表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/60

31通目 アンフィーサからリネッテへ

『常冬の宮殿』より

わたくし達の可愛いリネッテへ


 拝復 可愛い子、まだこんがらがっていて? わたくしもあなたに色々と相談したことがあったわね。日々が目まぐるしくて、もう何年も前のことのように感じます。


 誰かを愛することが、もしもとても容易いことだったら、愛は宝石ではなくただの、どこにでもあるガラス玉になってしまうのかもしれません。


 自分以外の誰かを、自分よりも好きになった時に、ガラス玉は宝石に変わるのです。


 可愛い子、花冠の娘、心が波打ち揺れるのならば、その心はいつか燃えることができる証。揺れるからこそ燃えるの。誰かを『好きになる』のはきっとその一歩。


 ねえ、リネッテ、愛は本当はもっと身近なものよ。だから、少しだけ肩の力を抜いてちょうだいな。


 それに、『正直』なのは輪をかけて良いこと。嘘をついた瞬間、きっとあなたは、そう、あなたの心の輝きは曇ってしまうことでしょうから。


 いつも彼の片時にいなさいね。迷うことなく。


 あなたの抱えている問題はきっと、今ではなく、いつか解決する瞬間がくるはず。その『いつか』も遠くはないことでしょう。女の子は誰かを好きになることで、ひときわ美しく育っていくものだから。


 彼もまた、『収穫の日』を夢見ているはず。わたくしは確信しています。


 そして、今まだ収穫できない事情ないし心情もおありなのでしょう。


 それは決してあなたのせいではないのです。ましてや、『政略結婚だから』なんてくだらない理由であるわけもありません。


 あなた達が一緒に雪山からわたくしたちのために『満月草』を採ってきてくれたときからずっと、ええ、わたくしは確信しています。


 そう、あの時、あなた達の間に結ばれていたロープが、何者でも断つことの出来ない絆のようなものに見えたのです。


 けれど、生真面目で実直な、わたくしの勇気ある義弟であっても、(ここからは二人だけの秘密よ)男のヒトってみんな、全員、どこか不器用なのです。


 どんなに威厳があっても、美男でも、手先が器用でも、男のヒトって何故かいつも何か変な掟を、自分の中に、自分勝手に課すせいで、何も知らない女の子達を苦しめるのです!(もっともわたくしはもう『女の子』といえる歳ではなくなってしまったのだけど)


 さあ、だから元気を出して、可愛い子。平原に住まうわたくし達の愛しいお姫様。


 『好き』は、とても大事なことです。もちろん『愛』も大事だけれど、しっかりと『好き』という肥料を撒いてこそ『愛』という美しい花は咲くのだから。


 あなたがどんな花を咲かせるか、今から楽しみにしています。ゆっくり、しっかりと。焦ることはありません。またいつでも手紙を送ってきてちょうだいね。 敬具


可愛い妹が花開くのを心待ちにしながら

アンフィーサ・ドラコスリーベ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ