28通目 リネッテからアンフィーサへ
『木叢の館』より
親愛なるアンフィーサお姉さまへ
前略 ルネが機嫌よく鼻歌を歌いながら、お姉さま宛に妖精便を飛ばしているのを見たわ。きっと、重大なお知らせの書かれた手紙はもう届いてる頃合いかしら。
色々書きたいことがあって、でも、どう書けば良いのかわからなくって、本当に困っています。あたし、『木叢の館』の図書館で突然、シーバスレリアに聞かれたの。
「ボトム王を、愛しているかい」
あたしと陛下は、いつだって一緒に暮らしているのよ。冬の極寒の山に登れっていわれたら、一緒に行くのは彼しかいないわ。
川で一緒にはしゃいだり、一緒に平原の果実を採ったり、毎日が本当に、すごく楽しいわ。日々が輝いているってきっとこういうことなのね。
つまり、とてつもなく、幸せなのよ。
でもあたしだって子どもじゃないわ。シーバスレリアの『言わんとすること』、わからないわけじゃないの。
同じ寝室で、同じ寝台で、夜を共にしているのに……そうね、小っ恥ずかしくて、詳しくは、書けないけれど。
お優しい方だわ。あたしのことを、世界で一番大事にしてくれるヒト。だからだと、あたしは思っているわ。
でも、まだ齢十七の小娘にはちょっと釣り合わないのかしら(あたしが思うに、アルベリッヒお義兄さまよりも陛下は多分歳上なのよ。ゴブリン族の王様の年齢ってちっともわからないんだけど)
お姉さま達みたいに、女性としての魅力がまだまだ足りないのかしらって考えないこともないわ。考えると悲しい気持ちになるから考えないだけで。
ねえ、お姉さま。誰かを愛するのってそんなに難しくないのに、今のあたし、ぐるぐるにこんがらがっているの。
そういうことを、しなくたって、愛は愛だと思うけれど、あたし達、命をかけて満月草を取りに行ったわ。
どんなに種族が違ったって、愛し合うことが出来るって、あの時のあたし達はどうしても証明して見せたかったからなのよ。
ああ、でも、それなのに、あたし、問われた瞬間に、どう答えれば良いのか、わからなかったの。だから正直に
「わからないわ」
そう答えてしまったの。その後、廊下を走り抜けて、寝室まできて………なんだか、悲しくなってしまって、こうしてペンを取っているの。
好きになることと、愛することって、やっぱり何かが違うのかしら。
あたし、好きなのよ。陛下のことが。
身体は小さいけど、いつだって頼もしくて、何だって出来ちゃうゴブリンの王様。
お姉さまは「リネッテがゴブリンを好きになる日が来るなんて」ってびっくりするかしら?
この『好き』がいつかお姉さま達みたいに、どんな花や星や月よりも美しい『愛』に変わったら、そして、その『愛』に全てを捧げる日が来たら、いつか胸を張って、シーバスレリアに『私は陛下を心から愛しています』って答えられる日が、来るのかしら?
自分でも何を言いたかったのか分からなくなっちゃったわ。今日はここまで。 草々
こんがらがったあなたの妹
リネッテ・ブリンク
追伸 でも、これがもしもあの『レーデルランド三種族同盟』とやらで、『あたしを大事にしないといけないから大事にしてる』とかだったら悲しくてわんわん泣いてしまうんじゃないかしら。聞くのが怖くて聞けないのだけど。




