわかったらすぐに知らせを飛ばします)何かの前触れでないことを祈っています。


 そしてドワーフのビーゼン老とは、私達夫婦も一度お話ししてみたいものです。たった一人で長年同朋を探して彷徨うことは、大変な苦痛と孤独を伴うもの。ドワーフ族とゴブリン族には交流もあった模様。どうか『鷲の大崖』で、優しく癒してあげて。


 ドワーフ族からかつて伝わったという魔除けの香油をお送りします。


 彼らの髭は、本来この香油が塗り込められていてとてもかぐわしい香りがしたそうよ。炊けば魔除けにもなるとのこと。


 トロルからはじっとりとした『闇』を感じます。くれぐれも気をつけて。何かあったら何でもすぐに連絡してちょうだい。約束よ。 かしこ


あなたの姉(およびそのお腹の中にいるあなたの姪っ子あるいは甥っ子)

ベラ・エルフェンノルン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ